サービス指向アーキテクチャとは

サービス指向アーキテクチャ(SOA)は、ビジネスプロセスを構成する個々の機能を、独立したサービスとして構築し、それらを組み合わせることでシステム全体を構築する設計思想のことです。これにより、システムの柔軟性、再利用性、拡張性が向上します。

サービス指向アーキテクチャ(SOA)の概要

サービス指向アーキテクチャ(Service-Oriented Architecture, SOA) は、ITシステムを構築する際のアプローチの一つで、システム全体を、独立して機能する小さなコンポーネント、すなわち「サービス」の集合体として捉えます。これらのサービスは、それぞれが明確なビジネス機能を提供し、標準的なインターフェースを通じて互いに通信することで、複雑なビジネスプロセスを実現します。

SOAは、特定の技術や製品を指すものではなく、システム設計における概念的なフレームワークや原則の集まりです。これにより、組織はビジネスの変化に迅速に対応し、既存の資産を最大限に活用しながら、柔軟で再利用性の高いシステムを構築することを目指します。

サービス指向アーキテクチャの主要な構成要素と原則

SOAは、以下の主要な構成要素と原則に基づいて成り立っています。

1. サービス(Service)

SOAの中心となるのは「サービス」です。サービスは、以下のような特性を持ちます。

  • 自律性: サービスは独立しており、他のサービスに強く依存することなく、単独で機能を提供できます。
  • 疎結合: サービス間の依存関係が最小限に抑えられています。これにより、あるサービスの変更が他のサービスに与える影響が少なくなります。
  • 再利用性: 一度開発されたサービスは、複数のアプリケーションやビジネスプロセスで再利用できます。
  • インターフェースの明確化: サービスは、標準的なプロトコル(例: SOAP、REST)と形式(例: XML、JSON)を用いて、外部に機能を提供するインターフェースを公開します。内部実装は隠蔽されます。

2. サービスリポジトリ/レジストリ(Service Repository/Registry)

利用可能なサービスに関する情報(サービスの機能、インターフェース、場所など)を一元的に管理する仕組みです。サービスを公開する側はここに情報を登録し、利用する側はここから必要なサービスを検索します。

3. サービスバス(Service Bus)/ Enterprise Service Bus (ESB)

複数のサービス間の通信を仲介するインフラストラクチャです。サービス間の連携を標準化し、ルーティング、メッセージ変換、プロトコル変換、セキュリティなどの機能を提供します。これにより、サービス間の直接的な依存関係を減らし、システムの柔軟性を高めます。

4. SOAの原則

SOAの設計では、以下の原則が重視されます。

  • 契約ベース: サービスは、その機能とインターフェースに関する明確な契約(定義)を持ちます。
  • 疎結合: サービス間の依存関係を極力排除します。
  • 抽象化: サービスの内部実装は隠蔽され、インターフェースを通じてのみアクセス可能です。
  • 再利用性: サービスは複数のビジネスプロセスで再利用できるように設計されます。
  • 構成可能性: 複数のサービスを組み合わせて、より複雑なビジネスプロセスを構築できます。
  • 自律性: サービスは独立して動作し、自身のライフサイクルを持ちます。

SOAの利点

SOAを導入することで、企業は以下のような多岐にわたる利点を得ることができます。

  • ビジネスの変化への迅速な対応: 各サービスが独立しているため、ビジネス要件の変更に応じて特定のサービスのみを修正・デプロイすることが容易になります。
  • 既存資産の再利用: 既存のレガシーシステムが提供する機能をサービスとしてカプセル化し、新しいアプリケーションから再利用できるようになります。これにより、開発コストと時間を削減できます。
  • システムの柔軟性と拡張性: 新しいサービスを追加したり、既存のサービスを更新したりすることが容易になり、システムの全体的な拡張が柔軟に行えます。
  • ベンダーロックインの回避: 標準的なインターフェースとプロトコルを使用するため、特定のベンダーの製品に依存することなく、異なる技術スタックのサービスを組み合わせることが可能です。
  • システム統合の簡素化: 複雑なポイント・ツー・ポイントの連携ではなく、サービスバスを通じて標準化された方法でシステム間の統合を進められます。

SOAとマイクロサービスアーキテクチャ

近年、SOAの進化形として「マイクロサービスアーキテクチャ」が注目されています。マイクロサービスはSOAの原則をさらに推し進め、サービスをより小さく、より独立した単位で設計・開発・運用するアプローチです。

SOAが「共有サービスバス」を介したサービス連携を重視するのに対し、マイクロサービスは「各サービスが独自のデータベースを持ち、APIゲートウェイを通じて直接通信する」など、さらに自律性を高める傾向にあります。SOAはエンタープライズレベルでの統合に適している一方、マイクロサービスはクラウドネイティブな環境での高速な開発とデプロイに強みを持つと言えます。しかし、両者は相互補完的な関係にあり、多くの企業がSOAの概念を基盤にしながら、マイクロサービスの要素を取り入れています。

サービス指向アーキテクチャ(SOA)は、システムのビジネス機能を独立したサービスとして構築し、それらを連携させることで、柔軟性、再利用性、拡張性に優れたシステムを実現する設計思想です。ビジネスの変化に迅速に対応し、IT資産の価値を最大化するための強力なフレームワークとして、今日でも多くの企業でその概念が活用されています。マイクロサービスアーキテクチャの台頭も、SOAが提唱した原則の重要性を再確認させるものです。

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