無停電電源装置(UPS)とは
無停電電源装置(Uninterruptible Power Supply, UPS)とは、電子機器、特にコンピュータシステムやネットワーク機器、サーバといったクリティカルなシステムにおいて、主電源からの電力供給が途絶えたり、異常が発生したりした際に、内蔵バッテリーなどを用いて接続機器へ一時的に電力を供給し続ける装置を指します。これにより、予期せぬ停電や電圧変動から機器を保護し、データの損失やシステムのダウンタイムを防止することが主要な目的です。
無停電電源装置の基本的な概念
UPSは、単なるバッテリーバックアップシステムではなく、電源品質を安定させる役割も担います。これにより、電力供給の不安定さが引き起こす可能性のある機器の故障や誤動作を防ぎます。
主な概念は以下の通りです。
- 電力保護の必要性: 電力供給には、停電だけでなく、電圧の低下(サグ)、電圧の過昇(サージ)、瞬時停電(瞬断)、周波数の乱れ、高調波歪みなど、様々な電力異常が存在します。これらの異常は、機器の損傷、データの破損、システムの誤動作を引き起こす可能性があります。UPSは、これらの電力異常から機器を保護します。
- 一時的な電力供給: UPSは、商用電源が途絶えた際に、内蔵バッテリーに蓄えられた電力を交流(AC)に変換して機器に供給します。この電力供給は、システムを安全にシャットダウンしたり、予備電源(発電機など)が起動するまでの時間を稼いだりするためのものです。長時間の電力供給を目的としたものではありません。
- 電源品質の安定化: 多くのUPSは、入力される商用電源の電圧や周波数を安定化させる機能(AVR: Automatic Voltage Regulationなど)も備えており、接続機器にクリーンで安定した電力を供給します。
無停電電源装置の主要な方式
UPSは、その動作原理によっていくつかの主要な方式に分類されます。それぞれの方式には、異なる特性とコストがあり、保護したい機器の重要度や予算に応じて選択されます。
- オフライン方式(Standby UPS):
- 動作原理: 通常時は商用電源をそのまま接続機器に供給し、電力異常が発生した場合にのみ、インバーターを介してバッテリーからの電力供給に切り替えます。
- 特徴: 最も安価でコンパクトな方式です。切り替え時にわずかな瞬断(数ミリ秒)が生じる可能性があります。電圧変動の補正機能は限定的です。
- 適用例: 個人用コンピュータ、重要度の低いオフィス機器。
- ラインインタラクティブ方式(Line-Interactive UPS):
- 動作原理: 通常時は商用電源を使用しますが、内蔵された変圧器(AVR機能)を通じて電圧を自動的に調整し、安定させます。停電時にはオフライン方式と同様にバッテリーに切り替わります。
- 特徴: オフライン方式よりも優れた電源品質を提供し、軽微な電圧変動に対応できます。切り替え時の瞬断はオフライン方式より短いか、ほとんどありません。コストは中程度です。
- 適用例: 小型サーバ、ネットワーク機器、ワークステーション。
- オンライン方式(Online UPS / Double-Conversion UPS):
- 動作原理: 常時、入力される商用電源を一度直流(DC)に変換し、それを再び交流(AC)に変換して接続機器に供給します。バッテリーは常にインバーター回路に接続されており、電力異常が発生しても瞬断なくバッテリーからの電力供給に切り替わります。
- 特徴: 最も高品質で安定した電力を提供します。停電時の瞬断が全くなく、電圧や周波数の変動、ノイズなど、あらゆる電力異常から完全に保護します。コストは高くなります。
- 適用例: 基幹サーバ、データセンター、医療機器、通信システム、重要度の高い産業用機器。
無停電電源装置の選択と導入における考慮事項
適切なUPSを選択するためには、以下の点を考慮する必要があります。
- 容量(VA/W): 接続する機器の総消費電力(ワット:W)と皮相電力(ボルトアンペア:VA)を計算し、それに見合った容量のUPSを選択する必要があります。一般的に、UPSの容量はWとVAの両方で表示され、Wは実効電力、VAは皮相電力を示します。
ただし、VAとWの間には力率(Power Factor)という関係があり、W=VA×力率 で表されます。
- バックアップ時間: 停電時にシステムを安全にシャットダウンしたり、発電機が起動するまでの時間を確保したりするために必要な、UPSが供給できる電力供給時間です。
- 電源品質要件: 保護したい機器がどの程度の電源品質を要求するか(例:精密機器、医療機器は高い品質が必要)。
- コスト: 導入コストと運用コスト(消費電力、バッテリー交換費用など)を考慮します。
- 管理機能: リモート監視、自動シャットダウン機能、バッテリーの状態通知など、運用に必要な管理機能の有無。
- バッテリーの種類と寿命: 鉛蓄電池が一般的ですが、リチウムイオン電池を採用したUPSも登場しており、長寿命やコンパクトさが特徴です。
無停電電源装置(UPS)は、主電源からの電力供給が途絶えたり異常が発生したりした際に、内蔵バッテリーなどを用いて接続機器へ一時的に電力を供給し、電力保護と電源品質安定化の役割を果たす装置です。オフライン方式、ラインインタラクティブ方式、オンライン方式の3つの主要な動作原理があり、それぞれ異なる保護レベルとコスト特性を持ちます。UPSの選択と導入においては、接続機器の容量、必要なバックアップ時間、電源品質要件、コスト、管理機能、およびバッテリーの種類を総合的に考慮することが不可欠です。
適切なUPSの導入は、システム障害によるデータ損失やダウンタイムのリスクを軽減し、事業継続性を確保する上で極めて重要な投資となります。
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