貪欲法とは

貪欲法(Greedy Algorithm)とは、最適化問題を解くためのアルゴリズム設計戦略の一つであり、各ステップにおいて、その時点での局所的な最適解(最も良いと思われる選択)を選択し、それらの選択を積み重ねていくことで、最終的に問題全体としての最適解を得ようとする手法です。一度選択した決定は後から見直されることはありません。

貪欲法 の基本概念

貪欲法の基本的なアイデアは、全体的な最適解は、一連の局所的な最適解の組み合わせによって得られるだろうという仮定に基づいています。各ステップで、利用可能な選択肢の中から、その時点において最も利益が大きい、またはコストが小さいと思われる選択を行います。この選択は、将来の選択や全体的な結果を考慮することなく、現在の状況のみに基づいて行われます。

貪欲法は、多くの場合、実装が比較的容易であり、効率的なアルゴリズムを提供しますが、必ずしも全ての問題に対して大域的な最適解を保証するわけではありません。局所的な最適解の連続が、最終的に全体的な最適解に繋がらない場合も存在します。

貪欲法 の適用条件

貪欲法が有効に機能するためには、問題が以下の性質を持つことが望ましいとされます。

  1. 最適部分構造(Optimal Substructure): 問題の最適解が、その部分問題の最適解を包含している性質。すなわち、部分問題の最適解を組み合わせることで、元の問題の最適解を構成できること。
  2. 貪欲選択性(Greedy Choice Property): 各ステップにおいて局所的に最適な選択を行うことが、最終的に大域的な最適解に繋がる性質。つまり、その時点での最良の選択が、将来の選択に影響を与えることなく、常に最適解の一部となりうること。

これらの性質を持つ問題に対して貪欲法を適用すると、効率的に最適解を得られる可能性が高くなります。

貪欲法 のアルゴリズムの一般的な構造

  1. 候補集合: 解を構成するために選択可能な要素の集合。
  2. 選択関数: 各ステップにおいて、どの候補要素を解に追加するかを決定する関数(局所的な最適性を評価)。
  3. 実行可能性判定関数: 現在の解の集合が問題の制約条件を満たしているかどうかを判定する関数。
  4. 目的関数: 得られた解の評価を行う関数(最終的な最適性を評価)。

アルゴリズムは、候補集合から選択関数に基づいて要素を選択し、実行可能性判定関数を用いて解の制約条件をチェックしながら解集合を構築していきます。目的関数を用いて最終的な解の評価を行います。

貪欲法 の例

  • 硬貨の両替問題: 指定された金額を、使用する硬貨の枚数が最小になるように両替する問題(ただし、硬貨の組み合わせによっては最適解が得られない場合がある)。各ステップで、残りの金額以下で最も価値の高い硬貨を選択します。
  • ナップサック問題(分数ナップサック問題): 容量が限られたナップサックに、価値と重さが異なる品物を入れる際に、ナップサックの容量を超えない範囲で価値の合計を最大にする問題(品物を分割できる場合)。各ステップで、「価値/重さ」の比率が最も高い品物を可能な限り多く選択します。
  • 最小全域木問題(クラスカル法、プリム法): 与えられた重み付きグラフにおいて、全ての頂点を連結し、辺の重みの合計が最小となる木を求める問題。クラスカル法では、重みの小さい辺から順に追加していき、閉路ができないようにします。プリム法では、ある頂点から開始して、連結されている辺の中で最も重みの小さい辺を順に追加していきます。
  • ダイクストラ法: 単一始点最短経路問題を解くアルゴリズム。各ステップで、未訪問の頂点の中で始点からの距離が最も小さい頂点を選択します。

貪欲法 の利点と欠点

利点:

  • 実装が比較的容易: アルゴリズムの構造が単純な場合が多い。
  • 効率的な計算: 各ステップでの選択が局所的な情報に基づいて行われるため、計算量が少ないことが多い。

欠点:

  • 必ずしも最適解を保証しない: 多くの問題に対して、貪欲法で得られた解は最適解とは限らない(局所最適解に陥る可能性がある)。
  • 最適性の証明が難しい: 貪欲法が最適解を与えるためには、問題が貪欲選択性と最適部分構造を持つことを厳密に証明する必要がある。

貪欲法は、最適化問題を解くためのシンプルかつ効率的なアルゴリズム設計戦略であり、各ステップで局所的に最適な選択を積み重ねることで大域的な最適解を目指します。実装が容易で高速なアルゴリズムを提供できる可能性がありますが、全ての問題に対して最適解を保証するわけではありません。問題の性質(最適部分構造と貪欲選択性)を理解し、適切に適用することが重要です。

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