対立仮説とは

対立仮説(Alternative Hypothesis, H1​ または HA​)とは、統計的仮説検定において、帰無仮説が棄却された場合に採択される仮説を指します。

これは、研究者がデータを通じて統計的に証明したいと考える主張であり、通常、「効果がある」「差がある」「関連がある」といった、何らかの特定の現象や関係性の存在を示唆します。対立仮説は、帰無仮説の逆または補完的な関係にあります。

対立仮説の基本的な概念

統計的仮説検定では、まず帰無仮説(通常、「差がない」「効果がない」という主張)を設定し、その帰無仮説が真であると仮定した場合に、観測されたデータがどれだけ稀な事象であるかを評価します。もしデータが十分に稀であると判断されれば、帰無仮説は棄却され、対立仮説が採択されます。

主な概念は以下の通りです。

  1. 研究者の主張: 対立仮説は、研究者や分析者がデータから見出したい、あるいは証明したいと考える具体的な効果、差、または関連性を示します。これは、新しい治療法の有効性、特定のマーケティング戦略の影響、あるいはある変数が別の変数に与える影響など、多岐にわたります。
  2. 帰無仮説との関係: 対立仮説は、帰無仮説が主張する「何も変化がない」「差がない」という状態に対抗するものです。
    • 例:
      • 帰無仮説 H0​: 新しい薬は病気の症状に効果がない。
      • 対立仮説 H1​: 新しい薬は病気の症状に効果がある。
  3. 統計的有意性: 対立仮説を採択するためには、観測されたデータが統計的に有意である必要があります。これは、p値が事前に設定された有意水準(α)よりも小さい場合に判断されます。

対立仮説の種類

対立仮説は、その主張の方向性によって主に以下の3つのタイプに分類されます。これは、検定の種類(片側検定か両側検定か)を決定する上で重要です。

  1. 両側対立仮説(Two-sided Alternative Hypothesis): 効果や差が「ある」という事実のみを主張し、その方向性(増加か減少か)は特定しません。
    • 例:新しい学習方法と従来の学習方法で、学生の平均点に差がある
    • 数式表現:μ1​=μ2 (2つの平均 μ1​,μ2​ に差がある)
  2. 片側対立仮説(One-sided Alternative Hypothesis): 効果や差が特定の方向性を持つことを主張します。これはさらに2つに分けられます。
    • 右側対立仮説(Right-sided Alternative Hypothesis): 効果や差が「増加する」「大きい」という方向性を主張します。
      • 例:新しい学習方法は、従来の学習方法よりも平均点が高い
      • 数式表現:μ1​>μ2(μ1​ が μ2​ よりも大きい)
    • 左側対立仮説(Left-sided Alternative Hypothesis): 効果や差が「減少する」「小さい」という方向性を主張します。
      • 例:新しい学習方法は、従来の学習方法よりも平均点が低い
      • 数式表現:μ1​<μ2​(μ1​ が μ2​ よりも小さい)

片側対立仮説を使用する場合、その方向性について理論的根拠や先行研究に基づいた強い仮説があることが求められます。不適切な片側検定は、統計的結論の誤解を招く可能性があります。

対立仮説と統計的仮説検定のプロセスにおける役割

対立仮説は、統計的仮説検定の各段階において重要な役割を担います。

  1. 問題設定の明確化: 研究者が何を証明したいのかを明確にし、データ収集と分析の焦点を定めます。
  2. 検定手法の選択: 対立仮説のタイプ(両側か片側か)によって、使用すべき統計的検定(例:t検定、z検定など)の適用方法が変わります。両側対立仮説の場合は両側検定を、片側対立仮説の場合は片側検定を実施します。
  3. p値の解釈と結論: 計算されたp値が有意水準(α)を下回った場合、帰無仮説は棄却され、対立仮説が統計的に支持されると結論付けられます。これは、単なる偶然ではなく、対立仮説で主張されたような「有意な」効果や差が存在する可能性が高いことを示唆します。
    • 重要な注意点: 統計的に有意であると判断されても、それが必ずしも「大きな」効果や「実用的に重要」な差を意味するわけではありません。統計的有意性は、サンプルサイズやデータのばらつきにも影響されます。効果量(Effect Size)などの指標を合わせて評価することで、実質的な重要性を判断できます。

対立仮説(Alternative Hypothesis)は、統計的仮説検定において、帰無仮説が棄却された場合に採択される仮説であり、研究者がデータを通じて統計的に証明したいと考える主張を具体的に示します。

これは、両側対立仮説(差があることを主張)と片側対立仮説(差が特定の方向にあることを主張)に分類され、検定の種類やp値の解釈に影響を与えます。

対立仮説は、問題設定の明確化、適切な検定手法の選択、そして最終的な統計的結論の導出において中心的な役割を果たします。しかし、統計的有意性が必ずしも実質的な重要性を意味するわけではないため、効果量などの他の指標と併せて総合的に評価することが重要です。

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