DETRとは

DETRは、ディープラーニングに基づく物体検出モデルの一つであり、従来の複雑なコンポーネント(アンカー生成、非最大抑制など)を排除し、Transformerとセット予測損失を用いることで、物体検出を直接的なシーケンス予測問題として解決したフレームワークのことです。

DETRの概要と革新性

DETR(DEtection TRansformer)は、Facebook AI Research(FAIR)によって2020年に発表されました。これは、物体検出の分野において長年主流であった、候補領域(Proposal)の生成と事後処理を必要とするアプローチ(例:Faster R-CNN、YOLOシリーズ)のパラダイムを根本から変えたモデルです。

従来の物体検出モデルは、膨大な数のアンカーボックスを事前に定義し、その中から物体らしい候補を選び出し、重複するボックスを非最大抑制(NMS: Non-Maximum Suppression)で除去するという、複雑な手作業によるプロセスを必要としていました。

DETRは、これらのヒューリスティックなコンポーネントを完全に排除し、Transformerの持つ強力な大局的な依存関係のモデリング能力を利用して、画像から直接、固定数の最終的な予測結果(バウンディングボックスとクラス)のセットを出力します。

主な目的は、物体検出のパイプラインを簡素化し、Transformerを用いることで end-to-end で学習・推論が可能な、効率的かつ高性能なモデルを提供することです。

DETRの主要な構成要素と動作原理

DETRは、主に畳み込みバックボーン、Transformerエンコーダ、Transformerデコーダ、そしてセット予測損失という4つの要素で構成されています。

1. CNNバックボーン

  • 動作:

2. Transformerエンコーダ

  • 動作:
    • CNNから得られた特徴マップを、位置情報(Positional Encoding)とともにエンコーダに入力します。
    • エンコーダ内の自己注意機構(Self-Attention)は、画像全体における特徴間の長距離依存関係を学習し、どの特徴が互いに関連しているかを捉えます。これにより、モデルは画像全体を一望して、物体間の関係や文脈を理解することができます。

3. Transformerデコーダと物体クエリ(Object Queries)

  • 動作:
    • デコーダは、エンコーダからの出力と、学習可能な固定長の埋め込みベクトルである物体クエリ(Object Queries)を入力として受け取ります。
    • 物体クエリは、最終的に検出される物体そのものを表現するために導入された特殊な埋め込みであり、各クエリが画像内の特定の物体とその位置・クラスの予測を担当します。
    • デコーダ内の注意機構により、各物体クエリはエンコーダ出力全体と相互作用し、画像全体の特徴から必要な情報を抽出し、固定数の予測結果(例えば100個)を出力します。

4. セット予測損失(Set Prediction Loss)

  • 概要:
    • 予測結果と正解のアノテーション(ラベル)の間の対応関係を、1対1で自動的に見つける損失関数です。
  • 動作:
    • 従来のNMSに代わり、DETRは予測セットと正解セットの間で、最適な二部マッチング(Bipartite Matching)を行います。これは、ハンガリーアルゴリズム(Hungarian Algorithm)を用いて、予測と正解の間の類似度(クラスとボックスの誤差)が最小になる組み合わせを見つけ出すプロセスです。
    • マッチングが完了した後、その組み合わせに基づいて、以下の損失が計算されます。
      • クラス予測の交差エントロピー損失
      • バウンディングボックスのL1損失
      • 一般化IoU損失(Generalized IoU Loss)

このセット予測損失によって、モデルは非最大抑制なしで直接、最終的な検出結果を出力するよう学習します。

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