スケールインとは
スケールインは、システムの処理能力やリソースが過剰であると判断された場合に、稼働しているサーバーやコンピュートリソースの台数を削減することを指す概念であり、需要が減少した際や、リソースの最適化を図る際に、過剰なインフラコストを削減し、システムの運用効率を改善するための、水平スケーリング(スケールアウト)と対になるリソース管理の手法のことです。
スケールインの概要と水平スケーリング
スケールイン(Scale In)は、クラウドコンピューティングや分散システムにおいて、負荷の変動に柔軟に対応するための水平スケーリング(Scale Out and Scale In)戦略の一部です。
1. スケーリングの種類
| スケーリングの種類 | 概要 | 目的 |
| 垂直スケーリング(Scale Up/Down) | サーバー単体の性能(CPUコア数、メモリ容量など)を増減させる。 | 処理能力の増強や削減。 |
| 水平スケーリング(Scale Out/In) | サーバーやインスタンスの台数を増減させる。 | 高い負荷分散能力と柔軟なリソース管理。 |
2. スケールインの役割
スケールインは、水平スケーリング戦略におけるリソースの縮小を担います。
- 前提: システムが一時的に高い負荷に対応するために、スケールアウト(サーバー台数の増加)を実施した後、その負荷が解消された場合に実施されます。
- 役割: 単に台数を減らすだけでなく、将来のピークに備えて必要な最低限のキャパシティは維持しつつ、過剰なリソースを解放することで、クラウドサービスの利用料金を最適化することが主な目的です。
- 対義語: スケールアウト(Scale Out)は、処理能力を増強するために台数を増やす操作です。スケールインは、その逆の操作にあたります。
スケールインの実行と技術的な考慮事項
スケールインは、システムが現在処理中のトランザクションやデータを失うことなく、安全かつ確実に実行される必要があります。
1. 実行のトリガー
スケールインの判断は、主に以下の監視メトリクスに基づいて自動的に行われます(オートスケーリング)。
- CPU使用率: 稼働中の全サーバーの平均CPU使用率が、設定されたしきい値(例:20%)を下回り、その状態が一定時間継続した場合。
- リクエスト数: システムへの処理リクエスト数が設定値を下回り、リソースが過剰になっている場合。
- ネットワークI/O: データ転送量が減少し、サーバーがアイドル状態に近づいている場合。
2. 安全な削除のための手順
スケールイン時にサーバーを安全に停止・削除するためには、以下の手順が不可欠です。
- 接続のドレイン(Drain): 削除対象のサーバーを、ロードバランサーなどのトラフィック振り分け機構から切り離します。これにより、新規のユーザーリクエストがそのサーバーにルーティングされなくなります。
- 既存セッションの終了待ち: サーバーが現在処理中のリクエストやセッションが完了するのを待ちます。タイムアウトを設定し、規定時間を超えても処理が終了しない場合は、強制終了する設定も行われます。
- データの一貫性確保: サーバーが永続的なデータを保持している場合(ステートフルな構成の場合)、そのデータが他のサーバーに適切に引き継がれたり、共有ストレージに書き込まれたりしていることを確認します。
- サーバーの削除: 処理を完全に停止した後、サーバーインスタンスを終了し、クラウドプロバイダへの課金を停止します。
3. ステートフルなシステムにおける課題
サーバーがセッション情報や一時的なデータをローカルに保持しているステートフルなシステム構成の場合、スケールインは複雑になります。データを失わないように、セッション情報を共有データベースやキーバリューストアなどの外部ストアに移行する必要があります(ステートレス化)。
最新のクラウドインフラストラクチャでは、このスケールイン/アウトのプロセスをオートスケーリンググループ(Auto Scaling Group)などのサービスが自動で管理し、システムの効率性と弾力性を高めています。
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