アノマリベースとは

アノマリベースは、システムやネットワークの監視において、正常な状態から逸脱した異常な振る舞いをパターンとして検知する手法のことであり、統計的な手法や機械学習を用いて正常なベースライン(基準)を確立し、これと大きく異なるイベント(異常)をセキュリティインシデントや障害の兆候として識別するための検出技術のことです。

アノマリベースの概要と異常検知

アノマリベース(Anomaly-Based)の検出は、セキュリティ分野(特に不正侵入検知システム)やIT運用監視(特にパフォーマンス監視)において広く利用されるアプローチです。この手法の基本的な前提は、攻撃や障害、またはマルウェアの活動は、システムやユーザーの通常のパターンとは異なる異常な振る舞いを伴うという点に基づいています。

この手法は、主に以下の二つのステップで構成されます。

  1. ベースラインの学習: 監視対象となるシステムやユーザーの振る舞いについて、長期間にわたりログやトラフィック、リソース利用状況などのデータを収集し、「正常」とされる状態の統計的なモデル(ベースライン)を構築します。
  2. 異常(アノマリ)の識別: 新しく観測されたデータが、この確立されたベースラインから一定の閾値を超えて逸脱している場合、それを異常(アノマリ)として識別し、アラートを発します。

アノマリベースの手法は、既知の脅威のシグネチャ(特徴)に依存しないため、ゼロデイ攻撃や、従来のシグネチャベースの防御では検出できない未知の攻撃に対しても有効であるという大きな利点があります。

主な目的は、システム内で発生する微妙な変化や、これまで前例のない新しい攻撃手法を早期に検出することです。

アノマリベースの主要な検出手法

アノマリベースの検出は、単一の手法ではなく、データ特性や監視対象に応じて様々な統計的・機械学習的な手法が用いられます。

1. 統計的手法

システムのデータ(例:CPU使用率、ネットワークトラフィック量)が、正規分布などの既知の分布に従うと仮定し、平均値から標準偏差($\sigma$)の数倍以上離れた値を異常と見なします。

  • 閾値設定: 例えば、過去の平均トラフィック量を $\mu$、標準偏差を $\sigma$ とした場合、現在の観測値 $x$ が

|x - \mu| > 3\sigma

  • の条件を満たす場合に異常と判断する、といった手法が用いられます。

2. 機械学習的手法

より複雑で多次元的なデータの異常を検出するために、教師なし学習や教師あり学習の手法が用いられます。

  • 教師なし学習(クラスタリング): K-meansなどのクラスタリングアルゴリズムを用いて正常データをグループ化し、どのクラスターにも属さない、またはクラスターから遠く離れた点を異常と見なします。
  • 教師なし学習(ワンクラス分類): 正常データのみを学習し、新しいデータが学習した正常な空間の外側にある場合に異常としてフラグを立てます(例:One-Class SVM、Autoencoder)。
  • シーケンス学習: RNNLSTMなどの時系列モデルを用いて、過去のデータから次に予測される正常な値を算出し、実際の観測値との間に大きな誤差がある場合に異常と見なします。

アノマリベースの課題

アノマリベースの検出は強力ですが、運用において以下の課題に直面することがあります。

  1. 誤検知(False Positives): ベースラインが確立された後でも、大規模な正当なイベント(例:大規模なプロモーションによるトラフィック急増)が「異常」として認識され、誤ってアラートが発せられることがあります。誤検知が多いと、オペレーターが重要なアラートを見逃すアラート疲労を引き起こします。
  2. ベースラインの維持: システムやユーザーの振る舞いは常に変化するため、ベースラインも動的に更新し続ける必要があります。ベースラインの更新が遅れると、新しい正常な振る舞いが異常として扱われる、または逆に緩やかに変化する攻撃が正常と見なされてしまう可能性があります。
  3. 訓練データの準備: 正確なベースラインを確立するためには、攻撃を受けていない純粋な正常データを長期間にわたって大量に収集する必要があります。

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