線形計画緩和とは
線形計画緩和(Linear Programming Relaxation)とは、数理最適化における整数計画問題(Integer Programming, IP)に対して、変数が整数値しか取れないという制約を緩和し、実数値(連続変数)を取ることを許容することで得られる線形計画問題(Linear Programming, LP)のことです。
整数計画問題は一般にNP困難な問題であり、効率的な厳密解法を見つけることが難しい場合がありますが、線形計画問題は多項式時間で効率的に解くことができるアルゴリズムが存在します。そのため、線形計画緩和を解くことで、元の整数計画問題の最適値に対する上限または下限を得たり、近似解を導出したりするための重要な手がかりを得ることができます。
線形計画緩和 の基本概念
整数計画問題では、目的関数を線形の制約条件の下で最適化する際に、一部または全ての変数が整数値でなければならないという制約が課されます。一方、線形計画問題では、全ての変数が実数値を取ることができます。線形計画緩和は、この整数制約を取り除くことで、より広い解空間を持つ線形計画問題を生成します。
例えば、ある変数 x が整数制約 x∈{0,1} を持つ整数計画問題があった場合、その線形計画緩和では制約が 0≤x≤1 に置き換えられます。同様に、x が非負の整数制約 x∈{0,1,2,…} を持つ場合は、x≥0 の実数制約に緩和されます。
線形計画緩和 の利用目的
線形計画緩和は、主に以下の目的で利用されます。
- 最適値の評価: 線形計画緩和の最適値は、元の整数計画問題の最適値に対する緩和された境界(bound)を与えます。最大化問題の場合、緩和問題の最適値は元の問題の最適値の上界となり、最小化問題の場合には下界となります。この境界は、分枝限定法などの厳密解法アルゴリズムにおいて、探索空間を効率的に削減するために利用されます。
- 近似解の導出: 線形計画緩和の最適解がたまたま整数解である場合、それは元の整数計画問題の最適解でもあります。しかし、一般的には緩和解は実数値となるため、これを何らかの方法で整数値に丸める(rounding)ことで、元の問題の近似解を得る手法が研究されています。ただし、単純な丸め処理では実行可能性が保証されない場合や、最適性との乖離が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。
- 問題の構造分析: 線形計画緩和を分析することで、元の整数計画問題の構造的な特性や、どの制約が解の整数性を妨げているかなどの洞察を得ることができます。これは、より効率的な解法を設計する上で役立ちます。
- 多面体的組合せ最適化: 整数計画問題の実行可能解の凸包(整数多面体)は一般に複雑な形状をしていますが、線形計画緩和の実行可能領域はより単純な多面体で表現できます。整数多面体の性質を線形計画緩和を通じて研究するアプローチがあります。
線形計画緩和 の例
ナップサック問題を例に線形計画緩和を説明します。
整数計画問題(ナップサック問題): 最大化 ∑i=1nvixi 制約 ∑i=1nwixi≤W xi∈{0,1} (各アイテム i をナップサックに入れるか入れないか)
ここで、vi はアイテム i の価値、wi はアイテム i の重さ、W はナップサックの容量です。
線形計画緩和: 最大化 ∑i=1nvixi 制約 ∑i=1nwixi≤W 0≤xi≤1 (各アイテム i を部分的に入れることを許容)
線形計画緩和では、各アイテムをその一部(0から1の実数値)だけナップサックに入れることが許容されるため、貪欲法などを用いて効率的に最適解を求めることができます。この緩和問題の最適値は、元の整数計画問題の最適値の上界となります。
線形計画緩和 の限界
線形計画緩和は強力なツールですが、いくつかの限界も持ち合わせています。
- 緩和解が整数解とは限らないため、直接的な実行可能解が得られない場合があります。
- 緩和問題と元の整数計画問題の最適値の差(積分ギャップ、integrality gap)が大きい場合、得られた境界や近似解の質が低下する可能性があります。
- 緩和問題を解くこと自体が、元の問題の規模によっては計算コストを要する場合があります。
線形計画緩和は、整数計画問題の整数制約を実数制約に置き換えることで、問題を線形計画問題として扱い、その解を通じて元の問題に関する重要な情報を得るための手法です。最適値の評価、近似解の導出、問題の構造分析など、数理最適化の様々な場面で活用されており、特にNP困難な整数計画問題に対するアプローチとして、理論的にも実用的にも重要な役割を果たしています。
関連用語
お問い合わせ
システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。
APPSWINGBYの
ソリューション
APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。
システム開発
既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。
iOS/Androidアプリ開発
既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。
リファクタリング
他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。

ご相談・お問い合わせはこちら
APPSWINGBYのミッションは、アプリでビジネスを加速し、
お客様とともにビジネスの成功と未来を形作ること。
私達は、ITテクノロジーを活用し、様々なサービスを提供することで、
より良い社会創りに貢献していきます。
T関する疑問等、小さなことでも遠慮なくお問合せください。3営業日以内にご返答致します。

ご相談・お問合せはこちら
APPSWINGBYのミッションは、アプリでビジネスを加速し、お客様とともにビジネスの成功と未来を形作ること。
私達は、ITテクノロジーを活用し、様々なサービスを提供することで、より良い社会創りに貢献していきます。
IT関する疑問等、小さなことでも遠慮なくお問合せください。3営業日以内にご返答させて頂きます。