アーク整合性とは
アーク整合性(Arc Consistency, AC)とは、制約充足問題(Constraint Satisfaction Problem, CSP)において、ある変数に割り当てられた値が、その変数と直接的な制約関係を持つ他の変数(アークで繋がれた変数)の取りうる値の範囲(ドメイン)と矛盾しないという、変数間の制約を局所的に維持する性質を指します。
この性質を確保することで、探索空間から矛盾する値の組み合わせを事前に排除し、問題解決の効率を向上させることが可能となります。
アーク整合性の基本的な概念
制約充足問題は、変数、ドメイン(各変数の取りうる値の集合)、および制約(変数間の関係を規定する条件)から構成されます。アーク整合性は、このような問題において、探索の初期段階で不要な組み合わせを削ぎ落とす「枝刈り」の一種として機能します。
主な概念は以下の通りです。
- 制約充足問題(CSP): 与えられた変数に、それぞれのドメインから値を割り当て、全ての制約を満たす解を見つける問題です。
- 例:数独、Nクイーン問題、スケジューリング問題、グラフの彩色問題。
- アーク(Arc): CSPにおいて、2つの変数の間に存在する制約関係を、グラフの「辺(エッジ)」に見立てたものです。
- ドメイン(Domain): 各変数が取りうる値の集合です。アーク整合性のアルゴリズムは、このドメインを絞り込むことで問題を単純化します。
- 局所的な整合性: アーク整合性は、隣接する2つの変数間に注目し、それらの間の制約を満たさない値をドメインから削除します。このプロセスは、問題全体の整合性を直接保証するものではありませんが、探索空間を効果的に縮小します。
アーク整合性の定義
ある変数のペア (Xi, Xj) とその間の制約 Cij について、アーク (Xi, Xj) が整合であるとは、Xi のドメイン内の全ての値 vi について、Xj のドメイン内に少なくとも一つの値 vj が存在し、vi と vj が制約 Cij を満たす場合を指します。
これを厳密に定義すると以下のようになります。
アーク (Xi, Xj) が整合(consistent)であるとは、Xi の各値 x∈Di に対して、Xj のある値 y∈Dj が存在し、ペア (x, y) が制約 Cij を満たすときをいう。
アーク整合性を実現するアルゴリズム(AC-3)
アーク整合性を強制するための最も一般的なアルゴリズムの一つにAC-3(Arc Consistency Algorithm 3)があります。AC-3は、アークの整合性を繰り返しチェックし、矛盾する値をドメインから削除するプロセスを、安定するまで続けます。
AC-3の基本的な手順:
- 初期キューの作成: すべての変数ペア (Xi, Xj) のアークをキュー Q に追加します。
- キューが空になるまで繰り返す: Q からアーク (Xi, Xj) を取り出します。
- アークの修正(REVISE関数): Xi のドメイン Di 内の各値 x について、Xj のドメイン Dj 内に、制約 Cij を満たす値 y が存在しない場合、x を Di から削除します。
- ドメインが変更された場合: もし Xi のドメイン Di が変更(値が削除)された場合、Xi に関連する他のすべてのアーク (Xk, Xi) (ただし k≠j)をキュー Q に追加します。これは、Xi のドメインが変化したことで、Xk の整合性が崩れる可能性があるためです。
- 終了条件: キュー Q が空になり、すべての残りのアークが整合になった時点でアルゴリズムは終了します。このとき、もし任意の変数のドメインが空になった場合、そのCSPには解が存在しないことを意味します。
計算量:
AC-3の計算量は、変数の数、アークの数、ドメインのサイズに依存します。一般的に、n を変数の数、d を最大ドメインサイズ、c を制約の数とすると、最悪の場合の計算量はO(cd3) あるいはO(n2d3) となります。
アーク整合性の重要性と利点
アーク整合性の適用は、制約充足問題の解決において大きなメリットをもたらします。
- 探索空間の削減: 事前に矛盾する値をドメインから排除することで、バックトラッキング(探索のやり直し)の回数を減らし、探索アルゴリズム(例:バックトラッキング探索)の効率を大幅に向上させます。
- 早期失敗検出: アーク整合性を適用した結果、いずれかの変数のドメインが空になった場合、その問題には解が存在しないことを探索の初期段階で検出できます。これにより、無駄な探索を未然に防ぎます。
- 問題の単純化: 各変数のドメインを最小限に絞り込むことで、問題がより単純になり、その後の探索が容易になります。
- 完全性との関係: アーク整合性は、制約充足問題に解が存在するかどうかを完全に判定するわけではありません。アーク整合性を満たしても、依然として解が存在しない場合や、複数の解が存在する場合があります。しかし、解が存在する場合には、その探索を劇的に効率化します。
アーク整合性(Arc Consistency)とは、制約充足問題において、ある変数の値が、その変数と制約関係を持つ他の変数の取りうる値の範囲と矛盾しないという、変数間の制約を局所的に維持する性質です。
AC-3アルゴリズムがその代表的な実装であり、変数ドメイン内の矛盾する値を繰り返し削除することで、探索空間を削減し、問題解決の効率を向上させます。探索空間の削減、早期失敗検出、問題の単純化といった利点がありますが、問題の完全な解決を保証するものではなく、あくまで探索を効率化するための「枝刈り」手法の一つとして、バックトラッキング探索などと組み合わせて用いられます。
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