ストレステストとは
ストレステスト(Stress Test)とは、ソフトウェアやシステムが、通常の運用では想定されないような極端に高い負荷や異常な条件(例:大量の同時アクセス、リソース枯渇、不正な入力など)に晒された際に、その安定性、堅牢性、回復力を検証するテストのことを指します。システムが限界点に達したときや、限界を超えたときにどのように応答し、どのようなエラーが発生するか、あるいは回復できるかを確認することを目的とします。
ストレステストの基本的な概念
ストレステストは、システムの潜在的な弱点やボトルネックを特定し、予期せぬ障害や性能劣化を防ぐために不可欠なテストフェーズです。単にシステムの処理能力を測るパフォーマンス測定とは異なり、システムが「破綻する」状況を意図的に作り出す点に特徴があります。
主な概念は以下の通りです。
- 負荷テスト(Load Test): システムが通常の運用条件下で期待される負荷に耐えられるか、またその際の性能(応答時間、スループットなど)が許容範囲内であるかを確認するテストです。ストレステストがシステムの「限界」を試すのに対し、負荷テストは「通常」の範囲内での性能を測ります。
- ボトルネック(Bottleneck): システム全体のパフォーマンスを制限する要因となっている特定のコンポーネントや処理のことです。ストレステストを通じて、これらを特定することができます。
- 回復力(Resilience): システムが障害や異常な負荷に直面しても、その機能を維持したり、迅速に正常な状態に復帰したりする能力です。
- スループット(Throughput): 単位時間あたりにシステムが処理できるトランザクション数やデータ量のことです。
- 応答時間(Response Time): ユーザーのリクエストが送信されてから、システムが応答を返すまでの時間のことです。
ストレステストの目的と重要性
ストレステストの主な目的は、システムの安定性と堅牢性を確保し、予期せぬ事態に備えることです。
- システムが耐えられる限界の特定: どの程度の負荷までならシステムが正常に機能し続けるのか、その閾値(しきい値)を明確にします。例えば、最大同時接続ユーザー数、最大データ処理量などです。
- ボトルネックの発見: 高負荷時にシステムの性能が急激に劣化する原因となる、特定のハードウェア(CPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワーク)やソフトウェア(データベース、アプリケーションコード、ミドルウェア)のボトルネックを特定します。
- 障害発生時の挙動確認: システムが限界を超えた場合、どのようなエラーメッセージを出すのか、部分的な機能停止にとどまるのか、それとも完全にダウンしてしまうのか、その挙動を確認します。また、システムダウン後の回復プロセスがスムーズに行われるかも検証します。
- データの完全性の確認: 高負荷下でのシステム障害時に、データが破損したり、矛盾が発生したりしないかを確認します。
- セキュリティの脆弱性特定(限定的): 大量の不正なリクエストや異常な入力に対するシステムの耐性を評価し、サービス拒否攻撃(DoS攻撃)などに対する潜在的な脆弱性を発見することもあります。
- キャパシティプランニングの支援: 将来の成長を見越して、システムに必要なリソース(サーバー、帯域幅など)を計画する上で、ストレステストの結果が重要な情報源となります。
ストレステストの種類と実施方法
ストレステストは、負荷のかけ方や対象によっていくつかの種類があります。
1. 集中ストレステスト(Concentrated Stress Testing)
短期間に極めて高い負荷を集中してかけ、システムの限界や破綻点を特定します。
- シナリオ例:
- 特定のページや機能への同時アクセスを急激に増加させる。
- システムが許容できるデータ入力レートをはるかに超えるデータを連続して投入する。
- 目的:
- システムの急所や脆弱性を短時間で炙り出す。
- リソースの枯渇(メモリリーク、CPU使用率100%など)やデッドロックの発生を確認する。
2. スパイクテスト(Spike Testing)
通常の負荷レベルから一時的に急激なピーク負荷をかけることで、システムが突然のトラフィック増加にどのように対応するかを検証します。
- シナリオ例:
- ECサイトのタイムセール開始時や、イベントのチケット発売開始時など、瞬間的にアクセスが集中する状況を再現する。
- 目的:
- 急激な負荷変動に対するシステムの応答性、安定性、回復力を評価する。
- 自動スケーリングが正しく機能するかを確認する。
3. 耐久性テスト/ソークテスト(Soak Testing / Endurance Testing)
長時間にわたって持続的な負荷をかけることで、メモリリークやデータベース接続の枯渇など、長期運用における潜在的な問題を発見します。
- シナリオ例:
- システムを数日間、あるいは数週間にわたって継続的に稼働させ、性能の劣化がないか監視する。
- 目的:
- リソースの徐々の枯渇(メモリリークなど)や、データベース接続のリーク、ログファイルの肥大化など、時間とともに顕在化する問題を発見する。
- システムの長期的な安定稼働能力を確認する。
4. ボリュームテスト(Volume Testing)
大量のデータを扱った際のシステムの振る舞いを検証します。
- シナリオ例
- データベースに大量のレコードを挿入・更新・検索する。
- 大規模なファイルをアップロード・ダウンロードする。
- 目的
- 大量のデータがシステム全体のパフォーマンスや安定性に与える影響を評価する。
5. 障害回復テスト(Recovery Testing)
システムが意図的に発生させた障害(例:サーバーの強制停止、ネットワーク切断)から、どれだけ迅速かつ正確に復旧できるかを検証します。
- 目的
- 自動フェイルオーバー、データ復旧、サービスの再起動などのプロセスが期待通りに機能するかを確認する。
ストレステストツールの利用
ストレステストは手動で行うには限界があるため、専用のツールが用いられることが一般的です。
- JMeter(Apache JMeter): オープンソースの負荷テストツールで、Webアプリケーション、データベース、APIなど、様々なプロトコルに対応しています。
- Gatling: Scalaで記述された高性能な負荷テストツールで、特にWebアプリケーションのストレステストに適しています。
- LoadRunner(Micro Focus LoadRunner): 商用の高機能な負荷テスト・ストレステストツールで、大規模なエンタープライズシステムで利用されます。
- k6: JavaScriptでテストスクリプトを記述できるモダンな負荷テストツールです。
- 自作スクリプト: Pythonなどのスクリプト言語を用いて、特定のシナリオに特化した負荷生成ツールを自作することもあります。
ストレステスト(Stress Test)とは、システムが過剰な負荷や異常な条件に晒された際に、その安定性、堅牢性、回復力を検証するテストです。システムが耐えられる限界の特定、ボトルネックの発見、障害発生時の挙動確認、データの完全性の保証、キャパシティプランニングの支援などが主な目的となります。
短期間に高い負荷をかける「集中ストレステスト」や「スパイクテスト」、長時間にわたる「耐久性テスト」、大量データを扱う「ボリュームテスト」、障害からの復旧を試す「障害回復テスト」など、多岐にわたる種類が存在します。
JMeterやGatlingといった専用ツールを用いることで、これらのテストを効率的に実施し、システムの潜在的な問題を早期に発見し対処することで、サービス提供の継続性と品質を確保するために不可欠なプロセスです。
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