2025年のテクノロジートレンドを追う ~RustとWebAssemblyの台頭

Trending technology in 2025

2024年も残り僅かとなってしまいました。振り返れば、能登半島地震、自民党議員の裏金報道、月探査機「 SLIMスリム 」の月面着陸、日経平均株価がバブル期超え、34年ぶりの円安、、今年も激動の一年となりました。皆様にとってはどんな一年だったでしょうか?

今年も、”来年こそは、平和で、実りある幸せな一年にしたい”と願いつつ、2025年を迎えたいと思います。

さて、余談はここまでにしておき、さっそく本日のテーマである「2025年のテクノロジートレンド」についてご紹介したいと思います。2025年に注目すべきテクノロジートレンドが思いのほか多いものですので、記事をいくつかに分けてご紹介したいと思います。ということで今回は、「RustとWebAssembly」です。聞きなれない方もいらっしゃると思いますので、ふたつの技術についての簡単なご解説もしています。是非、ご興味のある方はご覧ください。

では、さっそくはじめましょう!

Rustとは

「Rustとは何か?」とえは、一言で表すなら「安全性、速度、並行性を重視したシステムプログラミング言語」です。

もう少し詳しく解説すると、Rustはメモリ安全性とパフォーマンスという、従来は相反すると考えられてきた要素を高度に両立させた、比較的新しいプログラミング言語と言えます。Rustは、2006年にMozillaの研究者であるGraydon Hoare氏によって開発が始まり、2015年にバージョン1.0がリリースされて以来、急速に注目を集めています。

Rustの言語特性と強み

Rustの言語特性と強みをより簡潔にまとめると、以下のようになります。

  • メモリ安全性: ガベージコレクションに頼らず、所有権システムによってメモリ管理をコンパイル時に行うことで、メモリリークやダングリングポインタなどのバグを未然に防ぎます。
  • 高いパフォーマンス: コンパイル言語であり、C/C++と同等の高速な実行速度を実現します。実行時のオーバーヘッドが少ないため、リソースが限られた環境でも効率的に動作します。
  • 並行性: データ競合をコンパイル時に検出することで、安全な並行プログラミングを支援します。マルチスレッド環境でも安心してコードを実行できます。
  • 表現力豊かな型システム: 静的型付けと高度な型推論により、コンパイル時に多くのエラーを検出できます。代数的データ型、トレイト、パターンマッチングなど、表現力豊かな機能により、安全で簡潔なコード記述を可能にします。
  • ゼロコスト抽象化: 抽象化によるパフォーマンスの低下を最小限に抑えます。高水準の抽象化を使用しながらも、低水準のコードと同等のパフォーマンスを維持できます。
Rustの強みをもう少しだけ詳しく解説
  • メモリ安全性(Memory Safety): Rustの最大の特徴と言えるのが、ガベージコレクション(GC)に頼らずにメモリ安全性を保証する点です。これは「所有権(Ownership)」、「借用(Borrowing)」、「ライフタイム(Lifetimes)」と呼ばれる独自の仕組みによって実現されています。これにより、CやC++で頻発するメモリリークやダングリングポインタといった問題をコンパイル時に検出することができ、より安全で信頼性の高いソフトウェア開発が可能になります。
  • 高いパフォーマンス(High Performance): Rustはコンパイル言語であり、CやC++と同等のパフォーマンスを発揮します。低水準の制御が可能であり、効率的なメモリ管理を行うことで、高速な実行速度を実現します。ガベージコレクションのような実行時のオーバーヘッドがないため、リソースが限られた環境でも効率的に動作します。
  • 並行性(Concurrency): 近年のマルチコアプロセッサの普及に伴い、並行処理の重要性が増しています。Rustは、データ競合(Data Race)をコンパイル時に防ぐことで、安全な並行プログラミングを支援します。これにより、複数のスレッドが同時に同じデータにアクセスすることによるバグを防ぎ、効率的な並行処理を実現できます。
  • 表現力豊かな型システム(Expressive Type System): Rustは静的型付け言語であり、強力な型システムを備えています。これにより、コンパイル時に多くのエラーを検出することができ、実行時のバグを減らすことができます。また、代数的データ型(ADT)、トレイト(Traits、インターフェースのようなもの)、パターンマッチングなど、表現力豊かな型システムにより、より安全で簡潔なコードを書くことが可能です。
  • ゼロコスト抽象化(Zero-Cost Abstractions): Rustは、抽象化によるオーバーヘッドを最小限に抑えることを目指しています。これにより、高水準の抽象化を使用しながらも、低水準のコードと同等のパフォーマンスを維持することができます。

Rustのメモリ安全性特性についての技術的解説

Rustのメモリ安全性を支える主要な概念は、「所有権(Ownership)」、「借用(Borrowing)」、「ライフタイム(Lifetimes)」です。

  • 所有権: Rustでは、すべての値は単一の「所有者」を持ちます。所有者がスコープから外れると、値は自動的に破棄されます。これにより、メモリリークを防ぎます。
  • 借用: 複数のコード部分が同じデータにアクセスする必要がある場合、「借用」という仕組みを使用します。借用は、データの所有権を移動させることなく、一時的にデータへのアクセスを許可します。借用には、「可変借用(mutable borrow)」と「不変借用(immutable borrow)」の2種類があり、データ競合を防ぐためのルールが定められています。
  • ライフタイム: 借用が有効な期間を「ライフタイム」と呼びます。Rustコンパイラは、ライフタイムを静的に解析することで、ダングリングポインタなどの問題をコンパイル時に検出します。

これらの概念により、Rustはガベージコレクションに頼らずにメモリ安全性を保証します。これは、パフォーマンスの向上にもつながります。なぜなら、ガベージコレクションのような実行時のオーバーヘッドがないため、より効率的なメモリ管理が可能になるからです。

WebAssemblyと組み合わせることで、このメモリ安全性の恩恵をWebアプリケーションにもたらすことができます。Webアプリケーションのセキュリティと信頼性を向上させる上で、非常に重要な要素となります。

Rustは、安全性とパフォーマンスを両立する次世代のシステムプログラミング言語と言えます。メモリ安全性、高いパフォーマンス、安全な並行処理など、現代のソフトウェア開発における重要な課題を解決する可能性を秘めており、今後の発展が期待されるプログラミング言語です。後述しますが、特にWebAssemblyとの組み合わせは、Web開発の未来を大きく変える可能性を秘めていると言えるでしょう。

次のページでは、”WebAssembly (WASM) とは ~Webの可能性を拡張する革新的な技術 “についてご紹介します。

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この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY

株式会社APPSWINGBY マーケティング

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監修

APPSWINGBY CTO川嶋秀一

株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。