Gemmaとは?Googleの生成AIモデルファミリー「Gemma」をわかりやすく解説

Gemma(ジェマ)とは?

Gemma(ジェマ)は、Googleが開発し、オープンに提供している軽量な生成AIモデルのファミリーです。2024年2月に発表され、Googleの最先端大規模言語モデルであるGeminiと同じ研究と技術に基づいて構築されています。

「Gemma」という名前は、イタリア語で「宝石」や「ジュエリー」を意味し、その名の通り、価値あるAIモデルとして位置づけられています。

Gemmaの主な特徴

  • 軽量性: Gemmaモデルは、比較的小さいサイズで設計されており、ラップトップやデスクトップPCといったリソースが限られた環境でも効率的に動作します。これにより、幅広い開発者や研究者が利用しやすくなっています。
  • 高性能: 軽量でありながら、同規模の他のオープンモデルと比較して、質疑応答、推論、数学・科学、コーディングなどの分野で優れたベンチマークスコアを記録しています。
  • Geminiとの技術共通性: Geminiと同じアーキテクチャ、データ、トレーニング手法を用いて開発されており、その高い性能の基盤となっています。
  • オープンモデル: Gemmaはオープンモデルとして公開されており、開発者は無料でダウンロードし、利用規約に同意することで商用利用も可能です。
  • 多様なサイズ展開: 用途や利用環境に合わせて、異なるパラメータ数のモデルが提供されています。初期には2B(20億パラメータ)と7B(70億パラメータ)のモデルがリリースされ、その後、さらに大きなサイズのモデルや、RecurrentGemma、PaliGemmaといった派生モデルも登場しています。最新のGemma 3では、1Bから27Bまでの4つのサイズが提供されています。
  • 多言語対応: 140以上の言語で事前学習されており、多言語対応のアプリケーション開発にも活用できます。
  • マルチモーダル対応: 最新のGemma 3では、画像、テキスト、短い動画の分析が可能になるなど、マルチモーダルな機能も搭載されています。
  • 長いコンテキスト処理: Gemma 3では、最大128Kトークンという長いコンテキストウィンドウを持ち、大量の情報を処理することができます。
  • 安全性: トレーニングデータから個人情報や機密データが除外されており、安全性の高いモデルとなるよう配慮されています。また、Gemma 3には出力する画像の安全性をチェックする「ShieldGemma 2」が搭載されています。
  • Hugging Faceとの連携: モデルはHugging Face Hubを通じて提供されており、簡単に利用を開始できます。Google Colabと組み合わせることで、無料のGPUを利用して高速に実行することも可能です。

Gemmaの活用例

Gemmaの活用例

Gemmaは、その軽量性と高性能さから、様々な分野での活用が期待されています。

ChatGPTなどの生成AIサービスはやや業務利用ではコストの問題やカスタマイズやファインチューニングに多少なりとも問題があると考えている場合、オープンソースであるGemmaは有力な選択肢の一つになると思いますので、以下にざっくりではありますが、Gemmaの活用例をリストしておきます。

  1. 質問応答システム: 英語での質問に対して高速かつ正確な回答を提供できます。
  2. 文章作成: AIを活用した記事作成、要約、クリエイティブな文章の生成などに利用できます。
  3. コーディング支援: Pythonコードの生成やデバッグのサポートが可能です。
  4. チャットボット: 軽量であるため、モバイルアプリやリソースの限られた環境でのチャットボット開発に適しています。
  5. 翻訳: ある言語の文を入力として受け取り、別の言語で出力するタスクに利用できます。
  6. 画像分析: Gemma 3では、画像の分析や画像に関する質問への応答などが可能です。

業務システムへの活用例もリストしておきます。

  1. 社内ドキュメントの検索・要約: 大量の社内文書やナレッジベースから、必要な情報を迅速に検索したり、内容を要約したりするシステムにGemmaを組み込む。
  2. 顧客対応の自動化: FAQボットやチャットボットにGemmaを活用し、顧客からの問い合わせに自動で対応する。ファインチューニングにより、自社の製品やサービスに関する専門的な質問にも高精度で回答できる。
  3. レポート作成の支援: 定型的なレポート作成業務において、Gemmaにデータを与えて文章を生成させ、業務効率を向上させる。
  4. プログラミング支援: 開発者がコードの生成、補完、ドキュメント作成を行う際にGemmaを活用する。
  5. データ分析の洞察抽出: 大量のデータから、Gemmaに自然言語で質問することで、隠れた洞察やパターンを発見する。
  6. コンテンツ生成: マーケティング資料、研修資料、社内広報などの文章コンテンツをGemmaに生成させる。
  7. 業務プロセスの自動化: 特定の業務プロセスにおいて、Gemmaに判断や意思決定を支援させる(例:申請書類の自動レビュー)。
  8. 多言語対応: 海外の顧客や支社とのコミュニケーションにおいて、Gemmaの翻訳能力を活用する。

リストだけに留めておこうかなぁと思ったのですが、何となく寂しいので、Gemmaの活用例について、少しだけ深堀した解説を挙げておきます^^;

業務システムへの詳しい活用については、個別にお問い合わせください。

1. 質問応答システム (Question Answering Systems)

  • 基本的な活用: 英語のドキュメント、FAQ、知識ベースなどから質問に対する回答を生成します。軽量であるため、リアルタイム性が求められるシステムや、クライアントサイドでの実行に適しています。
  • 踏み込んだ活用:
    • 文脈理解の深化: 長い文脈を持つ質問や、複数の文書を参照する必要がある質問に対して、より正確で関連性の高い回答を生成するために、Gemmaの長いコンテキストウィンドウ(Gemma 3)を活用します。例えば、複数の技術仕様書を読み込ませ、特定の機能に関する質問に詳細に答えるといった応用が考えられます。
    • 知識グラフとの連携: 知識グラフと連携させることで、より構造化された知識に基づいた回答生成が可能になります。例えば、「東京にあるイタリアンレストランで、評価が高く、子供連れでも入りやすいお店は?」といった複雑な質問に対して、Gemmaが知識グラフから情報を抽出し、自然な日本語で回答を生成するような応用が考えられます。
    • パーソナライズされたQA: ユーザーの過去の質問履歴やプロファイルに基づいて、回答をパーソナライズします。例えば、特定の技術分野に興味を持つユーザーに対して、関連性の高い情報や専門用語を用いた回答を提供します。

2. 文章作成 (Text Generation)

  • 基本的な活用: ブログ記事の草稿、メールの自動生成、ソーシャルメディアの投稿文案作成などに利用できます。
  • 踏み込んだ活用:
    • クリエイティブライティングの支援: ストーリーのアイデア出し、詩の生成、脚本の一部作成など、より創造的なテキスト生成に活用します。Gemmaの持つ多様な表現力を利用し、人間には思いつかないようなユニークなテキストを生成することが期待されます。
    • テクニカルライティングの効率化: 技術文書、APIドキュメント、取扱説明書などの作成を支援します。Gemmaに構造化された情報やキーワードを与えることで、専門的な用語を正確に用い、分かりやすい文章を生成するのに役立ちます。
    • 多言語対応コンテンツの生成: Gemmaの多言語能力を活用し、複数の言語で同時にコンテンツを生成・ローカライズするワークフローを構築します。例えば、英語で作成したマーケティングコピーを、日本語、フランス語、スペイン語などに自動翻訳し、それぞれの言語のニュアンスに合わせて微調整するといった応用が考えられます。

3. コーディング支援 (Code Generation)

  • 基本的な活用: 簡単なコードスニペットの生成、コメントの自動記述、コードの補完などに利用できます。
  • 踏み込んだ活用:
    • 特定のフレームワークやライブラリに特化したコード生成: 特定のWebフレームワーク(React, Angular, Vue.jsなど)や機械学習ライブラリ(TensorFlow, PyTorchなど)に精通したコード生成を行います。開発者は、Gemmaに対して目的と利用するライブラリを指定するだけで、効率的にコードの骨組みを生成できます。
    • テストコードの自動生成: 開発した関数やクラスに対する単体テストのコードを自動生成します。これにより、開発者はテストコード作成の手間を省き、より本質的なロジックの開発に集中できます。
    • 既存コードのリファクタリング提案: 既存のコードを入力として与え、より効率的で可読性の高いコードへのリファクタリング案を提示します。Gemmaがコードの構造や潜在的な問題を分析し、改善点を提案することで、コード品質の向上に貢献します。

4. チャットボット (Chatbots)

  • 基本的な活用: カスタマーサポート、FAQ応答、簡単なタスクの実行などを目的としたチャットボットに利用できます。軽量であるため、Webサイトやモバイルアプリに組み込みやすいのが利点です。
  • 踏み込んだ活用:
    • 高度な対話管理: 文脈をより深く理解し、複数ターンにわたる複雑な対話を行うチャットボットを構築します。Gemmaの長いコンテキストウィンドウを活用することで、過去の会話の流れを記憶し、より自然で人間らしい対話を実現します。
    • 感情分析と応答の調整: ユーザーの発言に含まれる感情を分析し、それに応じてチャットボットの応答を調整します。例えば、ユーザーが不満を表明している場合は、より丁寧で共感的な応答を行うといった応用が考えられます。
    • 外部APIとの連携: 外部のAPIと連携することで、チャットボットがより多様なタスクを実行できるようになります。例えば、ユーザーの予約状況を確認したり、商品の在庫を照会したり、天気予報を提供したりといった機能を実現できます。

5. マルチモーダルな応用 (Multimodal Applications – Gemma 3以降)

  • 基本的な活用: 画像の内容に関する質問応答、画像とテキストに基づいたコンテンツ生成などが考えられます。
  • 踏み込んだ活用:
    • 視覚的な情報に基づいた推論: 画像の内容を深く理解し、それに基づいて複雑な推論を行います。例えば、医療画像から病変を検出したり、衛星画像から特定の地域の変化を分析したりといった応用が期待されます。
    • 画像とテキストの統合による創造的なコンテンツ生成: 画像とテキストの組み合わせから、新しい物語、広告コピー、デザインコンセプトなどを生成します。例えば、「夕焼けの海岸の写真」と「失われた愛の物語」というプロンプトを与え、それに基づいた短編小説を生成するような応用が考えられます。
    • アクセシビリティ支援: 画像の内容をテキストで説明したり、テキスト情報を画像で表現したりすることで、視覚障碍者や読字障碍者の情報アクセスを支援します。

Geminiとの違い

GemmaはGeminiと同じ技術を基に開発されましたが、いくつかの重要な違いがあります。

  1. マルチモーダル性: Geminiはテキスト、画像、音声、動画など、複数の種類のデータを扱えるマルチモーダルモデルですが、初期のGemmaは主にテキストに特化していました。最新のGemma 3ではマルチモーダル機能が追加されています。
  2. オープンソース性: Gemmaはオープンモデルとして公開されており、誰でも無料で利用できますが、GeminiはGoogleのクローズドなモデルです。
  3. サイズと性能: 一般的に、Geminiはより大規模なモデルであり、より複雑なタスクで高い性能を発揮する傾向がありますが、Gemmaはその軽量さから、リソースが限られた環境での利用や高速な推論に適しています
  4. 日本語対応: Geminiは比較的高い日本語能力を持つ一方、初期のGemmaは英語を中心に学習されていました。最新のモデルでは多言語対応が進んでいます。

Gemmaを企業の業務システムに利用する可能性とメリッ

Gemmaを企業の業務システムに利用する可能性とメリットについても少しだけ触れておきます。

  • コスト削減: 商用APIと比較して、Gemma自体はオープンソースであり、ライセンス費用がかかりません。自社のインフラ上で運用することで、APIの利用量に応じた従量課金も回避できます。
  • データのプライバシーとセキュリティ: 機密性の高い業務データを外部のAPIに送信する必要がないため、データのプライバシーとセキュリティをより厳格に管理できます。
  • カスタマイズとファインチューニングの自由度: 特定の業務ニーズに合わせて、Gemmaのモデルを自社のデータでファインチューニング(追加学習)することで、より専門的で精度の高いAI機能を実現できます。
  • 柔軟な統合: 自社の既存のITインフラやセキュリティポリシーに合わせて、Gemmaを柔軟に統合できます。
  • 長期的な技術的自立: オープンソースであるため、特定のベンダーに依存することなく、長期的にAI技術を活用していくための基盤を構築できます。
  • 最新技術の活用: Googleの最先端技術に基づいて開発されたGemmaを利用することで、最新の生成AI機能を業務システムに組み込むことができます。
  • 多様なサイズ展開: 用途やリソースに合わせて、適切なサイズのGemmaモデルを選択できるため、効率的な運用が可能です。

Gemmaを企業の業務システムに利用する際の考慮事項

  • インフラの構築と運用: Gemmaを自社で運用するためには、適切な計算リソース(GPUなど)を備えたインフラを構築・管理する必要があります。これには専門的な知識とコストがかかります。
  • 技術的な専門知識: モデルのデプロイ、ファインチューニング、最適化、監視など、高度な技術的な専門知識を持つ人材が必要です。
  • 開発と統合のコスト: 業務システムとの連携には、API開発や既存システムとの統合作業が必要となり、開発コストと時間がかかる場合があります。
  • メンテナンスとアップデート: Gemma自体や関連するライブラリは頻繁にアップデートされるため、常に最新の状態に保ち、セキュリティリスクに対応していく必要があります。
  • データの準備と管理: ファインチューニングを行う場合は、高品質で十分な量の学習データを準備し、適切に管理する必要があります。
  • 責任と倫理: 生成AIの利用においては、出力内容の正確性、偏り、倫理的な問題などについて、自社で責任を持つ必要があります。
  • スケーラビリティ: 業務の拡大に合わせて、Gemmaの処理能力を適切にスケールさせる必要があります。

Gemmaは、企業の業務システムに大きな可能性をもたらす強力なツールです。コスト削減、データ管理の強化、カスタマイズの自由度など、多くのメリットがあります。しかし、その導入と運用には、適切なインフラの構築、専門的な知識を持つ人材の確保、開発と統合のコスト、そして長期的なメンテナンスが必要です。

業務システムへの導入は、自社の具体的なニーズ、技術力、予算などを慎重に評価し、商用APIの利用と比較検討した上で、Gemmaの活用戦略を策定することが重要です。スモールスタートでPoC(概念実証)を行いながら、段階的に導入を進めていくのが現実的なアプローチと言えるでしょう。

Gemmaを利用した業務システムへの開発、スモールスタートからのPoC、MVP(Minimum Viable Product)などにもしご興味がありましたら、是非、APPSWINGBYまでお問い合わせください。

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株式会社APPSWINGBY
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APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

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