多目的関数とは

多目的関数(Multi-objective Function)とは、最適化問題において、同時に最適化したい複数の評価基準をそれぞれ数値化した複数の関数のこと。

多目的関数(たもくてきかんすう、Multi-objective Function)は、数理最適化の分野において、単一の最適化目標ではなく、同時に改善または最適化したい複数の異なる評価基準をそれぞれ数学的に表現した関数の集まりです。

現実世界の多くの問題では、単一の指標だけを最適化すれば良いとは限らず、複数のトレードオフの関係にある目標を同時に考慮する必要があります。多目的最適化問題では、これらの複数の目的関数を同時に扱うことが特徴です。

多目的関数 の基本的な概念

通常の単目的最適化問題では、一つの目的関数を最大化または最小化する解を探索します。一方、多目的最適化問題では、複数の目的関数が存在するため、一般的に全ての目的関数を同時に最適な値にする単一の解は存在しません。多くの場合、ある目的関数を改善しようとすると、別の目的関数が悪化するというトレードオフの関係にあります。

したがって、多目的最適化問題の解は、単一の最適解ではなく、パレート最適解(Pareto optimal solution)と呼ばれる解の集合として得られます。パレート最適解とは、「他のどの実行可能解よりも、少なくとも一つの目的関数において優れており、かつ全ての目的関数において劣っていない」という性質を持つ解の集まりです。これらの解は、目的関数間のトレードオフを表しており、意思決定者はこのパレート最適解群の中から、自身の優先順位や価値観に基づいて最終的な解を選択します。

多目的関数 の例

現実世界には、多目的最適化問題として捉えられる多くの例が存在します。

  • 製品設計: 製品の性能を向上させたい(目的関数1:性能最大化)一方で、製造コストを削減したい(目的関数2:コスト最小化)。
  • ポートフォリオ最適化: 投資のリターンを最大化したい(目的関数1:収益最大化)一方で、リスクを最小化したい(目的関数2:リスク最小化)。
  • スケジューリング: 作業の完了時間を最小化したい(目的関数1:所要時間最小化)一方で、資源の利用効率を最大化したい(目的関数2:資源利用率最大化)。
  • ネットワーク設計: 通信速度を最大化したい(目的関数1:スループット最大化)一方で、遅延時間を最小化したい(目的関数2:遅延時間最小化)。
  • 機械学習: モデルの予測精度を向上させたい(目的関数1:精度最大化)一方で、モデルの複雑さを低減したい(目的関数2:複雑さ最小化)。

これらの例では、それぞれの目的関数が互いに競合する可能性があり、一方を最適化すると他方が悪化する傾向があります。

多目的最適化 のアプローチ

多目的最適化問題を解くためのアプローチは様々ですが、主なものとしては以下のものがあります。

  1. 重み付き和法(Weighted Sum Method): 複数の目的関数にそれぞれ重みを付け、それらの線形結合を新たな単一の目的関数として最適化します。重みを調整することで、異なるパレート最適解を得ることができます。  \text{目的関数} = w_1 f_1(x) + w_2 f_2(x) + \dots + w_k f_k(x) ここで、fi​(x) は i 番目の目的関数、wi​ はその重み(∑i=1k​wi​=1,wi​≥0)です。
  2. 制約法(Constraint Method): 複数の目的関数のうち一つを最適化目標とし、残りの目的関数をある許容範囲内の制約条件として扱います。制約条件の許容範囲を変化させることで、異なるパレート最適解を得ることができます。
  3. パレートランキング法(Pareto Ranking Method): 解の集合をパレート支配関係に基づいてランキング付けし、非劣解(パレート最適解)を探索します。進化的アルゴリズム(遺伝的アルゴリズムなど)でよく用いられる手法です。
  4. 目標計画法(Goal Programming): 各目的関数に対して目標値を設定し、その目標値からの逸脱を最小化する解を探索します。

多目的関数は、現実世界の複雑な最適化問題を扱う上で不可欠な概念であり、複数の評価基準を同時に考慮に入れることを可能にします。多目的最適化問題では、単一の最適解ではなく、パレート最適解と呼ばれるトレードオフの関係にある解の集合が得られ、意思決定者はこれらの解の中から自身の優先順位に基づいて最終的な選択を行います。重み付き和法や制約法、パレートランキング法など、様々な手法が多目的最適化問題を解くために用いられています。

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