FPNとは

FPN(Feature Pyramid Network)とは、物体検出タスクにおいて、入力画像の異なるスケール(大きさ)の物体を効果的に検出するために、深層畳み込みニューラルネットワーク(CNN)内で多スケールな特徴マップを効率的に生成するネットワーク構造です。

従来の画像ピラミッドや単一スケールの特徴マップを用いる手法と比較して、計算コストを抑えつつ、高精度な物体検出を実現します。

FPN の基本概念

物体検出においては、画像内に存在する物体の大きさが様々であるため、単一のスケールの特徴マップだけでは全ての物体を適切に捉えることが困難です。

FPNは、CNNの持つ階層的な特徴マップを利用し、トップダウンパスとラテラル接続を組み合わせることで、全てのスケールにおいて意味的に豊かな特徴マップを構築します。これにより、小さな物体から大きな物体まで、一貫して高精度な検出が可能になります。

FPN の仕組み

FPNは、通常、既存のCNN(ResNet、VGGなど)をバックボーンネットワークとして利用し、その特徴マップを基に多スケールな特徴ピラミッドを構築します。主要な構成要素は以下の通りです。

  1. ボトムアップパス(Bottom-up Pathway): これは、通常のバックボーンCNNの順伝播であり、入力画像から畳み込み層とプーリング層を通過するにつれて、特徴マップの空間解像度は低下し、意味的な抽象度は高くなります。FPNでは、このパスの各段階の最終的な特徴マップをピラミッドの各レベルの基礎とします。
  2. トップダウンパス(Top-down Pathway): ボトムアップパスで得られた意味的に強いが空間解像度の低い高レベルの特徴マップから、空間解像度の高い特徴マップをアップサンプリングによって生成します。
  3. ラテラル接続(Lateral Connections): トップダウンパスで生成されたアップサンプリングされた特徴マップと、ボトムアップパスの対応する空間解像度を持つ特徴マップを結合します。この結合は、通常、1×1の畳み込み層を通してチャネル数を調整した後に行われ、高レベルの意味情報と低レベルの空間情報を融合させる役割を果たします。

このプロセスにより、FPNは、低解像度で意味的に強い特徴マップと、高解像度で位置情報が豊富な特徴マップを全てのスケールで持つ特徴ピラミッドを生成します。物体検出ヘッド(分類器とバウンディングボックス回帰器)は、このピラミッドの各レベルの特徴マップに対して独立に適用され、異なるスケールの物体を検出します。

FPN のメリット

  • 多スケール物体検出の性能向上: 様々な大きさの物体に対して、より効果的な特徴表現を提供し、検出精度を向上させます。特に、小さな物体の検出性能の向上が期待できます。
  • 計算効率: 画像ピラミッドのように各スケールで個別に特徴抽出を行うのではなく、単一のネットワーク内で特徴を再利用するため、計算コストを抑えられます。
  • 柔軟性: 既存の様々なCNNアーキテクチャに容易に組み込むことができ、汎用性の高い特徴抽出器として利用できます。
  • エンドツーエンドの学習: バックボーンネットワークとFPN全体をエンドツーエンドで学習できるため、最適化が容易です。

FPN のデメリット

  • パラメータ数の増加: バックボーンネットワークに追加の畳み込み層や結合層が導入されるため、わずかにパラメータ数が増加する可能性があります。
  • 設計の複雑さ: 単一スケールのネットワークと比較して、アーキテクチャがやや複雑になります。

FPN の応用例

FPNは、現代の物体検出モデルにおいて広く採用されており、様々なフレームワークで利用されています。

  • Faster R-CNN: 領域提案ネットワーク(RPN)と検出ネットワークの両方で特徴抽出器として利用され、精度向上に貢献します。
  • RetinaNet: アンカーベースのシングルステージ検出器において、各スケールのアンカーボックスに対して適切な特徴レベルを提供します。
  • Mask R-CNN: 物体検出に加えて、ピクセルレベルのセグメンテーションを行うタスクにおいても、高品質な特徴マップを提供します。

FPN(Feature Pyramid Network)は、深層畳み込みニューラルネットワークにおける多スケール特徴抽出のための効率的かつ強力な構造です。トップダウンパスとラテラル接続を組み合わせることで、異なるスケールの物体に対してロバストな特徴表現を可能にし、物体検出タスクの性能向上に大きく貢献しています。その汎用性と有効性から、現代の物体検出モデルの重要な構成要素となっています。

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