重み付き和法とは
重み付き和法(Weighted Sum Method)とは、複数の異なる評価基準(属性や指標)を持つ対象を比較・評価する際に、それぞれの基準に重要度に応じた「重み」を設定し、それらの重みと各基準の評価値を乗算して合計することで、総合的な評価値を算出する多基準意思決定手法を指します。
この手法は、複雑な意思決定問題において、客観的かつ定量的な評価を導き出すために広く利用されます。
重み付き和法の基本的な概念
重み付き和法は、人間の直感や経験だけでなく、数値に基づいた合理的な意思決定を支援することを目的とします。
主な概念は以下の通りです。
- 評価基準(Criteria / Attributes): 評価対象を特徴づける複数の要素です。例えば、製品選択であれば「価格」「性能」「デザイン」「サポート」など、プロジェクト評価であれば「コスト」「期間」「リスク」「期待効果」などが挙げられます。
- 評価値(Score): 各評価対象が、それぞれの評価基準においてどの程度のレベルにあるかを示す数値です。通常、統一された尺度(例:1~5点、0~100点など)で正規化されます。
- 重み(Weight): 各評価基準の相対的な重要度を示す数値です。重みの合計が1(または100%)になるように設定されることが多いですが、必ずしもそうである必要はありません。重みが大きい基準ほど、総合評価値への影響が大きくなります。
- 総合評価値(Overall Score): 各基準の評価値に重みを乗じて合計することで得られる最終的な評価値です。この値が高いほど、その評価対象が望ましいと判断されます。
重み付き和法の計算式
重み付き和法の総合評価値Sは、以下の計算式で表されます。
ここで、
- S: 総合評価値
- n: 評価基準の総数
- wi: i番目の評価基準の重み
- xi: i番目の評価基準に対する評価値(スコア)
例: スマートフォンの購入評価
以下の3つの基準でスマートフォンAとBを評価すると仮定します。
評価基準 | 重み (![]() | スマートフォンA 評価値 (![]() | スマートフォンB 評価値 (![]() |
価格 | 0.4 | 70 | 90 |
性能 | 0.3 | 85 | 75 |
デザイン | 0.2 | 80 | 85 |
バッテリー | 0.1 | 90 | 70 |
スマートフォンAの総合評価値:
スマートフォンBの総合評価値:
この例では、スマートフォンBの総合評価値がスマートフォンAよりも高いため、重み付き和法によればスマートフォンBがより望ましい選択肢となります。
重み付き和法の実施手順
重み付き和法を適用する一般的な手順は以下の通りです。
- 評価基準の特定: 意思決定に関連する全ての評価基準を洗い出します。網羅性と独立性が重要です。
- 各基準の評価値の決定: 各評価対象について、それぞれの評価基準における評価値(スコア)を決定します。異なる単位やスケールを持つ評価値を扱う場合は、0から1や0から100などの統一された尺度に正規化する必要があります。
- 正規化の例(最大値最小値正規化):
望ましい値が大きいほど良い基準(例: 性能)
- 正規化の例(最小値最大値正規化):
望ましい値が小さいほど良い基準(例: 価格、コスト)
- 重みの設定: 各評価基準の相対的な重要度に基づいて重みを決定します。これは、専門家の意見、アンケート調査、分析的階層プロセス(AHP)などの手法を用いて行われます。重みの設定は、最終的な結果に大きな影響を与えるため、慎重に行う必要があります。
- 総合評価値の計算: 前述の計算式を用いて、各評価対象の総合評価値を算出します。
- 結果の解釈と意思決定: 計算された総合評価値を比較し、最も高い評価値を持つ対象を選択します。ただし、最終的な意思決定は、数値だけでなく、定性的な要素や不確実性も考慮して行われるべきです。
重み付き和法のメリットとデメリット
メリット
- シンプルで理解しやすい: 計算方法が直感的であり、誰にでも理解しやすいシンプルなモデルです。
- 汎用性が高い: 製品選定、プロジェクト評価、人材評価、投資判断など、様々な意思決定問題に適用できます。
- 定量的な比較: 複数の基準を持つ複雑な問題を、単一の総合評価値で定量的に比較できます。
- 柔軟な重み付け: 意思決定者の優先順位や重要度を重みとして反映させることができます。
デメリット
- 重み設定の難しさ: 最も重要な課題の一つです。重みの設定が主観的になる可能性があり、不適切な重みは結果を歪めます。
- 評価値の正規化: 異なる単位の基準を比較するためには正規化が必要ですが、正規化の方法によって結果が変わり得るため、適切な方法の選択が必要です。
- 基準間の独立性: 各評価基準が互いに独立していることを前提としますが、現実には基準間に相関関係がある場合があります。
- 非線形な関係の表現: 各基準の評価値と総合評価値が線形関係にあることを前提とするため、非線形な影響を考慮できません。
- 極端な値への影響: 特定の基準の評価値が極端に低い場合でも、他の基準の重みが大きいと、その悪影響が総合評価値に十分に反映されない可能性があります。
重み付き和法は、複数の評価基準を持つ複雑な意思決定問題において、各基準に重要度に応じた重みを設定し、それらを合計して総合的な評価値を算出する多基準意思決定手法です。
そのシンプルな計算式と理解しやすさから、製品選定、プロジェクト評価、人材評価など多岐にわたる分野で活用されています。しかし、重み設定の主観性や評価値の正規化、基準間の独立性といった課題も存在するため、適用にあたっては、これらの限界を理解し、慎重に分析を進めることが重要です。
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