ニューロシンボリックAIとは

ニューロシンボリックAIは、ディープラーニングなどのニューラルネットワークが持つ「データからのパターン学習能力」と、記号論理や推論といった従来のAIが持つ「論理的な推論・思考能力」を統合した、次世代の人工知能のフレームワークのことです。

ニューロシンボリックAIの概要と目的

ニューロシンボリックAI(Neuro-symbolic AI)は、近年注目されている人工知能研究の分野です。従来のAIは、大きく以下の2つのアプローチに分類されていました。

  1. シンボリックAI(Symbolic AI):
    • 知識を記号(シンボル)として表現し、論理的なルールや推論を用いて問題を解く手法です。
    • 得意なこと: 厳密なルールに基づいた論理的な推論、計画、説明可能な意思決定。
    • 苦手なこと: 大量のデータからパターンを学習すること、曖昧な情報の処理。
  2. ニューラルAI(Neural AI):
    • ニューラルネットワーク(ディープラーニング)を用いて、データから特徴量を自動的に学習し、パターンを認識する手法です。
    • 得意なこと: 画像認識、音声認識、自然言語処理など、パターン認識が求められるタスク。
    • 苦手なこと: 複雑な論理的推論、因果関係の理解、学習結果を人間が理解できる形で説明すること。

ニューロシンボリックAIの目的は、これら2つのアプローチの強みを組み合わせ、それぞれの弱点を補完することにあります。これにより、単なるパターン認識だけでなく、人間のように「なぜそう判断したのか」を論理的に説明できる、より高度で汎用的な人工知能の実現を目指します。

ニューロシンボリックAIの仕組み

ニューロシンボリックAIの具体的な実装方法は多岐にわたりますが、基本的な考え方は、ニューラルネットワークとシンボリックな推論システムを協調動作させることです。

例えば、以下のような流れで処理が行われます。

  1. ニューラルネットワークによるデータの認識:
    • ニューラルネットワークが、入力された画像やテキストから、意味のある特徴(シンボル)を抽出します。
    • : 画像から「赤いリンゴ」「青いバナナ」といったオブジェクトを識別し、これらの情報をシンボルとして出力します。
  2. シンボリックシステムによる論理的な推論:
    • ニューラルネットワークから抽出されたシンボル情報が、論理的なルールが記述された推論システムに渡されます。
    • : 「リンゴは赤い」「バナナは黄色い」というルールが事前に定義されていれば、ニューラルネットワークが「赤いバナナ」というシンボルを出力した場合、推論システムはこれを「ルール違反」と判断し、「異常」という結果を導き出すことができます。
  3. 統合された意思決定:
    • このように、ニューラルネットワークの「見る」能力と、シンボリックシステムの「考える」能力が組み合わさることで、単なる画像認識の枠を超えた高度な判断が可能になります。

このアプローチにより、推論の過程が明確になるため、モデルの判断根拠を人間が理解しやすい形で説明できる(説明可能なAI)という利点も生まれます。

ニューロシンボリックAIの応用分野と将来性

ニューロシンボリックAIは、様々な分野での応用が期待されています。

  • 自動運転
    • 画像認識(ニューラル)で車や歩行者を検知し、論理推論(シンボリック)で交通法規や他の車両の動きを予測して、安全な運転計画を立てます。
  • 医療診断
    • 医療画像から病変のパターンを認識し、患者の既往歴や他の検査結果といったシンボル情報と組み合わせて、論理的な診断を下すサポートをします。
  • ロボット工学
    • ニューラルネットワークで周囲の環境を認識し、シンボリックな推論でタスクを計画・実行する自律型ロボット。
  • 自然言語処理
    • 文脈から単語の意味を理解し(ニューラル)、文法的なルールや常識に基づいて論理的な文章を生成したり、複雑な質問に答えたりする。

ニューラルAIは、大量のデータが存在する問題に対しては大きな成果を上げましたが、学習データに存在しない未知の状況や、厳密な論理的思考が求められるタスクには限界がありました。ニューロシンボリックAIは、この限界を乗り越え、より人間的な知能に近いAIの実現に向けた、重要な一歩として位置づけられています。

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