生成AIは機械学習から始まる-その4:強化学習Reinforcement Learning)

今回は「生成AIは機械学習から始まる」シリーズの第四回目です。
教師なし学習、教師あり学習の次は、「強化学習」です。過去の記事は以下のリンクからご覧ください。
第一回目:生成AIは機械学習から始まる:基礎から理解する技術の系譜と実装への道
第二回目:生成AIは機械学習から始まる-その2:機械学習のアプローチ
第三回目:生成AIは機械学習から始まる-その3:教師なし学習(Unsupervised Learning)
では、さっそくはじめていきましょう!
強化学習(Reinforcement Learning)
強化学習は、エージェント(行動主体)が環境との相互作用を通じて試行錯誤を繰り返し、報酬(または罰則)を最大化するような最適な行動戦略(方策)を自律的に学習することを目的とした機械学習の分野のことです。
強化学習(Reinforcement Learning, RL)は、教師あり学習や教師なし学習と並ぶ機械学習の主要なパラダイムの一つであり、強化学習は、前述した教師あり学習と教師なし学習の2つの方式とは大きく異なるアプローチをとっています。
では、一体何が異なるアプローチなのでしょうか。
一言で言ってしますと、強化学習では明確な正解ラベル(教師データ)が与えられるのではなく、行動の結果として得られる報酬を指標として学習が進められるのです。
このアプローチは、人間の子供が試行錯誤を通じて新しいスキルを学ぶ過程や、動物が訓練される過程に類似しています。
エージェントは、環境に対して何らかの行動を取り、その行動が成功すれば報酬を獲得し、失敗すれば罰則(負の報酬)を受け取ります。エージェントは、長期的にこの報酬の総和を最大化するように、自身の行動戦略(方策)を徐々に改善していきます。
まるで知能のある生き物のようです。
このアプローチの主な目的は、不確実で動的な環境において、長期的な報酬を最大化するような最適な意思決定ルール(方策)を自律的に発見することです。
環境との相互作用を通じて、試行錯誤しながら最適な行動を学習する方式なのです。
強化学習の基本的な仕組み
強化学習は、以下の要素から構成されます。
- エージェント(Agent):学習する主体、意思決定を行う
 - 環境(Environment):エージェントが行動する世界
 - 状態(State):環境の現在の状況
 - 行動(Action):エージェントが取れる選択肢
 - 報酬(Reward):行動の結果として得られるフィードバック
 
学習プロセスは以下のように進みます。
- エージェントが現在の状態を観察
 - 何らかの行動を選択して実行
 - 環境が新しい状態に変化し、報酬が与えられる
 - この経験から、どの状態でどの行動を取るべきかを学習
 - より多くの報酬を得られるように戦略を改善
 
これは、人間が新しいゲームを学ぶプロセスに非常に似ています。最初はランダムに操作し、うまくいけば喜び(正の報酬)、失敗すれば悔しがり(負の報酬)、徐々に効果的な戦略を見出していきます。
教師あり学習との重要な違い
強化学習と教師あり学習は、一見似ているように見えますが、根本的に異なります。
教師あり学習:
- 「この状況では、この答えが正解です」と明示的に教えられる
 - すべての正解が事前に用意されている
 - 即座に正確なフィードバックが得られる
 
強化学習:
- 「この行動の結果、報酬が得られました」という間接的なフィードバックのみ
 - 何が最適な行動かは自分で探索する必要がある
 - 報酬は遅延することがある(今の行動の結果が後で現れる)
 
例えば、チェスの場合:
- 教師あり学習的アプローチ:「この局面では、このように指すのが正解」と各手を教える
 - 強化学習的アプローチ:ゲームをプレイさせ、勝利時に報酬を与える。途中の手が良かったか悪かったかは自分で判断させる
 
主な応用例
強化学習は、以下のような問題で威力を発揮します。
1. ゲームAI
- AlphaGo(囲碁)
 - OpenAI Fivedota2(複雑なリアルタイムストラテジーゲーム『Dota 2』をプレイするAIボットのチーム)
 
2. ロボティクス
- ロボットの歩行制御
 - 物体の把持と操作
 - 自律航行
 
3. 最適化問題
- 資源配分
 - スケジューリング
 - ネットワークルーティング
 
4. 対話システム
- チャットボットの応答最適化
 - ユーザー満足度の向上
 
強化学習の強みと課題
強み:
- 逐次的意思決定:時間的に連続した問題に強い
 - 適応性:環境の変化に対応できる
 - 探索と活用のバランス:既知の良い戦略と新しい可能性のバランスを取れる
 - 人間の知識が不要:正解を人間が知らなくても学習できる
 
課題:
- サンプル効率:十分に学習するために膨大な試行が必要
 - 報酬設計の難しさ:適切な報酬関数の設計が非常に難しい
 - 探索の問題:膨大な可能性の中から効率的に学習する必要がある
 - 安全性:学習中に危険な行動を取る可能性がある
 
生成AIとの関係
近年、強化学習は生成AIの改善に重要な役割を果たしています。特にRLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback:人間のフィードバックからの強化学習)という手法は、ChatGPTをはじめとする対話型AIの性能向上に大きく貢献しています。
RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)については、また別の機会で詳しくご紹介しようと思いますが、今回はRLHFの基礎だけご紹介しておきます。
RLHFは
- 基本的な言語モデルを教師なし学習で訓練
 - 人間が複数の応答を評価
 - その評価を報酬として、強化学習でモデルを改善
 - より人間の期待に沿った応答ができるようになる
 
このように、3つの学習方式は単独で使われるだけでなく、組み合わせることで相乗効果を発揮します。
これら3つの学習方式は、機械学習の基礎を形成しています。生成AIを理解する上で、特に教師なし学習と強化学習の概念は不可欠です。
次のセクションでは、これらの基礎の上に構築された深層学習についてご紹介したいと思います。
解説記事「生成AIは機械学習から始まる-その4:強化学習Reinforcement Learning)」の続きは
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この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップや東証プライム上場企業のR&D部門を経て、2019年5月より株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTO。
Webシステム開発からアプリ開発、AI導入、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトまで幅広く携わる。
C, C++, C#, JavaScript, TypeScript, Go, Python, PHP, Java などに精通し、Vue.js, React, Angular, Flutterを活用した開発経験を持つ。
特にGoのシンプルさと高パフォーマンスを好み、マイクロサービス開発やリファクタリングに強みを持つ。
「レガシーと最新技術の橋渡し」をテーマに、エンジニアリングを通じて事業の成長を支えることに情熱を注いでいる。

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップや東証プライム上場企業のR&D部門を経て、2019年5月より株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTO。
Webシステム開発からアプリ開発、AI導入、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトまで幅広く携わる。
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