連鎖法(Chaining)とは
連鎖法(Chaining)とは、ハッシュテーブルにおいて、異なるキーが同じハッシュ値を持つ衝突(collision)が発生した場合に、それらのキーと値を同じハッシュ値に対応する場所に連結リスト(linked list)などのデータ構造を用いて格納する、基本的な衝突回避手法の一つです。
連鎖法 の基本概念
ハッシュテーブルは、キーをハッシュ関数に通して得られたハッシュ値をインデックスとして使用し、キーと値のペアを格納するデータ構造です。
理想的な状況では、異なるキーは異なるハッシュ値を生成し、それぞれ異なる場所に格納されますが、実際にはハッシュ関数の性質やテーブルのサイズなどの要因により、複数のキーが同じハッシュ値を持つ衝突が発生する可能性があります。
連鎖法は、この衝突が発生した場合に、同じハッシュ値を持つ全てのキーと値のペアを、そのハッシュ値に対応するテーブルのエントリに連結リストとして繋げて格納します。
連鎖法 の仕組み
- ハッシュ値の計算: キーが与えられると、ハッシュ関数を用いてそのハッシュ値を計算します。
- テーブルのインデックス: 計算されたハッシュ値をハッシュテーブルのインデックスとして使用します。
- 衝突の検出: そのインデックスに対応する場所に既に別のキーと値のペアが格納されている場合、衝突が発生したと判断します。
- 連結リストへの追加: 衝突が発生した場合、新しいキーと値のペアを、そのインデックスに対応する連結リストの末尾に追加します。もし、そのインデックスが空であれば、新しいキーと値のペアを最初のノードとする連結リストを作成します。
値を検索する際には、まずキーのハッシュ値を計算し、対応するインデックスの連結リストを辿りながら、目的のキーを持つノードを探します。キーが見つかれば、そのノードに格納されている値を取り出します。
連鎖法 のメリット
- 実装が比較的容易: 連結リストなどの基本的なデータ構造を用いるため、実装が比較的簡単です。
- テーブルサイズの影響を受けにくい: ハッシュテーブルのサイズを超えて要素を格納できるため、テーブルサイズを事前に正確に見積もる必要があまりありません。
- 削除が容易: 連結リストからノードを削除する操作は比較的簡単です。
- 最悪の場合の性能低下を限定的: 全てのキーが同じハッシュ値に衝突した場合でも、検索時間は連結リストの長さに比例するO(n)に留まります(nは格納されている要素数)。
連鎖法 のデメリット
- 追加のメモリ使用: 連結リストのノードを格納するための追加のメモリ領域が必要になります。
- 検索時間の増大: 衝突が頻繁に発生し、連結リストが長くなると、検索時間がO(1)からO(n)に近づき、性能が低下する可能性があります。
- キャッシュ効率の低下: 連結リストのノードはメモリ上に分散している可能性があり、連続的なアクセスが少なくなるため、キャッシュの局所性が低下し、性能に影響を与えることがあります。
連鎖法 の最適化
連鎖法の性能を向上させるために、以下のような最適化が行われることがあります。
- 適切なハッシュ関数の選択: 衝突の発生をできるだけ少なくするようなハッシュ関数を選択することが重要です。
- テーブルのリサイズ: 格納される要素数が増加し、連結リストの平均長が一定の閾値を超えた場合に、ハッシュテーブルのサイズを動的に拡張し、再ハッシュ(rehashing)を行うことで、連結リストの長さを短く保ちます。
- 連結リスト以外のデータ構造の利用: 連結リストの代わりに、平衡二分探索木などのより効率的なデータ構造を衝突した要素の格納に用いることで、最悪の場合の検索時間を改善することができます(特に連結リストが長くなる場合に有効です)。
連鎖法 の応用例
連鎖法は、多くのプログラミング言語のハッシュテーブル(辞書、マップなど)の実装で用いられています。
- Python の辞書(dictionary): 初期の実装では連鎖法が用いられていました。
- Java の HashMap: デフォルトの衝突回避戦略として連鎖法(Java 8以降では連結リストと平衡二分探索木の組み合わせ)を使用しています。
- C++ の std::unordered_map: 標準ライブラリのハッシュマップ実装でも連鎖法が用いられることがあります。
連鎖法は、ハッシュテーブルにおける衝突を効率的に処理するための基本的な手法であり、その実装の容易さと、最悪の場合の性能低下を比較的抑えられるという利点から、広く利用されています。ただし、連結リストが長くなることによる性能低下を避けるためには、適切なハッシュ関数の選択やテーブルのリサイズなどの対策が重要となります。
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