構造テストとは

構造テスト(Structural Testing)とは、ソフトウェアテストにおいて、プログラムの内部構造(ソースコード、設計など)に着目し、その網羅性を評価し、潜在的な欠陥を発見することを目的としたテストのこと。

構造テスト(こうぞうテスト、Structural Testing)は、ソフトウェアテストの分類の一つであり、ホワイトボックステスト(White-box Testing)とも呼ばれます。このテストの主な特徴は、テスト担当者がソフトウェアの内部構造、特にソースコード、設計、アーキテクチャなどを理解した上でテストケースを作成し、実行する点にあります。

構造テストの目的は、プログラムの全ての部分が少なくとも一度は実行されるようにテストすることで、潜在的な論理エラー、制御フローの欠陥、データフローの問題などを発見し、テストの網羅性を高めることにあります。

構造テスト の基本的な概念

構造テストは、ソフトウェアの外部からの振る舞い(入力と出力)に着目するブラックボックステストとは対照的です。内部構造を把握することで、特定の条件や経路が適切にテストされているかを確認し、ブラックボックステストでは見落とされがちな欠陥を検出することが可能になります。

構造テストの実施においては、カバレッジ(Coverage)という概念が重要になります。カバレッジとは、テストによって実行されたプログラムの割合を示す指標であり、構造テストの目的の一つは、高いカバレッジを達成することです。

構造テスト の主要なカバレッジ基準

構造テストでは、ソフトウェアのどの部分がテストされたかを評価するために、様々なカバレッジ基準が用いられます。代表的なカバレッジ基準には以下のようなものがあります。

  1. ステートメントカバレッジ(Statement Coverage): プログラム内の全ての実行可能な文(ステートメント)が少なくとも一度は実行されるようにテストケースを作成する基準です。

 \text{ステートメントカバレッジ} = \frac{\text{実行されたステートメント数}}{\text{全てのステートメント数}} \times 100%

  1. 分岐カバレッジ(Branch Coverage): プログラム内の全ての決定点(if文、switch文、ループの条件判定など)において、真と偽の両方の結果を少なくとも一度は実行するようにテストケースを作成する基準です。判定条件カバレッジ(Decision Coverage)とも呼ばれます。

 \text{分岐カバレッジ} = \frac{\text{評価された分岐結果数}}{\text{全ての分岐結果数}} \times 100%

  1. 条件カバレッジ(Condition Coverage): 複合条件文(AND、ORなどを含む条件文)に含まれる個々の条件が、真と偽の両方の結果を少なくとも一度は評価されるようにテストケースを作成する基準です。

 \text{条件カバレッジ} = \frac{\text{評価された条件結果数}}{\text{全ての条件結果数}} \times 100%

  1. パスカバレッジ(Path Coverage): プログラム内の全ての可能な実行パスを少なくとも一度は実行するようにテストケースを作成する基準です。複雑なプログラムではパスの数が膨大になるため、現実的には完全なパスカバレッジを達成することは困難な場合があります。

 \text{パスカバレッジ} = \frac{\text{実行されたパス数}}{\text{全ての実行可能なパス数}} \times 100%

  1. 制御フローグラフカバレッジ(Control Flow Graph Coverage): プログラムの制御フローをグラフで表現し、そのグラフのノード(ステートメント)やエッジ(制御の遷移)を網羅するようにテストケースを作成する基準です。ステートメントカバレッジや分岐カバレッジは、制御フローグラフカバレッジの特殊なケースとみなすことができます。

より高度なカバレッジ基準としては、データフローカバレッジなどもあります。

構造テスト の実施方法

構造テストは、一般的に以下の手順で実施されます。

  1. プログラムの内部構造の理解: テスト対象となるプログラムのソースコードや設計書を分析し、制御フローやデータフローを把握します。
  2. カバレッジ基準の選択: プロジェクトの要件やリスクに応じて、適切なカバレッジ基準を選択します。
  3. テストケースの設計: 選択したカバレッジ基準を満たすように、具体的な入力データや実行手順を含むテストケースを設計します。
  4. テストの実行: 設計されたテストケースに基づいてプログラムを実行し、その結果を記録します。
  5. カバレッジの測定: テスト実行中にどの程度のコードが実行されたかを測定するツール(カバレッジアナライザ)を用いて、達成されたカバレッジを評価します。
  6. テストケースの追加・修正: 目標とするカバレッジを達成するために、不足している部分をカバーする新たなテストケースを追加したり、既存のテストケースを修正したりします。
  7. 結果の分析と報告: テストの実施状況、達成されたカバレッジ、発見された欠陥などを報告します。

構造テスト の利点

構造テストを実施することには、以下のような利点があります。

  • テストの網羅性の向上: プログラムの内部構造に基づいてテストケースを作成するため、ブラックボックステストでは見落とされがちな特定の条件や経路における欠陥を発見できます。
  • 早期の欠陥発見: 複雑な論理エラーや制御フローの誤りなど、開発の初期段階で潜在的な問題を特定できます。
  • コード品質の向上: テストを通じて、冗長なコードや非効率な処理など、コードの品質に関する問題点を発見し、改善を促します。
  • 保守性の向上: 高いカバレッジを達成することで、将来的なコード変更による意図しない影響(回帰バグ)のリスクを低減できます。

構造テスト の課題

一方で、構造テストにはいくつかの課題も存在します。

  • テストケース作成の複雑さ: 内部構造を理解し、適切なカバレッジ基準を満たすテストケースを作成するには、専門的な知識とスキルが必要です。
  • 時間とコスト: 高いカバレッジを達成するためには、多くのテストケースが必要となり、テストの実施と分析に時間とコストがかかる場合があります。
  • 仕様との不一致: 構造テストはコードの網羅性を保証しますが、ソフトウェアが本来の要求仕様を満たしているかどうかは保証しません。ブラックボックステストとの併用が重要です。
  • パスの爆発: 複雑なプログラムでは、実行可能なパスの数が非常に多くなり、現実的な時間内で全てのパスをテストすることは困難です。

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