スナップショットとは

スナップショットは、ある時点におけるシステムやデータの状態を完全に保存した複製のことです。これにより、システム障害やデータ破損が発生した場合でも、特定の時点の状態へ容易に復元することが可能になります。

スナップショットの概要

スナップショットは、ITの分野で様々な文脈で用いられますが、共通しているのは「ある瞬間の完全な状態を記録する」という概念です。特に、仮想化環境、ストレージシステム、データベース管理などにおいて、データのバックアップ、システムの状態復元、テスト環境の作成などに不可欠な機能として活用されています。

スナップショットは、ファイルのコピーとは異なり、通常は元のデータブロックへのポインタや、変更された差分データのみを記録する方式が採用されます。これにより、ストレージ容量の消費を抑えつつ、効率的に迅速な復元を可能にしています。

スナップショットの種類と主な用途

スナップショットは、適用されるレイヤーによって異なる意味合いを持ち、それぞれの用途で重要な役割を担います。

1. 仮想マシンのスナップショット

仮想化環境(VMware vSphere, Hyper-V, KVMなど)において最も一般的に利用されます。

  • 概念: 稼働中の仮想マシン (VM) のメモリ状態、ディスクの状態、および構成を、特定の時点で「フリーズ」させたイメージです。
  • 用途:
    • システム復元ポイント: ソフトウェアの更新や設定変更を行う前にスナップショットを取得しておけば、問題が発生した場合に簡単に元の状態に戻せます。
    • テスト環境の作成: 同じVMのスナップショットから複数のクローンを作成し、異なるテストシナリオを並行して実行できます。
    • 開発環境の再現: 特定のバグが発生した時点の環境をスナップショットで保存しておき、後から開発者がその状態を再現してデバッグする際に役立ちます。
  • 仕組み: ベースディスクイメージに変更を書き込まず、差分ディスク(デルタディスク)に変更分を記録することで、複数のスナップショットを効率的に管理します。スナップショットを復元する際は、ベースディスクに差分データを適用することで元の状態に戻します。

2. ストレージのスナップショット

ストレージシステム(SAN, NAS, ZFS, LVMなど)の機能として提供され、ファイルシステムやボリューム全体の論理的な複製を作成します。

  • 概念: 特定のボリュームやファイルシステムが、ある時点においてどのような状態であったかを記録する機能です。通常、コピーオンライト(Copy-on-Write, COW)やリダイレクトオンライト(Redirect-on-Write, ROW)といった技術が使われます。
  • 用途:
    • データ保護: 誤ってファイルを削除したり、データが破損したりした場合に、スナップショットから迅速にデータを復元できます。
    • バックアップの起点: スナップショットは、その時点の整合性のあるデータセットを提供するため、オフサイトへのバックアップ処理の起点として利用されます。バックアップ処理中にデータが変更されても、スナップショット時点の整合性が保証されます。
  • 仕組み:
    • Copy-on-Write (COW): 元のブロックが変更される前に、その元のブロックをスナップショット領域にコピーし、変更後のデータを元の場所(または新しい場所)に書き込みます。
    • Redirect-on-Write (ROW): 元のブロックへの変更が発生した場合、元のブロックはそのままにしておき、変更後のデータを新しい場所に書き込み、ポインタを更新します。スナップショットは元のブロックを参照し続けます。

3. データベースのスナップショット

データベース管理システム(DBMS)によっては、データベース全体の論理的なスナップショット機能を提供しているものもあります。

  • 概念: 特定の時点でのデータベースの状態(テーブル、データ、インデックスなど)を凍結したものです。
  • 用途:
    • テスト・開発環境の構築: 本番環境のデータを反映したテスト環境を迅速に構築できます。
    • Point-in-Time Recovery の補助: データベースのバックアップと組み合わせて、特定の時点への正確な復旧を実現します。

スナップショットの利点と考慮事項

利点

  • 高速な復旧: 完全なバックアップからの復元に比べて、スナップショットからの復元は非常に高速です。
  • ストレージ効率: 通常、変更されたデータブロックのみを記録するため、フルコピーに比べて必要なストレージ容量が少なくなります。
  • データ整合性: 特定の時点の整合性のあるデータセットを提供できるため、アプリケーションが稼働中でも安心して取得できます。
  • 柔軟なテスト・開発: 複数のスナップショットから派生した環境を迅速に構築し、テストや開発の効率を高めます。

考慮事項

  • 依存関係: スナップショットはベースとなるデータに依存するため、ベースデータが破損するとスナップショットも利用できなくなる可能性があります。
  • パフォーマンスへの影響: 多くのスナップショットを保持したり、長期間保持したりすると、I/Oパフォーマンスに影響を与えることがあります。
  • 容量消費: 変更が頻繁なシステムでは、差分データの蓄積により、無視できない量のストレージを消費することがあります。
  • バックアップとの違い: スナップショットは通常、同じストレージシステム内に存在するため、ストレージシステム自体の物理的な故障からはデータを保護できません。真の災害対策のためには、スナップショットと並行して、別のストレージや場所へのオフサイトバックアップが必要です。

スナップショットは、ITシステムにおけるデータ保護、災害復旧、および開発・テストの効率化において極めて強力なツールです。仮想マシン、ストレージ、データベースといった様々なレイヤーで活用されており、その特性を理解し適切に運用することで、システムの可用性と信頼性を大幅に向上させることが可能です。

しかし、完全なバックアップの代替ではなく、補完的な役割を持つことを理解し、総合的なデータ管理戦略の一部として位置づけることが重要です。

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