マルチキャストとは

マルチキャストは、コンピュータネットワークにおいて、特定のグループに属する複数の受信者に対して、一度の送信操作で同一のデータを一斉に配信する通信方式のことです。

これは、特定の1対1の相手と通信するユニキャストや、ネットワーク内の全端末へ送信するブロードキャストとは異なり、必要な受信者のみにデータを届けることで、ネットワーク帯域の消費を最小限に抑えつつ効率的な情報伝達を実現する技術を指します。

マルチキャストの仕組みと論理構造

マルチキャストは、送信者が受信者一人ひとりに個別にデータを送るのではなく、ネットワーク上の特定のグループアドレス(マルチキャストアドレス)宛てにパケットを射出することで動作します。

1. グループ管理のメカニズム

マルチキャスト通信を成立させるためには、どの端末がどのグループに属しているかを管理する必要があります。この役割を担うのが、IPv4におけるIGMP(Internet Group Management Protocol)や、IPv6におけるMLD(Multicast Listener Discovery)です。

  • 送信者:特定のマルチキャストアドレス宛てにパケットを1度だけ送信します。
  • ルータ・スイッチ:パケットを複製し、そのグループへの参加を表明している端末が接続されているポートにのみ転送します。
  • 受信者:特定のマルチキャストグループに参加(ジョイン)することで、データを受け取ります。

2. マルチキャストアドレス

マルチキャストに使用されるIPアドレスは、通常の端末用アドレスとは異なる範囲が割り当てられています。

  • IPv4:クラスD(224.0.0.0から239.255.255.255)のアドレス範囲が使用されます。
  • IPv6:先頭が「ff」で始まるアドレス(ff00::/8)が使用されます。

ユニキャスト・ブロードキャストとの比較

ネットワーク負荷の観点から、マルチキャストの優位性を比較します。

通信方式受信者の範囲ネットワーク負荷主な特徴
ユニキャスト特定の1端末高(受信者の数だけパケットが必要)1対1の対話型通信に適する
ブロードキャスト同一セグメントの全端末中(全端末に届くが範囲は限定的)相手が不明な初期通信に適する
マルチキャスト特定グループの全端末低(必要な箇所でのみパケットを複製)大規模な一斉配信に適する

マルチキャストの主な用途

データの同時性と効率性が求められるシーンで広く活用されています。

1. 動画ストリーミング・ライブ配信

数千、数万人の視聴者に対してリアルタイムの映像を届ける際、ユニキャストではサーバーや回線の帯域が枯渇しますが、マルチキャストを用いることでサーバー側の負荷を劇的に軽減できます。

2. 金融情報のリアルタイム配信

株価情報や為替レートなど、一刻を争うデータを多数の端末へ同時に、かつ低遅延で届ける必要がある証券システムなどで利用されます。

3. OSやソフトウェアの一斉配備

学校や企業のPC教室など、多数の端末に対してOSのイメージファイルやソフトウェアのアップデートを一括でインストールする際に用いられます。

技術的な課題と効率化

マルチキャストを適切に運用するためには、L2スイッチレベルでの制御が重要です。

1. IGMPスヌーピング

L2スイッチがIGMPメッセージを監視(スヌーピング)し、マルチキャストグループに参加している端末がどのポートに繋がっているかを学習する機能です。これがない場合、スイッチはマルチキャストをブロードキャストのように全ポートへ転送してしまい、無関係な端末の帯域を圧迫してしまいます。

2. 伝送効率の評価

マルチキャストによる帯域節約率 E は、受信者の数を n としたとき、概念的に以下の関係で表されることがあります。

E = 1 - \frac{1}{n}

受信者が増えれば増えるほど、ユニキャストで個別に送る場合と比較した際の効率性は 100% に近づきます。

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