2次割当問題とは
2次割当問題は、複数の施設やタスクを複数の場所に割り当てる際、割り当てによって生じるコストの合計が最小になるように、最適な組み合わせを求めるNP困難な組み合わせ最適化問題のことです。
2次割当問題の概要と目的
2次割当問題(Quadratic Assignment Problem: QAP)は、オペレーションズリサーチの分野で広く研究されている、古典的な最適化問題の一つです。この問題は、2つの要素(例えば、施設と場所)からなる集合があり、一方の集合の要素をもう一方の集合の要素に1対1で割り当てるというものです。
このとき、割り当てられたペア間のコスト(または利益)と、ペアの相互作用によって生じるコスト(または利益)の合計を最小化(または最大化)するような最適な割り当てを見つけることを目的とします。
この問題は、以下の2つの行列を用いて数学的に定式化されます。
- フロー行列(Flow Matrix): 施設間の相互作用の強さを示す行列です。例えば、施設Aから施設Bへの荷物の流量や、部署間の通信の頻度など。
- 距離行列(Distance Matrix): 場所間の距離を示す行列です。例えば、物理的な距離や、移動時間など。
QAPは、フローと距離の積の合計を最小化するように、施設の場所への割り当てを決定します。
2次割当問題の定式化
2次割当問題は、以下のように定式化できます。
施設 i を場所 j に割り当てる変数を xij とし、xij は割り当てる場合は1、そうでない場合は0とします。
制約条件:
(各場所には1つの施設が割り当てられる)
(各施設は1つの場所に割り当てられる)
xij∈{0,1} (割り当ては0か1の二値)
ここで、
- n: 施設と場所の数
- fik: 施設 i と施設 k の間のフロー
- djl: 場所 j と場所 l の間の距離
この式は、施設 i が場所 j に、施設 k が場所 l に割り当てられた場合、その間のフローと距離の積(fikdjl)がコストとして発生し、そのすべての組み合わせの合計を最小化することを示しています。目的関数が二次の項(xijxkl)を含むため、「2次」割当問題と呼ばれます。
2次割当問題の難しさと解決アプローチ
2次割当問題は、NP困難(NP-hard)な問題として知られています。これは、問題のサイズが大きくなると、最適解を求めるための計算時間が指数関数的に増加し、現実的な時間内では厳密な解法を見つけるのが非常に困難になることを意味します。
このため、QAPを解くためには、主に以下の2つのアプローチが取られます。
1. 厳密解法(Exact Methods)
- 目的: 常に最適解を見つけること。
- 手法:
- 分枝限定法(Branch and Bound): 探索空間を系統的に分割し、不要な枝を剪定しながら最適解を見つけます。
- 動的計画法(Dynamic Programming): 問題をより小さな部分問題に分解し、それらの解を組み合わせて全体の問題を解きます。
- 課題: 厳密解法は、問題のサイズ(n)が20〜30を超えると、計算時間が現実的でなくなります。
2. 近似解法(Approximation Methods)
- 目的: 最適解に近い「良い」解を、短時間で見つけること。
- 手法:
- ヒューリスティック: 経験則や直感に基づいたアルゴリズム。
- 山登り法(Hill Climbing): 現在の解から少しずつ改善を試み、より良い解が見つかるまで探索を続ける。
- メタヒューリスティック: より高度な探索手法。
- 焼きなまし法(Simulated Annealing): 解の改善だけでなく、確率的に悪い解も受け入れることで、局所的な最適解に陥ることを避ける。
- タブーサーチ(Tabu Search): 一度通った解の近傍を「タブー(禁止)」にすることで、探索の行き詰まりを防ぐ。
- 遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm): 生物の進化の仕組みを模倣し、解の集団からより良い解を生成していく。
- ヒューリスティック: 経験則や直感に基づいたアルゴリズム。
- 課題: 最適解であるという保証はありませんが、大規模な問題に対して非常に有効です。
2次割当問題の応用分野
2次割当問題は、その抽象的な性質から、多岐にわたる現実世界の課題に適用されています。
- 工場・施設レイアウトの設計:
- 互いに頻繁に連携する部署や機械を、物理的に近い場所に配置することで、移動や物流のコストを最小化する。
- バックプレーンの設計:
- コンピュータのバックプレーン(基板)上で、互いに頻繁に通信する電子部品を近くに配置し、配線の長さを最小化する。
- キーボードの配置:
- 入力頻度の高いキーを指の動きが少ない場所に配置することで、タイピングの効率を最大化する。
- 病院の病棟配置:
- 頻繁に連携する診療科や病棟を物理的に近くに配置し、スタッフや患者の移動負担を軽減する。
2次割当問題は、その計算の難しさが長年の研究を促しており、今日の最適化問題の発展に大きく貢献しています。
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