504.7億円にも達したクレジットカードの不正利用-2 ~最新のセキュリティ対策と技術

- 1. 3. 最新のセキュリティ対策と技術
- 1.1. EMVチップ搭載カードの普及と効果
- 1.1.1.1. EMVチップの主なメリット
- 1.1.1.2. 普及状況と今後の展望
- 1.2. 3Dセキュア(本人認証サービス)
- 1.2.1.1. 3Dセキュアの仕組み
- 1.2.1.2. 3Dセキュア2.0の進化
- 1.2.1.3. 導入の課題
- 1.3. ワンタイムパスワードと生体認証の活用
- 1.3.1.1. ワンタイムパスワード(OTP)
- 1.3.1.2. OTPのメリット
- 1.3.1.3. 生体認証(バイオメトリクス)
- 1.3.1.3.1. 生体認証の利点
- 1.4. AI・機械学習による不正検知
- 1.4.1.1. AIによる不正検知の仕組み
- 1.4.1.2. 導入事例と今後の展望
本記事は、「504.7億円にも達したクレジットカードの不正利用 ~不正利用の実態と最新対策」の続きです。前回の記事では、「1.クレジットカード不正利用の統計データ分析」「2.クレジットカード不正利用の手口と手法」についてご紹介しました。
今回は、クレジットカード利用にあたってのセキュリティ対策とその技術についてのご紹介です。
3. 最新のセキュリティ対策と技術
クレジットカードの不正利用が増加する中、カード会社や加盟店、消費者にとって最新のセキュリティ対策を導入することが不可欠となっています。本章では、クレジットカードのセキュリティ向上に寄与する主要な技術とその効果について解説します。
EMVチップ搭載カードの普及と効果
EMV(Europay, MasterCard, Visa)チップ搭載カードは、従来の磁気ストライプカードに比べて高いセキュリティを誇る技術です。EMVチップは、決済ごとに異なる暗号化されたデータを生成するため、仮にデータが盗まれたとしても、その情報を使って別の取引を行うことはほぼ不可能と言われています。
EMVチップの主なメリット
- スキミング対策:磁気ストライプのように単純なコピーが不可能。
- 偽造カードの抑制:チップ情報を複製することが技術的に困難。
- 世界標準のセキュリティ技術:多くの国でEMVチップ搭載カードの利用が義務化されている。
普及状況と今後の展望
日本国内でもEMVチップ搭載カードの普及が進んでおり、多くの加盟店でICカード対応の決済端末が導入されています。しかし、一部の店舗ではまだ磁気ストライプ決済が行われており、さらなる普及が求められています。また、EMV非対応の国や地域では依然として磁気ストライプカードが使用されているため、海外での利用時には注意が必要です。
3Dセキュア(本人認証サービス)
3Dセキュア(3-Domain Secure)は、オンライン決済時にカード所有者の本人確認を行うことで、不正利用を防ぐ仕組みです。代表的なものに、Visaの「Visa Secure」、Mastercardの「Mastercard Identity Check」、JCBの「J/Secure」などがあります。
3Dセキュアの仕組み
- オンライン決済時に、カード情報だけでなく、ワンタイムパスワードや生体認証を用いた追加認証を要求。
- 通常の決済と異なり、カード所有者の本人確認が強化されることで、不正利用のリスクを大幅に軽減。
- 加盟店側にとっては、3Dセキュア対応により、チャージバックリスクの低減が期待できる。
3Dセキュア2.0の進化
従来の3Dセキュア1.0は、決済時に追加のパスワード入力が必要で、ユーザーの利便性を損なう場面がありました。しかし、最新の3Dセキュア2.0では、生体認証やデバイス情報を活用し、よりスムーズな認証が可能となっています。これにより、ユーザーエクスペリエンスを向上させつつ、セキュリティを強化できる点が特徴です。
導入の課題
3Dセキュアは強力なセキュリティ対策であるものの、すべての加盟店が対応しているわけではなく、一部のECサイトでは未導入のままとなっています。今後の課題として、より多くの店舗での導入促進と、ユーザーの認知度向上が求められます。
ワンタイムパスワードと生体認証の活用
クレジットカードの不正利用を防ぐため、ワンタイムパスワード(OTP)や生体認証技術の導入が進んでいます。これらの技術は、従来のパスワード認証よりも高いセキュリティを提供し、不正アクセスを防ぐ重要な役割を果たしています。
ワンタイムパスワード(OTP)
ワンタイムパスワードとは、一度限り有効な認証コードを使用する仕組みで、主に以下の用途で活用されています。
- クレジットカードのオンライン決済時の追加認証
- カード会社のアカウントログイン時の二段階認証
- 高額取引や不審な取引が検出された際の本人確認
OTPのメリット
- 一度しか使えないため、パスワードの流出リスクが低減。
- 不正アクセスを未然に防ぐことが可能。
- SMSや専用アプリで簡単に利用できる。
生体認証(バイオメトリクス)
近年、指紋認証や顔認証、虹彩認証などの生体認証技術が決済分野でも活用されるようになりました。Apple PayやGoogle Payでは、スマートフォンの指紋や顔認証を用いた決済が一般的になっています。
生体認証の利点
- 他人が容易に盗用できないため、高い安全性を確保。
- ユーザーが覚える必要がなく、利便性が向上。
- モバイル決済やコンタクトレス決済との相性が良い。
今後、クレジットカード自体に指紋認証機能を搭載した「生体認証付きクレジットカード」の開発も進められており、さらなる安全性向上が期待されています。
AI・機械学習による不正検知
近年、AI(人工知能)や機械学習を活用した不正検知技術が発展し、不正取引の早期発見が可能になっています。従来のルールベースの不正検知システムでは、新たな不正手口への対応が遅れることがありましたが、AIを活用することで、より迅速かつ精度の高い不正検知が可能となっています。
AIによる不正検知の仕組み
AIによる不正検知の仕組みについての詳しい解説をしてしまいますと長くなってしまいますので、別の記事でご紹介することにして、ここではAIによる不正検知の仕組みについての概要のみをリストにしておきます。
- 過去の取引データを学習し、通常の購買パターンと異なる取引をリアルタイムで検知する。
- 異常な取引が発生した際、自動的にカード利用をブロックしたり、追加認証を要求する。
- 取引のリスクスコアを算出し、低リスクな取引はスムーズに承認することでユーザー体験を向上させる。
上記にリストしたすべては、AIが判断し、AIが自動的に実施します。
導入事例と今後の展望
- 多くのクレジットカード会社がAIを活用した不正検知システムを導入し、不正取引の発生率を低減。
- ディープラーニング技術の進化により、より高度な異常検知が可能に。
- 取引データのプライバシーを確保しながら、セキュリティ強化を図るための新たなアルゴリズムの開発が進行中。
AIを活用した不正検知は、今後のセキュリティ対策の中核を担う技術の一つであり、継続的な技術革新が求められています。
次回は、「504.7億円にも達したクレジットカードの不正利用-3 ~クレジットカード会社と加盟店の対策」と題して、カード発行会社のリスク管理と対応策と加盟店が講じるべき主なセキュリティ対策についてご紹介します。
セキュアなECサイトの開発やクレジットカード決済を含むシステム全体のセキュリティ対策の見直しなどのご要望がありましたら、弊社問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。貴社に最適なソリューションをご提案致します。

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この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。