事業影響度分析とは

事業影響度分析(BIA)は、災害や障害などの危機が発生した場合に、組織の事業活動が受ける影響を特定し、その深刻度を評価するプロセスのことです。

事業影響度分析(BIA)の概要と目的

事業影響度分析(Business Impact Analysis: BIA)は、事業継続マネジメント(BCM)の中核をなす重要なフェーズの一つです。

その主な目的は、組織の主要な事業活動を特定し、それらの活動が中断した場合に生じる潜在的な影響(財務的損失、法的制約、顧客からの信頼低下、風評被害など)を定量的に、または定性的に評価することです。

これにより、組織は限られたリソースの中で、どの事業活動を優先的に復旧させるべきかを明確にし、実効性のある事業継続計画(BCP)を策定するための基盤を築きます。

BIAは、単にITシステムの停止時間を評価するだけでなく、事業活動のサプライチェーン全体、顧客への影響、従業員への影響など、多角的な視点から分析を行います。

BIAの主なステップ

BIAは、通常以下のステップで進められます。

1. 準備と情報収集

BIAの目的、範囲、評価基準を明確にし、分析に必要な情報を収集します。これには、組織の事業構造、主要な製品・サービス、業務プロセス、依存関係(ITシステム、サプライヤー、顧客など)、関連法規などが含まれます。経営層や各部門の担当者へのヒアリングが不可欠です。

2. 重要事業活動の特定

組織が提供する製品やサービスを支える中核となる事業活動を特定します。複数の事業活動がある場合、それらの関連性や依存関係も明確にします。

3. 事業中断シナリオの定義

地震、洪水、火災、サイバー攻撃、パンデミック、サプライヤーの倒産など、組織に影響を与え得る様々な危機事象を想定し、それぞれの事業中断シナリオを定義します。

4. 影響の評価

定義した各事業中断シナリオが、特定した重要事業活動に与える影響を評価します。評価項目は以下のような多岐にわたります。

  • 財務的影響: 売上損失、営業利益への影響、追加コスト(復旧費用、損害賠償など)
  • 非財務的影響: 顧客満足度の低下、ブランドイメージの毀損、法的・規制上の問題、市場シェアの低下、従業員の士気低下など
  • 時間軸に沿った影響: 中断期間が長くなるにつれて影響がどのように増大するかを評価します。

5. 目標復旧時間(RTO)と目標復旧時点(RPO)の設定

影響評価の結果に基づき、各重要事業活動について以下の目標値を設定します。

これらの目標値は、事業活動の重要度や、事業中断が許容できる期間に基づいて決定されます。

6. 依存関係の分析

各事業活動が依存しているリソース(ITシステム、施設、人材、サプライヤー、特定の情報など)を特定し、それらのリソースが利用できなくなった場合の影響も評価します。

7. レポートとレビュー

BIAの結果を文書化し、経営層や関係者と共有します。分析結果は、事業継続戦略の策定や、具体的なBCPの策定に活用されます。

BIAの重要性

BIAは、組織がリスクに効果的に対処し、事業継続能力を向上させるための羅針盤となります。正確なBIAを実施することで、以下のメリットが得られます。

  • 優先順位の明確化: 限られたリソースの中で、どの事業活動やシステムを優先して保護・復旧させるべきかが明確になります。
  • 投資の最適化: 不要な投資を避け、本当に必要な対策にリソースを集中させることができます。
  • 実効性のあるBCPの策定: 曖昧な情報に基づくのではなく、客観的なデータに基づいた現実的で効果的なBCPを策定できます。
  • レジリエンスの向上: 危機発生時に迅速かつ的確な対応が可能となり、事業の早期復旧と継続に貢献します。

BIAは一度行えば終わりではなく、組織の事業環境やリスクが変化するたびに定期的に見直し、更新していくことが不可欠です。

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