2025年のテクノロジートレンドを追う ~RustとWebAssemblyの台頭 その3
- 1. RustとWebAssemblyを組み合わせるメリット
- 1.1. RustとWebAssemblyを組み合わせるメリット
- 1.1.1. 多くのツールがRustで書き直されている
- 2. PGLiteやFlutter for WebなどWASMを使用したブリップ
- 2.1. PGLite:Webブラウザ上で動作するPostgreSQL
- 2.2. Flutter for Web:FlutterアプリケーションをWebで実行
- 2.3. その他のWASMを使用した事例
- 3. 2025年のテクノロジー業界におけるRustとWebAssemblyの動向
- 3.1. RustとWebAssemblyの連携:Webの未来を創造
- 4. まとめ
RustとWebAssemblyを組み合わせるメリット
RustとWebAssemblyを組み合わせることは、Web開発において非常に大きなメリットをもたらします。パフォーマンスと安全性の両方を向上させることができ、従来のWeb技術では難しかった高度なアプリケーションをWeb上で実現する可能性を秘めています。
RustとWebAssemblyを組み合わせるメリット
RustとWebAssemblyを組み合わせる主なメリットは以下の通りです。
- ネイティブに近いパフォーマンス: Rustで記述されたコードをWebAssemblyにコンパイルすることで、JavaScriptに比べてはるかに高速な実行速度を実現できます。これにより、Webアプリケーションのパフォーマンスが大幅に向上し、ゲームやグラフィック集約型アプリケーションなど、これまでWebでは難しかった分野のアプリケーションも快適に動作させることができます。
- メモリ安全性: Rustの所有権システムにより、メモリリークやダングリングポインタなどのメモリ安全性の問題をコンパイル時に検出できます。これにより、バグの少ない、信頼性の高いWebアプリケーションを開発できます。WebAssembly自体もサンドボックス環境で実行されるため、二重の安全性を提供します。
- 言語の多様性: Rust以外のC/C++などの言語もWebAssemblyにコンパイルできますが、Rustは特にWebAssemblyとの相性が良く、効率的なコード生成やWebAssembly特有の機能との連携が容易です。
- 既存のWeb技術との連携: WebAssemblyはJavaScriptと連携して動作するため、既存のWebアプリケーションに段階的に導入することができます。パフォーマンスが重要な部分をRust + WebAssemblyで記述し、それ以外の部分をJavaScriptで記述するなど、柔軟な開発が可能です。
- ポータビリティ: WebAssemblyは様々なプラットフォームで動作するため、異なるOSやデバイスでも同じように動作するWebアプリケーションを開発できます。
多くのツールがRustで書き直されている
近年、パフォーマンスや安全性を重視するプロジェクトにおいて、多くのツールがRustで書き直される傾向にあります。これは、Rustが提供するメリットが広く認識されてきた結果と言えるでしょう。
- 例1:npmレジストリの一部: JavaScriptのパッケージマネージャであるnpmのレジストリの一部がRustで書き直され、パフォーマンスが大幅に向上しました。
- 例2:Firefoxの一部コンポーネント: WebブラウザであるFirefoxの一部コンポーネントがRustで書き直され、パフォーマンスと安全性が向上しました。
- 例3:Deno: Node.jsの後継を目指すランタイム環境であるDenoは、Rustで記述されています。
- 例4:Cloudflare Workers: CloudflareのサーバーレスプラットフォームであるCloudflare Workersは、WebAssemblyをサポートしており、Rustで記述されたコードを高速に実行できます。
これらの事例は、Rustがパフォーマンスと安全性を両立する強力な言語であることを示しています。WebAssemblyと組み合わせることで、これらのメリットをWebアプリケーションにもたらすことができます。
PGLiteやFlutter for WebなどWASMを使用したブリップ
WebAssembly(WASM)は、理論だけでなく、実際に多くのプロジェクトで活用され始めており、Webの可能性を大きく広げています。ここでは、PGLiteとFlutter for Webという、WASMを活用した代表的な事例を紹介します。
PGLite:Webブラウザ上で動作するPostgreSQL
PGLiteは、PostgreSQLのソースコードをWebAssemblyにコンパイルすることで、Webブラウザ上でPostgreSQLを実行できるようにしたプロジェクトです。これにより、Webブラウザ上で本格的なデータベースを利用できるようになり、これまでサーバーサイドでしか利用できなかったデータベース処理をクライアントサイドで実行できるようになりました。
- 技術的な背景: PostgreSQLはC言語で記述されています。PGLiteは、Emscriptenというツールを使ってPostgreSQLのCのソースコードをWebAssemblyにコンパイルしています。
- メリット:
- オフラインでのデータベース利用: インターネット接続がない環境でもデータベースを利用できます。
- クライアントサイドでのデータ処理: サーバーへの負荷を軽減し、高速なデータ処理を実現できます。
- 開発環境の簡素化: 開発環境にPostgreSQLをインストールする必要がなくなります。
- 活用例:
- Webアプリケーションのローカルデータベースとして利用。
- オフラインで動作するWebアプリケーションの開発。
- 教育目的でのPostgreSQLの学習環境として利用。
- 関連情報: Supabase社が提供する「postgres.new」では、PGLiteをWebブラウザ上で簡単に試すことができます。また、「dabase.build:Live Share」という機能により、Webブラウザ上で実行中のPGLiteに外部のPostgreSQLクライアントから接続することも可能です。
Flutter for Web:FlutterアプリケーションをWebで実行
Flutterは、Googleが開発したUIフレームワークで、iOS、Android、Web、デスクトップなど、様々なプラットフォームで動作するアプリケーションを開発できます。Flutter for Webは、FlutterアプリケーションをWebブラウザで実行するための機能です。
- WASMの活用: Flutter for Webでは、Dartで記述されたコードをJavaScriptまたはWebAssemblyにコンパイルすることで、Webブラウザ上でアプリケーションを実行します。特に、パフォーマンスが重要なアプリケーションでは、WebAssemblyへのコンパイルが有効です。
- メリット:
- マルチプラットフォーム対応: 同じコードベースでWebアプリケーションとネイティブアプリケーションを開発できます。
- 高いパフォーマンス: WebAssemblyを活用することで、ネイティブに近いパフォーマンスを実現できます。
- 豊富なUIウィジェット: Flutterの豊富なUIウィジェットを利用して、リッチなWebアプリケーションを開発できます。
- 技術的な詳細: Flutter for Webは、CanvasKitというレンダリングエンジンを使用しており、WebAssemblyとWebGLを活用して高速な描画を実現しています。
- 注意事項: Flutter for WebでWASMを使用するには、特定のブラウザ(Chromeなど)と設定が必要になる場合があります。また、dart:htmlやpackage:jsなど、特定のパッケージを使用している場合はコンパイルできない場合があります。
その他のWASMを使用した事例
上記以外にも、WASMは様々な分野で活用されています。
- ゲーム: Webベースの3Dゲームやオンラインゲームの開発に活用されています。
- グラフィック集約型アプリケーション: WebベースのCADツール、画像編集ツール、3Dモデリングツールなどに活用されています。
- Webベースの生産性向上ツール: オフィススイート、IDEなど、従来のデスクトップアプリケーションをWebに移植する際に活用されています。
- VR/AR: WebベースのVR/ARコンテンツの開発に活用されています。
- サーバーレスコンピューティング: WebAssemblyをサーバーサイドで実行する技術も登場しており、サーバーレスコンピューティングの分野でも活用され始めています。
PGLiteやFlutter for Webなどの事例は、WASMがWebの可能性を大きく広げていることを示しています。これまでネイティブアプリケーションでしか実現できなかったような高度な処理やパフォーマンスを、Webブラウザ上で実現できるようになりつつあります。今後もWASMの活用事例は増えていくと予想され、Web開発の未来を大きく変える可能性を秘めていると言えるでしょう。
2025年のテクノロジー業界におけるRustとWebAssemblyの動向
Rustは、メモリ安全性とパフォーマンスを両立するプログラミング言語として、システムプログラミングの分野で急速に普及しています。2025年には、以下の動向が予想されます。
- Linuxカーネルへの採用拡大: Linuxカーネルの一部にRustが採用されたことは大きなニュースでしたが、今後も採用範囲が拡大していくと予想されます。これにより、Linuxの安全性とパフォーマンスが向上し、サーバー、組み込みシステムなど、幅広い分野に影響を与えるでしょう。
- 組み込みシステムでの普及: リソースが限られた環境でも効率的に動作するRustは、組み込みシステム開発においてますます重要な役割を果たすと予想されます。IoTデバイス、自動車、産業機器など、様々な分野でRustの採用が進むでしょう。
- WebAssemblyとの連携強化: RustとWebAssemblyの連携は、Webアプリケーションのパフォーマンスと安全性を向上させるための重要な要素です。今後もツールやライブラリの整備が進み、よりシームレスな連携が実現されると予想されます。
- 開発者コミュニティの更なる成長: Rustは活発な開発者コミュニティを持っており、今後もその規模は拡大していくと予想されます。これにより、Rustに関する情報やライブラリがさらに充実し、開発がより容易になるでしょう。
RustとWebAssemblyの連携:Webの未来を創造
RustとWebAssemblyは、互いに補完し合う関係にあり、連携することでWebの未来を大きく変える可能性を秘めています。
- パフォーマンスと安全性の向上: Rustで記述されたコードをWebAssemblyにコンパイルすることで、JavaScriptに比べてはるかに高速な実行速度と、Rustが提供するメモリ安全性をWebアプリケーションにもたらすことができます。
- Webアプリケーションの高度化: RustとWebAssemblyの連携により、これまでWebでは難しかった高度な処理やパフォーマンスを必要とするアプリケーションをWeb上で実現できるようになります。
- 新たなWeb開発パラダイムの創造: RustとWebAssemblyは、従来のWeb開発のパラダイムを変え、より効率的で安全なWebアプリケーション開発を可能にします。
まとめ
2025年のテクノロジー業界において、RustとWebAssemblyはますます重要な役割を果たすと予想されます。Rustはシステムプログラミングの新たな標準となり、WebAssemblyはWebの可能性を大きく拡張します。そして、これらの技術が連携することで、Webの未来を創造していくでしょう。今後もこれらの技術の動向に注目していくことが重要です。
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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数
監修
株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。