ユニフィケーションとは
ユニフィケーション(Unification)とは、論理プログラミングや型推論などの分野において、二つの論理式や項が、適切な代入(置換)を行うことで同一になるかどうかを決定し、その代入を求めるプロセスのこと。
ユニフィケーション(Unification)は、主に論理プログラミング(特にProlog)、型推論、自動定理証明、自然言語処理などの分野で用いられる記号操作の基本的なアルゴリズムです。
これは、二つの「項(Term)」または「論理式」が、それらに含まれる変数をどのように置換すれば互いに等しくなるか(つまり「統一」できるか)を判断し、もし可能であればそのための最小限の置換集合(「単一化子」または「単一化代入」)を見つけるプロセスを指します。
ユニフィケーション の基本的な概念
ユニフィケーションは、与えられた二つの式が「パターンマッチング」を行い、それらが「同じ形」になるように変数を具体化する操作と考えることができます。ここでいう「項」とは、定数、変数、または関数記号と項の組み合わせ(関数適用)のことです。
例:
- 定数:
a
,foo
- 変数:
X
,Y
,Z
(通常、大文字で始まる) - 関数適用:
f(X, a)
,g(Y, b, Z)
ユニフィケーションの目的は、二つの項 T1 と T2 が与えられたときに、以下の条件を満たすような代入 θ を見つけることです。
ここで θ は変数を具体的な項に置き換える「代入(Substitution)」を表します。もしそのような θ が存在すれば、その中で最も一般的な(つまり、必要最小限の置換しか行わない)代入を「最一般単一化子(Most General Unifier, MGU)」と呼びます。MGUが存在しない場合、二つの項は単一化不可能(unifiableではない)と判断されます。
ユニフィケーション のルールと動作
ユニフィケーションは、再帰的なプロセスで実行されます。二つの項が単一化可能であるかどうかを判断し、MGUを生成するための基本的なルールは以下の通りです。
- 定数同士: 二つの定数が同一であれば単一化可能。異なれば不可能。
a
とa
→ 単一化可能、代入なしa
とb
→ 単一化不可能
- 変数と項: 変数
X
と項T
が与えられた場合:- もし
X
がT
の中に現れないならば、X
をT
で置き換える代入{X/T}
で単一化可能。 - もし
X
がT
の中に現れるならば(これをオカレンスチェックと呼ぶ)、通常は単一化不可能(無限再帰を防ぐため)。ただし、一部の論理システムでは許容される場合もあります。 X
とa
→ 単一化可能、代入{X/a}
X
とf(Y)
→ 単一化可能、代入{X/f(Y)}
X
とf(X)
→ 単一化不可能(オカレンスチェックに失敗)
- もし
- 関数適用同士: 二つの関数適用
f(T_1, ..., T_n)
とg(S_1, ..., S_m)
が与えられた場合:- 関数記号が異なる (
f
とg
が異なる) か、引数の数が異なる (n
とm
が異なる) ならば単一化不可能。 - 関数記号が同一で引数の数も同じならば、対応する引数
T_i
とS_i
のペアそれぞれに対して再帰的にユニフィケーションを行う。得られた代入の集合を統合する。 f(X, b)
とf(a, Y)
→X
とa
、b
とY
をユニフィケーション。 結果:代入{X/a, Y/b}
で単一化可能。g(X, Y)
とg(a, X)
→X
とa
、Y
とX
をユニフィケーション。X
をa
で置き換え、Y
をa
で置き換え。 結果:代入{X/a, Y/a}
で単一化可能。
- 関数記号が異なる (
ユニフィケーション の応用分野
ユニフィケーションは、多様なコンピュータサイエンスの分野で中心的な役割を果たします。
- 論理プログラミング(Logic Programming): Prologのような論理プログラミング言語は、ユニフィケーションをその実行モデルの中核としています。プログラムは「事実」と「規則」の集合として記述され、クエリが与えられると、推論エンジンはユニフィケーションを用いてデータベース内の事実や規則と照合し、クエリを満足する変数代入を見つけ出します。
- Prologでの例:
parent(X, Y).
(XはYの親である)parent(john, mary).
parent(mary, tom).
クエリ:parent(john, Z).
→Z
はmary
に単一化される。 クエリ:parent(X, tom).
→X
はmary
に単一化される。
- Prologでの例:
- 型推論(Type Inference): HaskellやOCamlなどの関数型プログラミング言語において、変数の型や関数の引数・戻り値の型を自動的に決定するためにユニフィケーションが用いられます。コンパイラは、コード中の型制約を論理式として表現し、それらをユニフィケーションによって解決することで、変数の型を推論します。
- 自動定理証明(Automated Theorem Proving): 数学的な定理や論理式の真偽をコンピュータが自動的に証明する際に、推論規則(特にResolution Principle)と組み合わせてユニフィケーションが用いられます。
- 自然言語処理(Natural Language Processing, NLP): 構文解析や意味解析において、文の構造や単語間の関係性を解釈するために、文法規則と組み合わせてユニフィケーションが応用されることがあります。
- 形式的検証(Formal Verification): ソフトウェアやハードウェアの設計が仕様通りに動作するかを論理的に検証する際に、論理的な等価性や充足可能性のチェックに利用されます。
ユニフィケーションは、二つの論理式や項が、適切な代入を行うことで同一になるかどうかを決定し、その代入を求めるプロセスです。これは、論理プログラミングにおけるプログラム実行の基盤であり、型推論における型の自動決定、自動定理証明、自然言語処理など、コンピュータが記号を操作し、推論を行う様々な分野で中心的な役割を果たします。変数の置き換えとオカレンスチェックを含む再帰的なアルゴリズムによって、与えられた項間の「最も一般的な一致」を見つけ出すことがその核となります。。
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