ジッタとは
ジッタ(Jitter)とは、デジタル信号の周期やパケットの到達間隔において、理想的な時間間隔からのずれや揺らぎが発生する現象を指します。
特にリアルタイム性が求められる音声通話や動画ストリーミング、産業用制御システムなどにおいて、この時間的な変動は通信品質の低下やシステム性能への悪影響を及ぼす重要な問題となります。
ジッタの基本的な概念
通信システムにおいてデータは通常、一定の規則や周期に従って送受信されます。しかし、ネットワークの混雑、ルーターやスイッチの処理遅延、無線環境の不安定さ、デバイスのクロック同期の問題など、さまざまな要因によりこの規則性が乱れることがあります。これがジッタとして観測されます。
主な概念は以下の通りです。
- リアルタイム通信(Real-time Communication): 音声、動画など、送受信の時間的な遅延や揺らぎがユーザー体験に直接影響を与える通信です。VoIP(Voice over IP)やビデオ会議などがこれに該当します。
- 遅延(Latency): 信号やデータが送信元から受信先に到達するまでにかかる時間のことです。ジッタは、この遅延が時間とともに変動する現象を指します。
- パケットドロップ(Packet Drop): ネットワークの混雑やエラーにより、送信されたパケットが受信側に届かない現象です。ジッタが大きくなると、パケットが適切なタイミングで処理されず、結果的にパケットドロップにつながる可能性もあります。
- バッファ(Buffer): 受信側でデータを一時的に蓄える領域です。ジッタを吸収し、データをスムーズに再生するために用いられますが、バッファが不足したり過剰になったりすると、通信品質に影響が出ます。
- クロック同期(Clock Synchronization): 送受信を行うデバイス間で、時間の基準を合わせることです。これが不完全だと、ジッタが発生する一因となります。
ジッタの種類と発生要因
ジッタは、その発生原因や特性によっていくつかの種類に分類されます。
1. パケットジッタ(Packet Jitter)
IPネットワーク上でパケットの到達間隔が変動する現象です。リアルタイム通信の品質に最も直接的な影響を与えます。
- 発生要因:
- ネットワークの混雑: 帯域幅の不足やトラフィックの急増により、パケットがルーターやスイッチのキューに滞留し、処理に時間がかかる。
- ルーティング経路の変動: ネットワークの状態に応じてパケットの経路が頻繁に変わることで、それぞれの経路での遅延が異なるため、到達間隔にばらつきが生じる。
- デバイスの処理能力: ルーター、スイッチ、サーバーなどの処理能力が限界に達し、パケット処理に遅延が生じる。
- 無線環境の不安定さ: Wi-Fiなどの無線通信では、電波干渉や信号強度の変動がパケットロスや遅延のばらつきを引き起こす。
- パケットの優先順位付け(QoSの不備): 品質保証(QoS)が適切に設定されていないネットワークでは、音声や動画などのリアルタイムデータが、ファイル転送などの非リアルタイムデータと競合し、ジッタが発生しやすくなる。
2. クロックジッタ(Clock Jitter)/ タイミングジッタ(Timing Jitter)
デジタル信号の周期が、理想的な周期から微細にずれる現象です。主に物理層やデータリンク層で発生し、信号の正確な復調やデータエラーに影響します。
- 発生要因:
- 回路ノイズ: 電源ノイズや電磁干渉などにより、クロック信号が乱れる。
- 温度変化: 電子部品の特性が温度によって変化し、クロックの安定性に影響を与える。
- 部品の精度: クロックを生成する水晶振動子などの部品自体の精度や安定性が低い。
- デジタル信号処理の遅延: 半導体チップ内部での信号伝播遅延のばらつき。
ジッタがもたらす影響
ジッタは、通信システムやアプリケーションの機能に以下のような悪影響を及ぼします。
- 音声・動画の品質劣化:
- 途切れ(Dropout): パケットが遅れて到着したり、到着しなかったりすることで、音声や動画が一時的に途切れる。
- 音飛び/映像のカクつき: 到着したパケットの順序が乱れたり、間に合わなかったりすることで、再生が不連続になる。
- エコー: 音声が遅れて戻ってくることで、エコーが発生し会話を阻害する。
- 再生速度の変動: データが一定の間隔で供給されないため、再生速度が不安定になる。
- システムの応答性低下: 産業用制御システムや金融取引システムなど、リアルタイム性が求められるアプリケーションでは、ジッタによってコマンドの実行遅延や情報の同期ずれが発生し、システム全体の応答性が低下したり、誤動作を引き起こしたりする可能性があります。
- データ損失: 受信側がジッタを吸収するためにバッファを使用しますが、バッファの容量を超えてパケットが遅れて到着すると、バッファオーバーフローが発生し、パケットが破棄(ドロップ)されます。
- クロック同期の問題: タイミングジッタは、通信プロトコルにおけるビット同期やフレーム同期の問題を引き起こし、データエラーや通信リンクの切断につながる可能性があります。
ジッタへの対策
ジッタの影響を軽減し、通信品質を向上させるためには、様々な対策が講じられます。
- ジッタバッファ(Jitter Buffer)/ プレイアウトバッファ(Playout Buffer): 受信側でデータを一時的に蓄積し、到達間隔のばらつきを吸収してから再生することで、スムーズな音声や動画の出力を行います。バッファサイズはジッタの大きさに応じて調整する必要がありますが、大きすぎると追加の遅延(レイテンシ)が生じ、小さすぎるとジッタを吸収しきれずに品質劣化につながります。
- QoS(Quality of Service)の導入: ネットワーク上で特定の種類のトラフィック(例: VoIPや動画)に優先順位を割り当て、帯域幅を保証したり、低遅延で転送したりする技術です。これにより、リアルタイム性が求められるパケットが混雑時に滞留するのを防ぎ、ジッタを低減します。
- ネットワーク帯域幅の増強: ネットワークのボトルネックを解消し、十分な帯域幅を確保することで、混雑によるパケットの滞留や遅延のばらつきを減らします。
- ネットワーク機器の最適化: 高性能なルーターやスイッチを導入し、パケット処理能力を向上させることで、デバイス起因の遅延やジッタを軽減します。
- クロック同期技術の改善: PTP(Precision Time Protocol)などの高精度な時刻同期プロトコルを利用したり、より安定した水晶振動子を採用したりすることで、タイミングジッタを抑制します。
- 損失補償技術: パケットロスが発生した場合に、直前のデータから欠落部分を補間する技術(例: 音声のパケットロス補償)を用いて、品質劣化を緩和します。
ジッタ(Jitter)とは、デジタル信号やパケットの送受信間隔が、理想的な時間間隔から揺らぐ現象です。ネットワークの混雑やデバイスの処理遅延、クロック同期の問題など、多岐にわたる要因で発生し、特にリアルタイム性が求められるVoIPや動画ストリーミングの品質に大きな影響を及ぼします。
その影響は、音声の途切れ、映像のカクつき、システムの応答性低下、データ損失など多岐にわたります。ジッタへの対策としては、受信側での「ジッタバッファ」による吸収、ネットワークにおける「QoS」による優先制御、帯域幅の増強、ネットワーク機器の最適化、クロック同期技術の改善などが挙げられます。ジッタの適切な管理は、現代の高性能かつ安定した通信システムを構築する上で不可欠な要素です。
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