非線形回帰とは

非線形回帰分析とは、統計学における回帰分析の一種であり、目的変数(従属変数)と一つまたは複数の説明変数(独立変数)の間に、単純な一次関数では捉えられない複雑な関係性(曲線的な関係など)が存在する場合に用いられる手法です。

線形回帰分析が変数間の線形な関係をモデル化するのに対し、非線形回帰分析では、指数関数、対数関数、べき関数、三角関数など、様々な非線形関数を用いてデータに適合するモデルを構築し、変数間の関係性をより柔軟に表現します

非線形回帰分析 の基本概念

現実世界の多くの現象は、変数間で非線形な関係を示すことが少なくありません。例えば、薬の投与量と効果の関係、時間経過に伴う成長や減衰のプロセス、物理現象における複雑な相互作用などが挙げられます。非線形回帰分析は、このような非線形な関係性を数学的な関数で記述し、データの背後にあるメカニズムを理解したり、将来の値をより正確に予測したりすることを目的とします。

非線形回帰モデルは、一般的に以下の形式で表されます。

y=f(x1​,x2​,…,xk​;β1​,β2​,…,βp​)+ϵ

ここで、

  • y は目的変数
  • x1​,x2​,…,xk​ は説明変数
  • β1​,β2​,…,βp​ はモデルのパラメータ(推定されるべき係数)
  • f は説明変数とパラメータ間の非線形関数
  • ϵ は誤差項

非線形回帰分析 の特徴

  • 柔軟なモデリング: 線形関係だけでなく、指数関数的、対数関数的、多項式的など、様々な関数形を用いて複雑な関係性をモデル化できます。
  • より現実的な表現: 多くの自然現象や社会現象は非線形な振る舞いを示すため、より現実に即したモデルを構築できる可能性があります。
  • パラメータ推定の複雑性: 線形回帰分析のように解析的な解が存在しない場合が多く、反復的な最適化アルゴリズム(例えば、ガウス・ニュートン法、レーベンバーグ・マルカート法など)を用いてパラメータを推定する必要があります。
  • 前提条件の検討: 線形回帰分析と同様に、誤差項の独立性、等分散性、正規性などの前提条件を検討する必要がありますが、非線形モデルにおいてはこれらの評価がより複雑になる場合があります。
  • 過学習のリスク: 複雑な非線形モデルは、データに過剰に適合し、未知のデータに対する予測性能が低下するリスクがあります。適切なモデル選択と評価が重要です。

非線形回帰モデルの例

非線形回帰分析で用いられる関数形は多岐にわたります。代表的な例として以下のようなものがあります。

  • 多項式回帰: y=β0​+β1​x+β2​x2+…+βn​xn+ϵ
  • 指数回帰: y=β0​exp(β1​x)+ϵ
  • 対数回帰: y=β0​+β1​ln(x)+ϵ
  • べき乗回帰: y=β0​xβ1​+ϵ
  • ロジスティック回帰(二値分類に用いられることが多いですが、連続値のモデリングにも応用可能): y=1+exp(−β1​x)β0​​+ϵ
  • 成長曲線モデル(例:ロジスティック成長モデル、ゴンペルツ曲線): 生物の成長や市場の飽和などをモデル化
  • 薬物動態モデル: 薬物の体内での濃度変化をモデル化

非線形回帰分析 の手順

  1. データの理解と可視化: 目的変数と説明変数の関係を散布図などで確認し、非線形な関係性の可能性を検討します。
  2. モデルの選択: データのパターンや理論的な背景に基づいて、適切な非線形関数形を選択します。
  3. パラメータの初期値の設定: 最適化アルゴリズムを開始するためのパラメータの初期値を設定します。適切な初期値の設定は、アルゴリズムの収束に影響を与えることがあります。
  4. パラメータの推定: 選択したモデルとデータを用いて、反復的な最適化アルゴリズムによりパラメータの値を推定します。
  5. モデルの評価: 推定されたモデルの適合度(決定係数、残差分析など)、パラメータの有意性、予測性能などを評価します。必要に応じてモデルの修正や再選択を行います。

非線形回帰分析 の応用例

非線形回帰分析は、自然科学、社会科学、工学、医学など、幅広い分野で応用されています。

  • 生物学: 生物の成長モデル、酵素反応の速度解析
  • 経済学: 需要曲線、収穫逓減の法則のモデル化
  • 工学: 材料の強度特性の解析、システムの応答特性のモデル化
  • 医学: 薬物の血中濃度推移の解析、疾病の進行予測
  • 環境科学: 汚染物質の拡散モデル、気候変動の予測

非線形回帰分析は、目的変数と説明変数の間に非線形な関係が存在する場合に、その関係性を柔軟にモデル化し、データに基づいた予測や理解を深めるための強力な統計的手法です。適切なモデル選択、パラメータ推定、モデル評価が重要であり、線形回帰分析と並んで、データ分析における基本的なツールの一つとして活用されています。

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