電源冗長化とは
電源冗長化(Power Redundancy)とは、システムへの電力供給の安定性と可用性を高めるために、複数の独立した電源経路や装置を設けること。
電源冗長化(Power Redundancy)は、情報技術システムやインフラストラクチャにおいて、電力供給の安定性と可用性(Availability)を最大化するために、複数の独立した電源経路や装置を設けることです。これは、単一の電源コンポーネント(電力会社からの供給線、変電器、無停電電源装置(UPS)、電源ユニット(PSU)など)に障害が発生した場合でも、システムへの電力供給が途絶えることなく継続されることを保証するための、極めて重要な耐障害性戦略です。
電源冗長化 の基本的な概念
現代のITシステム、特にサーバー、ネットワーク機器、ストレージシステムなどは、安定した電力供給なしには機能しません。電源障害は、システムダウンタイムの主要な原因の一つであり、ビジネスに甚大な影響を与える可能性があります。電源冗長化は、このようなリスクを軽減するための予防策として導入されます。
主要な概念は以下の通りです。
- 単一障害点の排除: システムへの電力供給経路において、一箇所に障害が発生しただけで全体が停止するような「単一障害点(Single Point of Failure)」を排除することが目的です。
- 可用性の向上: 電源関連の障害が発生しても、システムが稼働し続けることを可能にし、サービスの継続性を確保します。
- 計画的メンテナンスの容易化: 片方の電源系統が稼働している間に、もう片方の系統のメンテナンスや交換をダウンタイムなしで実施できます。
電源冗長化 の主な手法とレベル
電源冗長化は、電力供給チェーンの様々な段階で異なる手法を用いて実現されます。
- 電力供給源レベル:
- 複数の電力会社からの受電: 複数の電力会社または異なる変電所からの送電線を引き込むことで、広域停電や特定の送電線障害に対する耐性を高めます。
- 異なる経路からの電力引き込み: 同一電力会社からであっても、異なる経路(ルート)で電力ケーブルを引き込むことで、掘削作業によるケーブル切断などの物理的障害リスクを分散します。
- データセンター/ファシリティレベル:
- 独立した配電盤と変圧器: データセンター内に複数の独立した配電盤や変圧器を設置し、それぞれが異なる電源系統から電力を供給できるようにします。
- 冗長な無停電電源装置(UPS): 商用電源が停止した場合に、一時的にバッテリーからの電力供給を継続するUPSを複数台設置し、冗長構成(N+1、2Nなど)を組みます。
- N+1冗長: 必要な台数(N)に加えて、予備の1台を追加する構成。
- 2N冗長(完全冗長): 全ての機器と経路を二重化し、それぞれが独立してシステムに給電できる構成。最も高い可用性を提供しますが、コストも最も高くなります。
- 冗長な発電機: 長時間の停電に備えて、ディーゼル発電機などを複数台設置し、自動的に起動して電力供給を継続できるようにします。
- ラック/サーバーレベル:
- 二重化された電源ユニット(Dual PSUs): サーバー、ストレージ、ネットワークスイッチなどの各機器に、通常2つ以上の独立した電源ユニット(PSU)を搭載します。それぞれのPSUは異なる電源系統から給電を受け、片方が故障してももう片方が電力供給を継続します。これは最も一般的な冗長化の手法です。
- デュアル電源入力: 機器自体が複数の電源入力ポートを持ち、異なるPDU(Power Distribution Unit)やUPSに接続できるように設計されています。これにより、機器内部のPSUだけでなく、PDUやUPS側の障害にも対応できます。
- 電源供給方式:
- A/B電源(デュアルパス給電): データセンターのラック内で、サーバーの二重化されたPSUを、それぞれ独立した二つのPDU(電源分配ユニット)に接続し、さらにそれぞれのPDUが異なるUPSや発電機に接続される構成です。これにより、ラック内の配線経路からデータセンターの電力系統まで、エンドツーエンドの冗長性が確保されます。
電源冗長化 のメリット
- 高い可用性: 電源障害によるシステムダウンタイムを最小限に抑え、サービス提供の継続性を大幅に向上させます。
- データ損失リスクの低減: 予期せぬシャットダウンを防ぐことで、データ破損や損失のリスクを低減します。
- 計画的メンテナンスの容易化: システム稼働中に一部の電源コンポーネントの交換やメンテナンスが可能となり、運用効率が向上します。
- システム信頼性の向上: 障害発生時の回復力を高め、システム全体の信頼性を向上させます。
電源冗長化 の課題と考慮事項
- コストの増加: 冗長な機器やインフラの導入には、初期投資と運用コストが大幅に増加します。特に2N冗長構成は高コストです。
- 複雑性の増大: 電源系統が複雑になるため、設計、導入、管理、そしてトラブルシューティングの難易度が上がります。
- 物理スペースの要求: 追加の機器(UPS、発電機、配電盤など)を設置するための物理スペースが必要となります。
- 冷却要件の増加: 追加の電源機器は熱を発生するため、冷却システムへの負荷が増加します。
- テストの重要性: 冗長化されたシステムが期待通りに機能するかを定期的にテスト(フェイルオーバーテストなど)することが不可欠です。万が一の際に機能しないという事態は避けなければなりません。
- シングルポイントオブヒューマンエラー: 物理的な冗長性が確保されていても、ケーブルの誤接続やメンテナンス時の人的ミスなどによって、単一障害点が生じる可能性があります。
電源冗長化は、システムへの電力供給の安定性と可用性を高めるために、複数の独立した電源経路や装置を設けることです。複数の電力供給源からの受電、データセンターレベルでのUPSと発電機の冗長化、そして個々の機器における二重化された電源ユニット(PSU)の採用が主要な手法です。これにより、高い可用性、データ損失リスクの低減、計画的メンテナンスの容易化、システム信頼性の向上といったメリットを享受できます。一方で、コスト増加、システムの複雑性、物理スペースの要求、冷却要件の増加といった課題も存在するため、システム要件と予算を考慮した上で、最適な冗長化レベルを選択し、定期的なテストと適切な運用管理を行うことが極めて重要です。
関連用語
お問い合わせ
システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。
APPSWINGBYの
ソリューション
APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。
システム開発
既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。
iOS/Androidアプリ開発
既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。
リファクタリング
他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。

ご相談・お問い合わせはこちら
APPSWINGBYのミッションは、アプリでビジネスを加速し、
お客様とともにビジネスの成功と未来を形作ること。
私達は、ITテクノロジーを活用し、様々なサービスを提供することで、
より良い社会創りに貢献していきます。
T関する疑問等、小さなことでも遠慮なくお問合せください。3営業日以内にご返答致します。

ご相談・お問合せはこちら
APPSWINGBYのミッションは、アプリでビジネスを加速し、お客様とともにビジネスの成功と未来を形作ること。
私達は、ITテクノロジーを活用し、様々なサービスを提供することで、より良い社会創りに貢献していきます。
IT関する疑問等、小さなことでも遠慮なくお問合せください。3営業日以内にご返答させて頂きます。