可用性

可用性とは、システムやサービスがユーザーからの要求に対してどれだけの時間、正常に稼働し、利用可能であるかを示す指標です。

高可用性(High Availability)は、システムやサービスがほぼ常に稼働している状態を指し、特に重要なビジネスやミッションクリティカルなアプリケーションでは非常に重要です。

可用性の概要と重要性

可用性(Availability)は、情報セキュリティにおけるCIA(機密性、完全性、可用性)の三大要素の一つとして広く認識されています。システムやサービスが正常に稼働し、必要な時にアクセスでき、滞りなく機能を提供できる状態を指します。高い可用性は、現代のビジネスにおいて不可欠であり、システムダウンやサービス停止は、企業の信頼性低下、機会損失、経済的損害、さらには社会的信用の失墜に直結する可能性があります。

例えば、オンラインバンキングシステムが利用できなくなれば、顧客は取引を行えず、銀行の業務にも支障が出ます。また、ECサイトが停止すれば、販売機会を失い、顧客体験も損なわれます。


可用性を損なう要因

可用性を損なう要因は多岐にわたります。

  • ハードウェア障害: サーバー、ストレージ、ネットワーク機器などの物理的な故障。
  • ソフトウェア障害: OSやアプリケーションのバグ、設定ミス、メモリリークなどによるシステムクラッシュ。
  • ネットワーク障害: 回線の切断、トラフィックの集中(輻輳)、ネットワーク機器の故障など。
  • 自然災害: 地震、台風、洪水、落雷などによる設備損壊や停電。
  • 人為的ミス: 操作ミス、設定ミス、誤削除など。
  • サイバー攻撃: DoS/DDoS攻撃によるサービス停止、マルウェア感染によるシステムダウン、不正アクセスによる機能停止など。
  • 電力供給の問題: 停電、電力サージ、電圧低下など。

可用性を高めるための対策

可用性を確保し、向上させるためには、さまざまな技術的・組織的対策が講じられます。

1. 冗長化(Redundancy)

システムを構成する重要なコンポーネント(サーバー、ネットワーク機器、電源など)を複数用意し、一つが故障しても別のコンポーネントが処理を引き継ぐように設計することです。

  • サーバー冗長化: 複数のサーバーで構成し、ロードバランサーで負荷分散を行うことで、単一サーバーの障害がシステム全体に影響することを防ぎます。
  • ネットワーク冗長化: 複数のネットワークパスや機器を用意し、経路障害時にも通信が継続できるようにします。
  • 電源冗長化: 無停電電源装置(UPS)や予備電源、自家発電機などを導入し、停電時にも電力供給を維持します。
  • データ冗長化: RAID(Redundant Array of Independent Disks)によるディスクの多重化や、データのバックアップ、レプリケーション(複製)を行うことで、データ損失を防ぎ、迅速な復旧を可能にします。

2. フェイルオーバー(Failover)とフォールバック(Fallback)

  • フェイルオーバー: 稼働中のシステムに障害が発生した場合、待機系のシステムに自動的に処理を切り替える機能です。これにより、サービスの中断時間を最小限に抑えます。
  • フォールバック: フェイルオーバー後に、障害が発生した本来のシステムが復旧した際に、再びそのシステムに処理を戻す機能です。

3. クラスタリング(Clustering)

複数のサーバーを連携させ、一台のシステムとして稼働させる技術です。これにより、一台のサーバーが停止しても、他のサーバーが処理を引き継ぎ、サービスを継続できます。

4. 負荷分散(Load Balancing)

複数のサーバーやネットワーク機器に処理要求を分散させることで、特定の機器への負荷集中を防ぎ、パフォーマンスを維持し、障害発生時の影響を軽減します。

5. 監視とアラート

システムの状態(CPU使用率、メモリ使用量、ネットワークトラフィックなど)を常時監視し、異常を検知した際には管理者へ自動で通知する仕組みを導入します。これにより、障害の兆候を早期に発見し、事前に対策を講じることが可能になります。

6. 定期的なバックアップと災害対策

データの損失に備えて、定期的にバックアップを取得し、異なる場所に保管します。また、大規模な災害に備え、遠隔地に災害復旧サイト(DRサイト)を構築するなどのディザスタリカバリ(DR)対策も重要です。

7. 事業継続計画(BCP)の策定

システム障害だけでなく、大規模災害やパンデミックなど、あらゆる危機が発生した場合に、事業を継続するための具体的な計画である**事業継続計画(BCP)**を策定し、定期的な訓練を行うことで、組織としての対応能力を高めます。

可用性の目標値は、サービスの性質によって異なります。例えば、金融システムのように常に稼働が求められるシステムでは、「ファイブナイン」(稼働率99.999%)といった極めて高い可用性が求められることがあります。

$稼働率 = \frac{\text{総稼働時間} - \text{停止時間}}{\text{総稼働時間}} \times 100% $

可用性は、単にシステムを動かし続けるだけでなく、緊急時に迅速に復旧できる能力も含めた、事業継続の要となる特性です。

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