レガシーコード再生法:負債解消とシステム刷新

レガシーコード再生法:負債解消とシステム刷新

なぜ今、レガシーシステムの刷新が急務なのか?

ビジネスリスクとしてのレガシーコード: 維持コストの増大と事業成長の阻害

レガシーコードとは、一般的に古くなった技術や設計で書かれており、現在のビジネス要件を満たしにくくなっているコードベースのことです。

多くの企業にとって、レガシーコードは単なる「古いプログラム」ではなく、事業成長を阻害する重大なリスクとなっていることは、あまり大きな声では言えないかと思いますが、社内で”密かな”大きな課題となっています。

その最大の理由は、維持コストの増大です。

古い技術スタックを維持するためには、稀少な技術スキルを持つエンジニアを確保しなければなりません。

また、コードが複雑で属人化しているため、少しの機能修正にも多大な時間と労力がかかり、結果として開発コストが高騰します。

さらに深刻なのは、レガシーシステムが事業成長の足かせとなることです。

市場のニーズが変化し、競合他社が新しいサービスを素早く投入する中で、レガシーシステムはスピード感のある開発を妨げます。

例えば、モバイル対応やクラウド移行、新しいAPIとの連携など、現代のビジネスに不可欠な機能追加が困難となり、結果として事業機会を失ってしまうリスクを抱えます。

技術的負債の正体: コードの複雑性と開発効率の低下

ソフトウェア開発の世界では、「技術的負債」という概念が広く使われています。これは、短期間での開発を優先した結果、後回しにされたリファクタリングや、不適切な設計が原因で蓄積される、将来的なコストやリスクを指します。

レガシーコードは、この技術的負債の塊と言えるでしょう。

レガシーコードが技術的負債となる主な要因は以下の通りです。

  • 高い複雑性: 複数の機能が密に結合しており、一部を修正すると予期せぬ別の箇所に影響を及ぼす「スパゲッティコード」の状態です。
  • ドキュメントの欠如: 開発者が退職するにつれて、システムの仕様や設計思想が失われ、ブラックボックス化が進みます。
  • 低いテストカバレッジ: 自動テストが整備されていないため、安全にコードを変更することができず、手動での動作確認に多くの時間を費やします。

これらの要因により、エンジニアはコードの修正や機能追加を行うたびに、コード全体を慎重に読み解く必要に迫られます。その結果、開発効率が著しく低下し、新しい機能開発よりも既存システムの保守に多くのリソースが割かれるという悪循環に陥ってしまうのです。

この状態を放置することは、企業の競争力を削ぎ落とすことと同義です。次章では、このような技術的負債を解消し、システムを再生するための具体的なロードマップについて解説します。

1. 負債解消のための診断と戦略策定

レガシーコードの刷新を成功させるためには、その第一歩として、現在のシステムがどのような状態にあるのかを客観的に診断し、最適な戦略を策定することが不可欠です。このフェーズで最も重要なのは、「なんとなく古いから」という主観的な理由ではなく、データに基づいた明確な根拠を持つことです。

フェーズ1: 現状把握と診断

レガシーコードの評価基準: リスク、コスト、パフォーマンスを数値化する

レガシーコードがビジネスに与える影響は、漠然とした「扱いにくさ」だけでなく、具体的な数値で測ることができます。参考までに私たちがコードを評価する際の3つの観点をご紹介します。

  1. リスク(バグ発生率):
    • 過去の障害発生件数、重大度
    • 変更時にバグが発生する確率
    • 潜在的な脆弱性の数
    • 評価方法: バグ追跡システム(Jira, Redmineなど)のデータを分析したり、セキュリティスキャンツールを用いて脆弱性を特定したりします。
  2. コスト(修正工数):
    • 新規機能開発にかかる平均工数
    • バグ修正にかかる平均工数
    • 評価方法: 開発者のタイムトラッキングデータや、プロジェクト管理ツールに記録されたタスクの完了時間などを分析します。
  3. パフォーマンス:
    • ユーザーが待つ平均応答時間
    • 処理のピーク時にシステムが耐えられる負荷
    • 評価方法: アプリケーションパフォーマンスモニタリング(APM)ツールや、負荷テストツールを用いて、システムの応答時間やスループットを計測します。

これらは、あくまでも参考としての基本的な観点ですが、これらの数値を定期的に計測し、プロジェクトの開始前と開始後で比較することで、リファクタリングがもたらす効果を明確に示すことができます。

可視化ツールによる分析: コードメトリクス(複雑度、結合度など)の自動計測とボトルネックの特定

数値化された評価基準に加え、より技術的な視点からコードを診断するために、コードメトリクスの自動計測と可視化が非常に有効です。

主要なコードメトリクスには以下のようなものがあります。

  • 循環的複雑度(Cyclomatic Complexity):
    • プログラムの制御フローの複雑さを示します。この値が高いほど、コードの理解やテストが難しくなります。
  • 結合度(Coupling):
    • モジュールやクラス間の依存関係の強さを示します。結合度が高いほど、一部の変更がシステム全体に影響を及ぼす可能性が高まります。
  • 凝集度(Cohesion):
    • 1つのモジュールやクラスがどれだけ単一の責任を持っているかを示します。凝集度が高いほど、保守性が高くなります。

これらのメトリクスは、SonarQubeやCode Climateといった静的コード解析ツールを使って自動的に計測できます。これらのツールは、コードベース全体をスキャンし、メトリクスが高い特定の関数やクラスを特定してくれます。

特に、循環的複雑度が高い関数や、結合度が極端に高いクラスは、将来的にバグの温床となる可能性が高い「技術的負債のボトルネック」です。これらの箇所を特定することで、リファクタリングの優先順位をつけ、最も効率的に負債を解消するためのロードマップを描くことが可能になります。

お問い合わせはこちらから

APPSWINGBYのリファクタリング・システム刷新専門チームが、貴社のレガシーシステムが抱える課題を診断し、最適な再生プランをご提案します。お気軽にご相談ください。

【お問い合わせフォーム】

システム開発にお困りではありませんか?

この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。