データレイクハウスとは

データレイクハウスは、データレイクの柔軟性とデータウェアハウスの構造化された管理機能を組み合わせた、ハイブリッドなデータアーキテクチャのことです。

データレイクハウスの概要と目的

データレイクハウス(Data Lakehouse)は、近年注目されているデータ管理の新しいパラダイムです。従来のデータ管理では、非構造化データや半構造化データに適したデータレイクと、構造化された分析データに適したデータウェアハウスという、異なる目的を持つ2つのシステムが併用されることが一般的でした。

しかし、このアプローチでは、データが重複したり、異なるシステム間でデータを移動させるための複雑なETL(抽出、変換、ロード)プロセスが必要になったりする課題がありました。

データレイクハウスは、これらの課題を解決するために、データレイクの大規模なデータ保存能力と柔軟性に、データウェアハウスのトランザクション管理、スキーマ適用、パフォーマンス最適化、およびBI(ビジネスインテリジェンス)ツールとの連携能力を統合することを目的としています。これにより、企業はあらゆる種類のデータを単一のプラットフォームで管理し、多様な分析ワークロードを効率的に実行できるようになります。

データレイクハウスの主要な特徴とメリット

データレイクハウスアーキテクチャは、データレイクとデータウェアハウスそれぞれの利点を統合することで、以下のような特徴とメリットを提供します。

1. 単一のデータプラットフォーム

  • データサイロの解消: 構造化、半構造化、非構造化といったあらゆる形式のデータを一元的に管理できるため、複数のシステムにデータが分散する「サイロ化」を防ぎます。
  • シンプルなデータ管理: データパイプラインの複雑さを軽減し、ETLプロセスを簡素化できます。

2. データウェアハウスの機能の取り込み

  • ACIDトランザクション: データの書き込み、更新、削除において、**原子性(Atomicity)、一貫性(Consistency)、分離性(Isolation)、永続性(Durability)**を保証します。これにより、データレイク上での信頼性の高いデータ操作が可能になります。
  • スキーマの適用とガバナンス: データの取り込み時にスキーマを適用したり(Schema-on-Write)、読み込み時にスキーマを推論したり(Schema-on-Read)できます。これにより、データの品質とガバナンスが向上します。
  • パフォーマンス最適化: データスキッピング、インデックス作成、キャッシングなどの技術を活用し、大規模なデータセットに対するクエリ性能を向上させます。
  • BIツールとの連携: Tableau, Power BI, Lookerなどの既存のBIツールと直接連携し、データレイクハウス上のデータを活用したレポート作成やダッシュボード構築が容易になります。

3. データレイクの柔軟性とスケーラビリティ

  • 低コストのストレージ: Amazon S3, Azure Data Lake Storage, Google Cloud Storageといった安価なオブジェクトストレージを利用し、ペタバイト級のデータを経済的に保存できます。
  • データ形式の柔軟性: Parquet, ORC, CSV, JSONなど、様々なデータ形式をサポートし、将来の未知の分析ニーズにも対応できる柔軟性があります。
  • 大規模データと多様なワークロードへの対応: SQL分析、データサイエンス、機械学習、ストリーミング処理など、幅広い分析ワークロードを単一のプラットフォーム上で実行できます。

4. リアルタイム処理とバッチ処理の統合

  • ストリーミングデータとバッチデータの両方を取り込み、リアルタイム分析と履歴データ分析を統合的に行える環境を提供します。

データレイクハウスの主要技術

データレイクハウスアーキテクチャを実現するためには、以下のようなオープンソース技術やクラウドサービスが中心的な役割を果たします。

  • オープンソース:
    • Delta Lake: Apache Spark上で動作し、ACIDトランザクション、スキーマ適用、バージョン管理などの機能を提供するストレージレイヤーです。
    • Apache Iceberg: 大規模なデータセットでSQL分析のパフォーマンスを向上させるように設計されたテーブルフォーマットです。
    • Apache Hudi: データレイク上でインクリメンタルデータ処理を可能にし、変更のキャプチャ(CDC: Change Data Capture)をサポートします。
  • クラウドサービス:
    • Databricks Lakehouse Platform: Delta Lakeを中核としたデータレイクハウスの代表的なプラットフォームです。
    • Snowflake: データウェアハウスとしての機能に加え、半構造化データ対応やデータシェアリング機能などでレイクハウス的な側面も持ちます。
    • Google BigQuery: ストリーミング取り込みや多様なデータソース連携が可能であり、レイクハウス的な利用も進んでいます。
    • Amazon Redshift: データレイク連携機能(Redshift Spectrum)により、データレイクハウス的な活用が可能です。

データレイクハウスの活用シナリオ

データレイクハウスは、以下のような多様なビジネスシナリオで価値を発揮します。

  • リアルタイム分析: IoTセンサーデータやクリックストリームデータを即座に取り込み、リアルタイムで異常検知やパーソナライゼーションを行う。
  • 統合されたBIと機械学習: 履歴データと最新データを組み合わせ、BIツールでビジネス状況を可視化しつつ、同じデータ基盤上で機械学習モデルを学習・デプロイする。
  • 高度なデータサイエンス: 非構造化データ(画像、音声、テキスト)を含む大規模なデータセットに対して、高度なデータ探索や特徴量エンジニアリングを行う。
  • データ共有とコラボレーション: 組織内の各部門が、共通の信頼できるデータソースにアクセスし、連携してデータ活用を進める。

データレイクハウスは、企業がデータからより迅速かつ効率的に価値を創出し、データドリブンな意思決定を加速させるための、次世代のデータアーキテクチャとして、その存在感を高めています。

関連用語

データウェアハウス | 今更聞けないIT用語集
ETL | 今更聞けないIT用語集
データ&アナリティクス

お問い合わせ

システム開発・アプリ開発に関するご相談がございましたら、APPSWINGBYまでお気軽にご連絡ください。

APPSWINGBYの

ソリューション

APPSWINGBYのセキュリティサービスについて、詳しくは以下のメニューからお進みください。

システム開発

既存事業のDXによる新規開発、既存業務システムの引継ぎ・機能追加、表計算ソフトによる管理からの卒業等々、様々なWebシステムの開発を行っています。

iOS/Androidアプリ開発

既存事業のDXによるアプリの新規開発から既存アプリの改修・機能追加まで様々なアプリ開発における様々な課題・問題を解決しています。


リファクタリング

他のベンダーが開発したウェブサービスやアプリの不具合改修やソースコードの最適化、また、クラウド移行によってランニングコストが大幅にあがってしまったシステムのリアーキテクチャなどの行っています。