クラウドインフラストラクチャとは
クラウドインフラストラクチャは、インターネットを通じてオンデマンドで提供されるコンピューティングリソース(サーバー、ストレージ、ネットワーク、仮想化など)の集合体のことであり、企業や組織が、自前で物理的な設備を所有・管理することなく、柔軟でスケーラブルなIT環境を、サービスとして利用できるようにするための基盤技術およびその提供形態のことです。
クラウドインフラストラクチャの概要と構成要素
クラウドインフラストラクチャ(Cloud Infrastructure)は、従来のオンプレミス環境で物理的に構築・管理されていたIT資源を、仮想化技術によって抽象化し、ネットワーク経由でサービスとして利用可能にしたものです。利用者は必要なリソースを必要な分だけ従量課金制で利用できます。
1. サービスモデルとの関係
クラウドインフラストラクチャは、主にIaaS(Infrastructure as a Service)というサービスモデルの基盤となります。
- IaaS: 仮想マシン(VM)、ストレージ、ネットワークといったITの基盤部分を提供します。利用者はOSやミドルウェアのインストール・管理を行う必要があります。
2. 主要な構成要素
クラウドインフラストラクチャを構成する要素は、従来のデータセンターの構成要素と類似していますが、すべてがソフトウェアによって制御・抽象化されています。
| 構成要素 | 概要 | 役割 |
| コンピュート(Compute) | 仮想マシン(VM)、コンテナ、サーバーレス機能などの処理能力。 | アプリケーションの実行環境を提供します。 |
| ストレージ(Storage) | ブロックストレージ、オブジェクトストレージ、ファイルストレージなど。 | データやアプリケーションの永続的な保存領域を提供します。 |
| ネットワーク(Networking) | 仮想ネットワーク、ロードバランサー、ファイアウォール、VPNなど。 | リソース間の通信や外部接続、トラフィック制御を担います。 |
| 仮想化(Virtualization) | ハイパーバイザなどの技術により、物理リソースを仮想化・抽象化するレイヤー。 | 複数の利用者に物理リソースを論理的に分割し、分離性を提供します。 |
クラウドインフラストラクチャのメリット
クラウドインフラストラクチャを利用することで、企業は従来のIT投資と比較して多くの戦略的なメリットを享受できます。
1. スケーラビリティと柔軟性
- 弾力性(Elasticity): 需要の増減に応じて、サーバーやストレージ容量などのリソースを自動的かつ迅速に増減できます。これにより、ピーク時の負荷増大に対応しつつ、閑散期にはリソースを縮小してコストを削減できます(オートスケーリング機能など)。
- オンデマンド利用: 必要なリソースを数分でプロビジョニング(準備)でき、市場やビジネスの変化に迅速に対応できる俊敏性(Agility)を獲得します。
2. コスト効率の改善
- 資本支出(CapEx)から運用支出(OpEx)へ: 物理的なハードウェアやデータセンター設備への初期投資(資本支出)が不要となり、利用した分だけ支払う従量課金制(運用支出)に移行します。
- 運用管理の負荷軽減: サーバーの保守、電源管理、冷却、物理的なセキュリティ対策といったインフラストラクチャの維持管理の多くは、クラウドプロバイダが担当するため、企業は本業に注力できます。
3. 可用性と信頼性
クラウドプロバイダは、地理的に分散したリージョン(地域)やアベイラビリティゾーン(データセンター群)を提供しており、リソースを複数箇所に配置することで、特定の障害や災害が発生した場合でもシステムが継続して稼働する高可用性(High Availability)を容易に実現できます。
クラウドインフラストラクチャの形態
クラウドインフラストラクチャは、その提供・設置場所に応じて以下の形態に分類されます。
- パブリッククラウド(Public Cloud): AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのプロバイダが、不特定多数のユーザーに対してインターネット経由でリソースを共有して提供する形態です。
- プライベートクラウド(Private Cloud): 特定の企業や組織専用に構築・運用されるクラウド環境です。オンプレミスで構築する場合と、パブリッククラウドプロバイダの専用環境を利用する場合があります。
- ハイブリッドクラウド(Hybrid Cloud): パブリッククラウドとプライベートクラウド(またはオンプレミス)を組み合わせ、相互に連携させて運用する形態です。データやワークロードの特性に応じて最適な環境を選択できます。
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