デシリアライズとは

デシリアライズは、プログラム間でデータをやり取りしたり、保存したりするために、オブジェクトなどの複雑なデータ構造を一定の形式に変換したデータ(シリアライズされたデータ)を、元のオブジェクトの形に復元するプロセス、またはその機能のことです。

デシリアライズの概要と目的

デシリアライズ(Deserialization)は、シリアライズ(Serialization)の逆の操作です。シリアライズとは、プログラム内のメモリ上に存在するオブジェクトやデータ構造を、ファイルに保存したり、ネットワーク経由で送信したりできるような、一連のバイト列(または文字列)の形式に変換することです。このシリアライズされたデータを、受け取った側や読み込んだ側が元のオブジェクトとして再構築するプロセスがデシリアライズです。

デシリアライズの主な目的は以下の通りです。

  • データ交換: 異なるプログラム間(例: クライアントとサーバー)でデータをやり取りする際に、複雑なオブジェクトを標準的な形式で送受信できるようにします。
  • データ永続化: プログラムが終了してもデータを保持するために、オブジェクトをファイルやデータベースに保存し、必要に応じて後で読み出して復元できるようにします。
  • 状態の保持: アプリケーションの現在の状態(オブジェクトの集合)を保存し、後でその状態からアプリケーションを再開できるようにします。

シリアライズとデシリアライズのメカニズム

シリアライズとデシリアライズは、プログラミング言語やデータ形式によって様々な方法で実現されます。

1. シリアライズ

オブジェクトのデータと、その構造(オブジェクトが持つフィールドの種類や値)を、例えばJSON、XML、YAML、Protocol Buffers、MessagePackといった標準的なデータフォーマットや、言語固有のバイナリ形式に変換します。

シリアライズの例(PythonのJSONモジュールを使用)
import json

# シリアライズ対象のPythonオブジェクト
data_object = {
    "name": "山田太郎",
    "age": 30,
    "isStudent": False,
    "courses": ["数学", "物理"]
}

# PythonオブジェクトをJSON文字列にシリアライズ
json_string = json.dumps(data_object, ensure_ascii=False, indent=2)
# print(json_string)
# 出力例:
# {
#   "name": "山田太郎",
#   "age": 30,
#   "isStudent": false,
#   "courses": [
#     "数学",
#     "物理"
#   ]
# }

2. デシリアライズ

シリアライズされたバイト列や文字列を読み込み、それらを解析して、元のプログラム言語が認識できるオブジェクト構造(クラスのインスタンスなど)をメモリ上に再構築します。

デシリアライズの例(PythonのJSONモジュールを使用)

上記のJSON文字列を復元する例です。

import json

# シリアライズされたJSON文字列(ファイルから読み込んだり、ネットワークから受信したりしたデータ)
json_string_from_source = """
{
  "name": "山田太郎",
  "age": 30,
  "isStudent": false,
  "courses": [
    "数学",
    "物理"
  ]
}
"""

# JSON文字列をPythonオブジェクトにデシリアライズ
restored_object = json.loads(json_string_from_source)

# print(restored_object)
# 出力例:
# {'name': '山田太郎', 'age': 30, 'isStudent': False, 'courses': ['数学', '物理']}

# print(type(restored_object))
# 出力例:
# <class 'dict'>

この例では、JSON文字列がPythonの辞書(dict)オブジェクトとして復元されています。

デシリアライズの応用分野

デシリアライズは、多くのIT分野で利用されています。

  • Webアプリケーション: クライアント(Webブラウザなど)とサーバー間でJSONやXML形式でデータを交換する際に頻繁に利用されます。API(Application Programming Interface)の通信では、リクエストやレスポンスのデータがシリアライズ/デシリアライズされます。
  • データベース: オブジェクトを直接データベースに保存する「オブジェクトデータベース」や、リレーショナルデータベースでオブジェクトをBLOB(Binary Large OBject)として保存する際に利用されることがあります。
  • 分散システム: 複数のサービスやマイクロサービス間でメッセージを交換する際に、データオブジェクトを効率的に送受信するために使われます。
  • キャッシュ: アプリケーションの高速化のため、データベースから取得したオブジェクトをシリアライズしてメモリやストレージにキャッシュし、再利用時にデシリアライズします。

デシリアライズにおける注意点と課題

デシリアライズは非常に便利な機能ですが、セキュリティ上の注意点が存在します。

  • 安全でないデシリアライズ(Insecure Deserialization): 信頼できないソースから提供されたシリアライズデータをそのままデシリアライズすると、悪意のあるコードが実行されてしまう可能性があります。これはOWASP Top 10(Webアプリケーションセキュリティの十大脆弱性リスト)にも挙げられる深刻な脆弱性です。対策として、信頼できるソースからのデータのみをデシリアライズする、デシリアライズ前のデータの検証を行う、安全なデシリアライズライブラリを使用するといった方法があります。
  • バージョン互換性: シリアライズされたデータの構造が、デシリアライズする側のプログラムのオブジェクト構造と一致しない場合、エラーが発生したり、予期せぬ動作を引き起こしたりすることがあります。データのスキーマ変更には、バージョン管理と互換性維持への配慮が必要です。
  • パフォーマンス: 大量のデータをデシリアライズする場合、処理性能がボトルネックになることがあります。効率的なデータ形式の選択や、デシリアライズ処理の最適化が求められます。

デシリアライズは、現代のアプリケーション開発においてデータの永続化やシステム連携を実現するための基盤技術であり、その安全性と効率的な利用が重要となります。

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