シンプレックス法とは
シンプレックス法(Simplex Method)とは、線形計画問題(Linear Programming Problem)の最適解を効率的に探索するための代表的なアルゴリズムの一つであり、実行可能領域の端点(基底解)を反復的に移動しながら目的関数を改善していく手法のことです。
シンプレックス法(シンプレックスほう、Simplex Method)は、オペレーションズリサーチ(OR)の分野において、線形計画問題(LP問題)の最適解を求めるために開発された古典的かつ強力なアルゴリズムです。
線形計画問題とは、複数の線形な制約条件の下で、ある線形な目的関数を最大化または最小化する問題です。シンプレックス法は、実行可能領域(制約条件を満たす解の集合)の端点(基底解)を反復的に探索し、目的関数の値を改善していくことで最適解に到達します。
シンプレックス法 の基本的な概念
線形計画問題は、一般的に以下の形式で記述されます。
目的関数:max(または min)cTx
制約条件:Ax≤b (または ≥,=) x≥0
ここで、x は決定変数のベクトル、c は目的関数の係数ベクトル、A は制約条件の係数行列、b は制約条件の右辺ベクトルです。
シンプレックス法の基本的なアイデアは、線形計画問題の最適解は、実行可能領域の端点(頂点)のいずれかに存在するという性質を利用することです。アルゴリズムは、初期の実行可能基底解から出発し、反復ごとに隣接する別の基底解へと移動します。この移動の際、目的関数の値が必ず改善(最大化問題であれば増加、最小化問題であれば減少)するように基底解を選択します。このプロセスを繰り返すことで、最終的に最適解に到達します。
シンプレックス法 の手順
シンプレックス法の基本的な手順は以下の通りです。
- 問題の標準形への変換: 与えられた線形計画問題を、シンプレックス法が適用可能な標準形に変換します。これは、全ての制約条件を等式で表し、全ての変数を非負とすることを意味します。スラック変数(≤ 制約を等式にする非負変数)、サープラス変数(≥ 制約を等式にする非負変数)、人工変数(初期基底解を見つけるために導入する非負変数)などが用いられます。
- 初期基底実行可能解の発見: 標準形に変換された問題に対する初期の基底実行可能解を見つけます。人工変数を導入した場合は、第一段階(Phase I)として、人工変数の和を最小化する問題を解き、全ての人工変数を0にすることで実行可能基底解を得ます。
- 最適性の判定: 現在の基底解が最適であるかどうかを判定します。これは、目的関数の非基底変数の係数(被約費用)を調べることで行われます。最大化問題であれば全ての被約費用が0以下、最小化問題であれば全てが0以上であれば、現在の解は最適です。
- 基底の更新: 最適でなければ、目的関数を改善できる非基底変数を基底に導入し(ピボット演算)、基底から出る変数を決定します。ピボット演算は、連立一次方程式の解法における掃き出し法と同様の操作を行います。
- 反復: ステップ3と4を、最適解が見つかるか、または非有界(目的関数値を無限に改善できる)であることが判明するまで繰り返します。
シンプレックス法 の特徴
シンプレックス法は、その有効性と適用範囲の広さから、数多くの最適化問題の解決に利用されてきました。その主な特徴は以下の通りです。
- 体系的な探索: 実行可能領域の端点を系統的に探索するため、理論的には有限回の反復で最適解に到達することが保証されています(ただし、退化などの特殊なケースを除く)。
- 解の構造の利用: 線形計画問題の解が実行可能領域の端点に存在するという重要な性質を利用しています。
- 実用的な効率性: 多くの実際的な問題に対して、比較的効率的に最適解を見つけることができます。
- 副産物としての情報: 最適解だけでなく、感度分析(パラメータの変化が最適解に与える影響の分析)などの有益な情報も得られます。
シンプレックス法 の課題
一方で、シンプレックス法にはいくつかの課題も存在します。
- 最悪の場合の計算量: 最悪の場合には、反復回数が決定変数の数に対して指数関数的に増加する可能性があり、大規模な問題では計算時間が膨大になることがあります。
- 退化(Degeneracy): 複数の基底解が同じ目的関数値を持つ場合に、アルゴリズムが循環し、最適解に到達しない可能性があります。
- 数値的安定性: ピボット演算における数値誤差の累積が、結果の精度に影響を与える可能性があります。
シンプレックス法 の発展
シンプレックス法の登場以来、その効率性や安定性を向上させるための様々な改良や変種が開発されてきました。
- 改訂シンプレックス法(Revised Simplex Method): 必要な情報のみを明示的に計算することで、メモリ使用量や計算量を削減します。
- 双対シンプレックス法(Dual Simplex Method): 実行可能性は満たさないが最適性条件に近い基底解から出発し、実行可能性を回復させながら最適解を目指します。
- 内点法(Interior Point Method): 実行可能領域の境界ではなく、内部を通って最適解に近づくアルゴリズムであり、大規模な問題に対してシンプレックス法よりも効率的な場合があります。
シンプレックス法は、線形計画問題の最適解を求めるための基本的かつ重要なアルゴリズムです。実行可能領域の端点を反復的に探索し、目的関数を改善していくことで最適解に到達します。その体系的な探索と実用的な効率性から、様々な分野における最適化問題の解決に広く利用されています。最悪の場合の計算量や退化といった課題も存在しますが、その後の改良や内点法の登場などにより、線形計画問題の解決能力は大きく向上しています。
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