DBSCANとは

DBSCANは、機械学習におけるクラスタリングアルゴリズムの一つであり、データの密度(データ点の密集度)に基づいてクラスタを識別し、ノイズ(外れ値)を自動的に分離することができる非階層型の手法のことです。

DBSCANの概要とクラスタリングにおける特徴

DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise、ノイズを含む応用における密度に基づく空間クラスタリング)は、1996年に提案されたクラスタリング手法です。

K-means法などの従来のクラスタリング手法とは異なり、クラスタの数を事前に指定する必要がなく、また、クラスタが任意の複雑な形状(非凸型)を持つ場合でも効果的に検出できるという特徴を持ちます。

従来のクラスタリング手法、特にK-means法は、クラスタの形状を球形または凸型と仮定するため、ドーナツ型やS字型などの複雑な形状のクラスタや、密度が不均一なクラスタをうまく分離できませんでした。

DBSCANは、データ点の局所的な密度に注目し、高密度の領域をクラスタとして定義し、低密度の領域をクラスタ間の境界やノイズとして扱います。これにより、データセットの自然な構造をより忠実に反映した結果を得ることができます。

主な目的は、クラスタの形状やデータセットの規模に関する事前の仮定を最小限に抑え、ノイズ(外れ値)を自動的に区別しながら、密度に基づいてクラスタを特定することです。

DBSCANの基本概念と動作原理

DBSCANは、クラスタリングを実行するために、主に2つのパラメータ3種類のデータ点の概念を使用します。

1. 重要なパラメータ

  • ϵ(イプシロンまたはEps): あるデータ点を中心とした円(あるいは超球)の半径です。この半径内に存在するデータ点が、その点の近傍(ネイバー)と見なされます。
  • MinPts(最小点数): データ点がコア点と見なされるために、ϵ の近傍内に最低限必要とされるデータ点の数です(その点自身を含む)。

2. 3種類のデータ点

DBSCANは、すべてのデータ点を以下のいずれかに分類します。

  • コア点(Core Point): その点の ϵ 近傍内に、MinPts以上のデータ点を含む点です。コア点はクラスタの中心となる高密度領域を形成します。
  • 境界点(Border Point): コア点ではありませんが、あるコア点の ϵ 近傍内に含まれる点です。クラスタの端に位置します。
  • ノイズ点(Noise Point): コア点でも境界点でもない点です。どのクラスタにも属さない低密度領域の点、つまり外れ値として分類されます。

3. クラスタの定義と構築

DBSCANは、以下の「密度到達可能性」と「密度連結性」の概念に基づいてクラスタを構築します。

  • 密度到達可能(Density Reachable): あるコア点 p から、ϵ 距離内にある別のコア点の連鎖を通じて、点 q に到達できる場合、q は p から密度到達可能であると見なされます。
  • 密度連結(Density Connected): 2つの点 p と q が、共通のコア点 o から密度到達可能である場合、それらの点は密度連結であると見なされます。

DBSCANのアルゴリズムは、任意の未訪問のコア点から出発し、そこから密度連結であるすべての点を再帰的に集めて一つのクラスタを形成します。すべてのコア点と境界点がクラスタに割り当てられるまでこのプロセスを繰り返し、最終的にどのクラスタにも属さなかった点(ノイズ点)を分離します。

DBSCANの利点と課題

利点

  • 任意の形状のクラスタ検出: K-meansでは検出が困難な複雑な形状のクラスタを分離できます。
  • ノイズの自動識別: ノイズ点(外れ値)をクラスタから自動的に分離し、クラスタリング結果の品質を高めます。
  • クラスタ数の事前不要: クラスタの数を事前に指定する必要がありません。

課題

  • パラメータ感度: ϵ と MinPtsのパラメータ設定が結果に大きく影響します。これらのパラメータは、データのスケールや密度によって適切に調整する必要があります。
  • 密度変動への対応: データセット内に密度が大きく異なる領域が混在している場合、単一の ϵ と MinPtsでは最適なクラスタリング結果を得ることが難しい場合があります。この課題に対処するために、OPTICSなどの派生アルゴリズムが提案されています。
  • 高次元データ: データが高次元になるにつれて、距離の概念が意味をなさなくなる「次元の呪い」の影響を受けやすく、性能が低下する場合があります。

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