規制強化が世界的潮流となっている年齢確認法

前回は、「年齢確認法とは?米国を中心に導入が進む年齢確認法について解説」ということで、年齢確認法の基本から米国を中心に活発に議論されいる背景について解説しました。
今回は米国における年齢確認法の実態について掘り下げてご紹介していきます。
では、さっそくはじめていきましょう!
- 1. 規制強化の世界的潮流
- 1.1. 米国における州レベルの先行実装
- 1.2. 英国のオンライン安全法による包括的アプローチ
- 1.3. EUのデジタル政策との整合性
- 1.4. アジア太平洋地域での新たな動向
- 1.5. 技術革新による解決策の模索
- 1.6. 国際協調の必要性
- 2. 年齢確認法の定義と基本概念
- 2.1. 年齢確認法(Age Verification Laws)とは
- 2.1.1. 法的定義と本質的特徴
- 2.1.2. 年齢確認法の3つの要素
- 2.1.2.1. 1. 能動的確認義務
- 2.1.2.2. 2. 信頼性のある情報源への依拠
- 2.1.2.3. 3. 継続的コンプライアンス
- 2.1.3. 規制の段階的進展
- 2.1.4. 憲法的考慮事項と表現の自由
- 3. 年齢確認(Age Verification)と年齢保証(Age Assurance)の違い
- 3.1.1. 概念的区分の重要性
- 3.1.2. 年齢保証の包括的性格
- 3.1.3. 技術的手法による分類
- 3.1.4. 実装上の考慮事項
- 3.1.5. 規制環境における実用性
規制強化の世界的潮流
米国における州レベルの先行実装
米国では連邦政府による包括的な法制化に先行して、各州が独自の年齢確認法を制定する動きが活発化していることは前回の記事でもお伝えした通りですが、テキサス州のHB1181やフロリダ州のHB3など、アダルトコンテンツへのアクセス規制から始まった取り組みは、現在ではソーシャルメディアプラットフォームにまで拡大している状況です。
この州レベルでの実験的取り組みは、連邦レベルでの法制化に向けた重要な先例となっており、他の州への広がりを見せつつあるのが今の米国の状況です。
英国のオンライン安全法による包括的アプローチ
米国以外の国でも「年齢確認法」は確実に広がっています。
英国では、2023年に制定したオンライン安全法により、世界で最も包括的な年齢確認要件を導入しました。
この法律は、単なるアダルトコンテンツ規制にとどまらず、未成年者がアクセスする可能性のある広範囲のオンラインサービスに対して、リスクアセスメントと適切な保護措置の実装を義務付けている法律です。
EUのデジタル政策との整合性
欧州連合(EU)では、デジタルサービス法(DSA)やAI法などの包括的なデジタル規制の中で、未成年者保護が重要な政策目標として位置づけています。
これらの規制は、年齢確認技術の標準化と、プライバシー保護との両立を図る技術的解決策の開発を促進している規制として活発に議論されています。
アジア太平洋地域での新たな動向
アジア太平洋地域でも、「年齢確認法」導入の動きが進んでいます。
オーストラリア議会は、2024年にオンライン安全改正法(ソーシャルメディア最低年齢)を可決し、16歳未満の児童のソーシャルメディア使用を禁止としました。
同法では、プラットフォームに対してユーザーの年齢を確認する「合理的な措置」を取らなければ3,000万ドル以上の罰金を科すという先進的な取り組みを開始しています。
技術革新による解決策の模索
これらの規制強化の流れと並行して、プライバシー保護型年齢確認技術の開発も加速しています。
ゼロナレッジ証明技術や生体認証技術の進歩により、個人情報を最小限に抑制しながら効果的な年齢確認を実現する技術的基盤が整いつつあります。
これらの技術革新は、従来のプライバシー保護と未成年者保護のトレードオフ関係を解決する可能性を秘めていると言えるでしょう。
日本国内ではあまり話題にならない「ゼロナレッジ証明技術(ゼロ知識証明技術とも言う)」ですが、実は1980年代に考えられた古いアイディアが元になっています。
ゼロナレッジ証明技術について解説をはじめてしまうと、本題から大きく外れてしまいますので、ここでは一旦元の路線に戻り、ゼロナレッジ証明技術については改めて別の記事でご紹介することにします。
国際協調の必要性
グローバル化したデジタル経済において、各国がバラバラの年齢確認基準を採用することは、技術企業にとって過大なコンプライアンス負担となります。
そこで、OECD諸国を中心とした国際的な技術標準と法的枠組みの調和が重要な政策課題となり、国際的な協調による効果的かつ実用的な年齢確認システムの構築が期待されているという状況が続ています。
年齢確認法の定義と基本概念
ここからは年齢確認法の概念を理解する為に、年齢確認法の定義と基本概念についてご紹介していきます。
まず、年齢確認法の実装と運用を適切に理解するためには、関連する基本概念を正確に把握することが不可欠です。
年齢確認法の法的定義、類似概念との違い、そして規制対象となるオンラインサービスの範囲について詳述していきます。これらの概念的整理は、技術実装やコンプライアンス戦略の策定において重要な基盤となりますので、詳しく解説していきます。
年齢確認法(Age Verification Laws)とは
法的定義と本質的特徴
年齢確認法(Age Verification Laws)は、企業が特定の製品やサービスへのアクセスを許可する前に、顧客の年齢を確認することを要求する規制です。
この法的枠組みの基本は、従来の自己申告制度を超えて客観的で検証可能な年齢確認メカニズムの実装を事業者に義務付けるものです。
年齢確認法の3つの要素
現在の年齢確認法は、主として以下の3つの要素によって特徴付けられます。
1. 能動的確認義務
事業者は単にユーザーからの自己申告を受け入れるのではなく、アカウント保有者の年齢を確認するための「商業的に合理的な努力」を行うことが求められます。
これは、技術的な検証メカニズムの実装を意味し、単なる利用規約上の制限を超えた実質的な対応を要求しているものです。
2. 信頼性のある情報源への依拠
年齢確認は権威ある情報源(ID文書、データベース、デジタルIDウォレット)に対する決定的なチェックを基盤とする必要があります。
これにより、検証プロセスの客観性と法的有効性が担保する必要が生じます。
3. 継続的コンプライアンス
年齢確認法は、サービス開始時の一回限りの確認ではなく、サービス利用期間を通じた継続的なコンプライアンス体制の構築を求めています。
つまり、技術的な回避や虚偽情報の使用を防止するための包括的なアプローチであることが重要になるということです。
規制の段階的進展
年齢確認法の発展は段階的な特徴を示しています。
2024年には、アーカンソー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、モンタナ州、テキサス州、ユタ州、バージニア州を含む12州が、未成年者のオンライン安全性を向上させるための年齢確認法を制定しました。
当初はアダルトコンテンツへのアクセス規制から始まった取り組みは、現在ではソーシャルメディアプラットフォームまで拡大しています。
ルイジアナ州の法律は2024年7月1日に発効し、ソーシャルメディア企業に対して既存または新規のルイジアナ州アカウント保有者の年齢を確認するための「商業的に合理的な努力」を要求しています。
憲法的考慮事項と表現の自由
年齢確認法の実装において重要な論点となるのが、表現の自由との調和です。
世界各国の年齢確認法案により、政府はインターネット利用者に負担を課し、合法的な言論にアクセスするために匿名性、プライバシー、セキュリティを犠牲にすることを強制している実態があります。
この問題に対して、米国最高裁判所は2025年6月末にテキサス州のアダルトコンテンツに対する年齢確認を要求する法律を支持する判決を下し、憲法上の表現の自由の制約と未成年者保護の必要性のバランスに関する重要な先例を示しました。
年齢確認(Age Verification)と年齢保証(Age Assurance)の違い
概念的区分の重要性
年齢確認(Age Verification)と年齢保証(Age Assurance)は、しばしば混同されるが、技術的精度と法的要件の観点から明確な区別が存在しています。
年齢保証とは、オンライン利用者の年齢を決定するために使用される技術を包括する包括的用語です。誤解しやすい用語でもありますので、少し深堀してみます。
年齢保証の包括的性格
年齢保証は年齢確認と年齢推定の両方を含むより広い概念です。
正確な年齢を確認するのではなく、ユーザーが特定の年齢範囲内にあるか、または特定のコンテンツやサービスにアクセスするための最低年齢要件を満たしているかを評価することに焦点を当てているのが年齢保証です。
この定義から明らかなように、年齢保証は実装の柔軟性を提供する一方で、法的確実性の観点では課題を含む概念と言えるでしょう。
技術的手法による分類
年齢確認(Age Verification)の特徴
- 政府承認の信頼できる情報源を使用してID確認による決定的な年齢証明を提供
- 文書確認と生体認証マッチングを組み合わせることで高い確実性を実現
- 法的コンプライアンスの観点から最も堅牢な手法
年齢推定(Age Estimation)の特徴
- 年齢推定手法は通常、年齢確認よりも低い統計的確実性で推定年齢範囲のみを示す
- 顔画像から近似年齢を予測するAI技術などが代表的
- 人工知能技術の進歩により精度は向上しているが、法的確実性は限定的
実装上の考慮事項
年齢保証手法には、ユーザーが18歳以上であることを示すボックスにチェックを入れたり、追加のチェックなしに年齢や生年月日を入力したりするユーザー確認は含まれません。
これは、従来の自己申告制度が年齢保証の要件を満たさないことを明確に示している為です。
英国の情報コミッショナーオフィス(ICO)は、
・年齢保証が子どもの個人情報をオンラインで安全に保つ重要な役割を果たし、
・子どもの年齢を推定または評価するツールやアプローチを記述し、
・必要に応じてサービスをニーズに合わせて調整したり、アクセスを制限したりすることを可能にする
と定義しています。
規制環境における実用性
オーストラリアの事例は、年齢保証技術の実装における課題を示しています。
オンライン安全法2021の下で年齢確認要件の実装を意図していたオーストラリアでは、2023年8月にeSafetyが「現在のところ、各種類の年齢確認または年齢保証技術には、プライバシー、セキュリティ、有効性、または実装上の独自の問題がある」と報告し、技術的課題の複雑性を明らかにしました。
16歳未満に対する年齢保証は可能であるが、プライバシーに関する懸念といくらかの誤差の余地なしには実現できないという最新の報告書は、技術実装における現実的制約を示しています。
解説記事「規制強化が世界的潮流となっている年齢確認法」の続きは
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株式会社APPSWINGBY マーケティング
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監修

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

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