セミ同期レプリケーションとは

セミ同期レプリケーション(Semi-Synchronous Replication)とは、データベースのレプリケーションにおいて、データ書き込みの性能(スループット)を大きく損なうことなく、かつデータ損失のリスクを最小限に抑えることを目的とした、非同期レプリケーションと同期レプリケーションの中間に位置するレプリケーション方式を指します。

この方式では、マスターサーバーが更新を受け取った後、少なくとも1台のスレーブサーバーがその更新を正常に受け取ったことを確認してから、マスター側でのコミット処理を完了させます。

セミ同期レプリケーションの基本的な概念

データベースレプリケーションは、システムの可用性向上や読み込み性能の分散、災害対策などに不可欠な技術です。セミ同期レプリケーションは、特にMySQLなどのRDBMSで広く採用されています。

主な概念は以下の通りです。

  1. レプリケーション(Replication): あるデータベースサーバー(マスターサーバー、またはプライマリサーバー)上のデータを、別のデータベースサーバー(スレーブサーバー、またはレプリカサーバー)に複製し、常に同じ状態を保つ技術です。
  2. 非同期レプリケーション(Asynchronous Replication): マスターサーバーが更新を受け取ると、スレーブサーバーがその更新を受け取ったかどうかを待たずに、すぐにコミットを完了させる方式です。
    • メリット: マスター側の書き込み性能が最も高い。
    • デメリット: マスターに障害が発生した場合、スレーブにまだ伝播していないデータが失われる可能性がある(データ損失のリスクが高い)。
  3. 同期レプリケーション(Synchronous Replication): マスターサーバーが更新を受け取った後、すべてのスレーブサーバーがその更新を正常に受け取り、自身のディスクに書き込んだことを確認してから、マスター側でのコミットを完了させる方式です。
    • メリット: データ損失のリスクが最も低い(ゼロに近づく)。
    • デメリット: ネットワーク遅延やスレーブサーバーの性能に影響され、マスター側の書き込み性能が大幅に低下する。1台でもスレーブに問題があると、マスターの処理も停止する。
  4. バイナリログ(Binary Log / Binlog): MySQLにおいて、データベースの変更履歴(データの挿入、更新、削除など)が記録されるログファイルです。スレーブサーバーはこのバイナリログを読み取り、自身のデータベースに適用することでマスターとの同期を保ちます。

セミ同期レプリケーションの動作原理

セミ同期レプリケーションは、非同期レプリケーションの性能と、同期レプリケーションの信頼性の一部を両立させようとします。

  1. マスターでの更新処理: アプリケーションがマスターサーバーに対してデータ更新(INSERT, UPDATE, DELETEなど)を発行し、トランザクションがコミットされます。
  2. バイナリログへの書き込み: マスターサーバーは、この更新内容を自身のバイナリログに書き込みます。
  3. スレーブへの送信: マスターサーバーは、書き込んだバイナリログイベントを、接続しているスレーブサーバーに送信します。
  4. スレーブからの確認待ち: セミ同期レプリケーションの核心はここにあります。マスターサーバーは、少なくとも1台のスレーブサーバーがバイナリログイベントを正常に受信し、自身のディスクに書き込んだこと(ただし、必ずしも適用済みである必要はない)を確認するまで、コミット処理をブロック(待機)します
  5. マスターでのコミット完了: スレーブからの確認応答(acknowledgment / ACK)を受け取った後、マスターサーバーはアプリケーションに対してコミットが成功したことを返答し、トランザクションを完了させます。
  6. タイムアウト処理: もし設定された時間内にスレーブからの確認応答がなかった場合、マスターは自動的に非同期レプリケーションモードに切り替わります。これにより、スレーブの遅延や障害によってマスター側の処理が永久にブロックされることを防ぎます。タイムアウト後にスレーブが復旧し、十分な信頼性が回復すれば、自動的にセミ同期モードに戻る場合もあります。

なぜ「セミ」なのか?

「セミ(Semi)」という言葉が使われるのは、すべてのスレーブからの確認を待つわけではないため、完全な同期ではないからです。通常は「少なくとも1台」のスレーブからの確認を待ちますが、これによってマスターの性能への影響を最小限に抑えつつ、少なくとも1つのレプリカにデータが書き込まれたことを保証できます。これにより、マスター障害時のデータ損失リスクを大幅に低減できます。

セミ同期レプリケーションのメリットとデメリット

メリット

  1. データ損失リスクの低減: 非同期レプリケーションと比較して、マスターに障害が発生した場合でも、データがスレーブに到達していることが保証されるため、データ損失(RPO)のリスクを大幅に低減できます。多くの場合、RPOをゼロに近づけることが可能です。
  2. 性能と信頼性のバランス: 同期レプリケーションのようにすべてのスレーブを待つ必要がないため、マスターの書き込み性能への影響を最小限に抑えつつ、データの一貫性を高めることができます。
  3. フェイルオーバー時の信頼性: マスター障害時にスレーブを新しいマスターに昇格させる際、昇格したスレーブが最新のデータを持っている可能性が高く、整合性の取れた状態からのサービス再開が期待できます。

デメリット

  1. マスター性能への影響: 非同期レプリケーションと比較すると、スレーブからの確認応答を待つ必要があるため、マスターの書き込みスループットは低下する可能性があります。特にネットワーク遅延が大きい環境では顕著になります。
  2. 可用性リスクの増加: スレーブサーバーに問題が発生し、かつタイムアウト設定が不適切である場合、マスターのコミット処理がブロックされ、アプリケーションがハングアップする可能性があります。タイムアウト設定は慎重に行う必要があります。
  3. 設定と管理の複雑性: 非同期レプリケーションよりも設定が複雑であり、タイムアウト値の調整や、スレーブのヘルスチェックなど、より慎重な運用管理が求められます。

セミ同期レプリケーションの活用シナリオ

  • ミッションクリティカルなシステム: データ損失を極力避けたいが、完全な同期レプリケーションによる性能低下も許容できないようなシステム(例: 金融システムの一部、オンライン決済処理など)。
  • 可用性とデータ整合性の両立: 読み込み性能のスケールアウトと同時に、万が一の障害時にもデータの欠損を最小限に抑えたい場合。
  • MySQL環境: MySQLでは標準機能としてセミ同期レプリケーションが提供されており、多くの本番環境で利用されています。

セミ同期レプリケーション(Semi-Synchronous Replication)とは、データベースのレプリケーションにおいて、マスターサーバーが更新内容を少なくとも1台のスレーブサーバーが受け取ったことを確認してからコミットを完了させる方式です。

これは、マスター側の性能を最大限に引き出す非同期レプリケーションと、データ損失をゼロに近づける同期レプリケーションの間に位置し、両者のメリット(高い性能と低いデータ損失リスク)のバランスを取ることを目指します。マスター性能へのわずかな影響や設定の複雑性というデメリットがあるものの、データ損失リスクを低減しつつ高い可用性を実現できるため、MySQLなどのRDBMSを採用する多くのミッションクリティカルなシステムで重要なレプリケーション戦略として活用されています。

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