これからの会社の在り方と従業員としてのAIの採用
今、企業では人手不足の問題だけではなく、従業員の退職や仕事へのプレッシャーからくる心身疲労を理由とした長期離脱など人に関わる様々な問題を抱えています。そんな中、人に代わる労働の手段として世界中で注目をされているのが”AI”です。
近未来の企業を描いていく中で、AIの存在は切っても切り離すことができない存在であることは間違いありませんが、AIと従業員を共存させた企業の在り方をどのようにして描いていくのか、未来図を描くことが難しいと感じていらっしゃる経営者や管理職の方も多くいらっしゃると思います。そこで今回は、「これからの会社の在り方と従業員としてのAIの採用」と題して、人とAIが混在して働くことが前提となる会社の近未来像について考えていきたいと思います。
このテーマは非常に多岐にわたり、様々な側面から議論する必要があるこれからの企業の課題となるものですので、今回はいくつかの重要なポイントに絞って考えていきます。では、さっそく始めていきましょう。
AI導入の目的と範囲
まず、企業が近未来の姿をイメージする上でやるべきことが、”AIを導入する目的を明確にする”ことです。企業のドメインや規模、地域性、解決したい課題や目的によって、AIの活用方法や人の役割も大きく変わってきますが、今回はポイントを絞って簡潔にまとめます。
AI導入の目的と範囲の例
- 業務効率化・自動化: 定型業務やデータ処理、分析などをAIに任せることで、業務効率を大幅に向上させることができます。これにより、従業員はより創造的な業務に集中できるようになります。
- 意思決定の高度化: 大量のデータ分析や予測をAIが行うことで、より精度の高い意思決定が可能になります。
- 顧客体験の向上: AIチャットボットやパーソナライズされたサービス提供などにより、顧客満足度を高めることができます。
- 新規事業の創出: AI技術を活用した新しいサービスやビジネスモデルを開発することで、企業の成長を促進することができます。
AI導入の範囲は、上記の目的と密接に関わってきます。一部の業務に限定的に導入するのか、企業全体で積極的に活用していくのか、戦略的な判断が必要です。
人からAIへの入れ替えについて
人からAIへの入れ替えは、社会的に大きな議論を呼ぶテーマです。確かに、AIは一部の業務を人よりも効率的にこなせる可能性があります。しかし、以下の点を考慮する必要があります。
- AIが得意なこと、苦手なこと: AIはデータ処理や反復作業は得意ですが、創造性、共感性、倫理観など人間特有の能力は苦手です。
- 雇用への影響: AI導入による雇用喪失は避けられない可能性があります。企業は従業員の再教育や配置転換などの対策を講じる必要があります。
- 倫理的な問題: AIの判断による偏見や差別、責任の所在など、倫理的な問題も考慮する必要があります。
人からAIへの完全な入れ替えは、現時点では現実的ではなく、また倫理的にも問題が多いと考えられます。むしろ、近未来の働く環境は、人とAIが協働する「人とAIのハイブリッドワーク」が主流になると考えています。
これからの会社の在り方
AIの普及により、これからの会社の在り方は大きく変わっていくでしょう。AI技術は急速に進化しており、企業は常に最新の技術動向を把握し、変化に柔軟に対応していく必要があります。企業にとっても企業で働く人々にとっても変化への対応力が求められることなるでしょう。
人材育成
これからの会社の在り方を考えるうえで、人材育成も今まで以上に重要になります。 AIを活用できる人材、AIと協働できる人材の育成が企業の明暗を分ける時代になるかもしれません。
AI導入をスムーズに進めるためには、従業員の理解と協力を得られるような企業文化を醸成する必要もあります。AIの利用に関する倫理的なガイドラインなどを策定し、責任あるAI活用を推進していくなどの管理面についても必要となることでしょう。いい表現ではありませんが、外部から半ば強制的に求められるようになる可能性もあるかもしれません。
従業員としてのAIの捉え方
AIが職場に導入されることで、従業員は様々な影響を受ける可能性があります。それを肯定的な側面と否定的な側面に分け、さらに具体的な事例や対応策を交えながら詳細に見ていきます。
肯定的な側面:AIを「協働者」「能力拡張ツール」として捉える
- 業務効率の向上と時間創出: AIが定型業務やデータ処理を担うことで、従業員はより創造的、戦略的な業務に集中できるようになります。例えば、経理担当者がAIによる自動仕訳処理によって伝票入力の時間を大幅に削減し、分析業務や改善提案に時間を使えるようになる、といったケースが考えられます。これにより、仕事の質と満足度が向上する可能性があります。
- 高度な分析と意思決定の支援: AIは大量のデータを高速に分析し、人間では気づきにくい傾向やパターンを発見することができます。これにより、従業員はデータに基づいたより精度の高い意思決定を行うことが可能になります。例えば、マーケティング担当者がAIによる顧客データ分析を活用し、より効果的なキャンペーン戦略を立案する、といった活用方法が考えられます。
- 新しいスキル習得とキャリアアップの機会: AIの導入は、従業員に新しいスキルを習得する機会を与えます。AIを活用するための知識やスキル、AIと協働するためのコミュニケーション能力などが求められるようになり、これらのスキルを習得することで、従業員の市場価値を高めることができます。例えば、営業担当者がAIによる顧客管理システムを使いこなすことで、データ分析能力や顧客対応能力を向上させる、といったことが考えられます。
- 仕事の質の向上とモチベーション向上: AIの活用により、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになり、仕事のやりがいや達成感を感じやすくなる可能性があります。また、AIと協働することで、新しい仕事のスタイルや働き方を経験し、モチベーション向上につながる可能性もあります。
否定的な側面:AIを「脅威」「代替者」として捉える
- 雇用不安と仕事の喪失: AIによる業務の自動化が進むことで、自身の仕事がAIに代替されるのではないかという不安を感じる従業員もいるでしょう。特に、定型業務や反復作業に従事している従業員は、より強い不安を感じる可能性があります。
- スキル陳腐化の懸念: AI技術の進化は早く、従業員が持つスキルが陳腐化してしまうのではないかという懸念もあります。特に、新しい技術への適応が苦手な従業員は、より強い不安を感じる可能性があります。
- 仕事の変化への抵抗: AIの導入によって仕事の内容や進め方が大きく変わることに抵抗を感じる従業員もいるでしょう。特に、長年同じやり方で仕事をしてきた従業員は、変化への適応に苦労する可能性があります。
- AIへの不信感と操作への抵抗: AIの判断基準や動作原理が理解できない場合、AIに対して不信感を抱いたり、操作に抵抗を感じたりする従業員もいるでしょう。特に、ITリテラシーが高くない従業員は、より強い抵抗を感じる可能性があります。
- 倫理的な懸念: AIの判断による偏見や差別、責任の所在など、倫理的な問題に対する懸念も考えられます。例えば、採用選考にAIが導入された場合、AIの判断に偏りがないか、公平性が保たれているかといった点が懸念される可能性があります。
従業員がAIを肯定的に捉えるための企業の対応
従業員がAIを脅威ではなく、協働者として捉え、積極的に活用するためには、企業側の適切な対応が不可欠です。
- AI導入の目的と意義の説明: 従業員に対して、AI導入の目的や意義、導入によってどのような変化が起こるのかを丁寧に説明することが重要です。単なるコスト削減ではなく、従業員の能力向上や顧客への価値提供につながることを明確に伝えることで、従業員の理解と協力を得やすくなります。
- 十分なトレーニングと教育の提供: 従業員がAIツールを使いこなせるように、十分なトレーニングと教育を提供することが重要です。また、AIに関する基礎知識や倫理観を学ぶ機会を提供することも有益です。
- キャリア開発支援: AI導入によって仕事内容が変わる可能性があるため、従業員のキャリア開発を支援することが重要です。新しいスキル習得のための研修プログラムの提供や、キャリアカウンセリングなどを実施することで、従業員の不安を軽減し、キャリアアップを支援することができます。
- コミュニケーションとフィードバックの促進: AI導入後も、従業員とのコミュニケーションを密にし、フィードバックを収集することが重要です。従業員の意見や要望を反映することで、より効果的なAI活用につなげることができます。
- 倫理的なガイドラインの策定と周知: AIの利用に関する倫理的なガイドラインを策定し、従業員に周知徹底することで、倫理的な懸念を軽減し、責任あるAI活用を促進することができます。
- 成功事例の共有: 社内外のAI活用事例を共有することで、従業員はAIの可能性やメリットを具体的に理解し、前向きに捉えることができるようになります。
従業員がAIをどのように捉えるかは、AI導入の成否を大きく左右する重要な要素です。企業は従業員の不安や懸念に真摯に向き合い、適切な対応を行うことで、AIを脅威ではなく、協働者として受け入れられるように環境を整備する必要があります。従業員がAIを積極的に活用することで、企業全体の生産性向上やイノベーション創出につながり、より良い未来を築くことができるでしょう。
まとめ
AIの導入は企業にとって大きなチャンスであると同時に、様々な課題も伴います。企業はAI導入の目的を明確にし、倫理的な問題にも配慮しながら、人とAIが協働する新しい働き方を模索していく必要があります。これまでの既成概念を捨て、AIと共存する新しい会社の形をつくり、厳しい競争社会を勝ち抜いていきましょう。
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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数
監修
株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。