GloVeとは
GloVeは、大規模な文書コーパスから単語の共起統計情報を学習し、それに基づいて各単語を意味的な特徴空間(ベクトル)で表現する、教師なし学習による単語埋め込み(Word Embedding)モデルの一つです。
GloVeの概要と単語埋め込みにおける位置づけ
GloVe(Global Vectors for Word Representation、単語表現のためのグローバルベクトル)は、2014年にスタンフォード大学の研究者によって開発されました。これは、自然言語処理(NLP)における基本的な技術であり、コンピュータが単語の意味や単語間の関係を数値的に理解するための基盤を提供します。
GloVeが登場する以前の単語埋め込みモデルには、主に以下の2種類のアプローチがありました。
- 特異値分解(SVD)に基づく手法: コーパス全体から得られるグローバルな統計情報(単語の共起行列など)を利用しますが、計算コストが高いという問題がありました。
- Word2Vecなどの予測型手法: 特定の単語の局所的な文脈(周辺の単語)から次の単語を予測するように学習しますが、グローバルな統計情報が十分に活用されないという側面がありました。
GloVeは、これらの手法の長所を組み合わせ、単語の共起確率の比率というグローバルな統計情報に基づいて学習することで、効率的かつ高品質な単語ベクトルを生成します。
主な目的は、単語間の意味的および文法的な関係を捉えた、密度の高い低次元のベクトル表現を生成することであり、これにより、単語間の類似度計算や、機械学習モデルへの入力として使用できるようになります。
GloVeの動作原理:共起確率比のモデリング
GloVeの中核的な理論は、2つの単語 i と j の共起確率の比率が、その単語のベクトル表現間の線形的な関係に変換できるという点にあります。
1. 共起行列の作成
まず、訓練コーパス全体から共起行列 X を作成します。行列 X の要素 Xij は、単語 i と単語 j が一定のウィンドウサイズ内で共起した回数を表します。
- Pij(共起確率): Pij=Xij/Xi として、単語 i の文脈において単語 j が出現する確率を計算します(Xi は単語 i の総出現回数)。
2. 損失関数(目的関数)
GloVeは、単語ベクトル wi と wj の内積が、その単語の共起確率の対数(logXij)に近くなるように学習されます。これにより、ベクトル空間における距離が、意味空間における単語間の関係を反映するようになります。
GloVeの学習に用いられる損失関数 J は、以下の形式で定義されます。
ここで、V は語彙サイズ、wi は単語ベクトル、w~j は文脈ベクトル、bi と b~j はバイアス項です。f(Xij) は、頻度が低い共起ペアや非常に高い共起ペアの影響を調整するための重み付け関数です。
- wiTw~j: 2つの単語ベクトルの内積。この値が共起の対数に近くなるように最適化されます。
この目的関数を最小化することで、ベクトル空間内で意味的に近い単語は近い距離に、遠い単語は遠い距離に配置されるようになります。
GloVeの重要な特徴と応用
1. 線形的な単語の関係(Analogies)
GloVeが生成する単語ベクトルは、Word2Vecと同様に、単語間の意味的・文法的な関係がベクトル空間で線形的に表現されるという特性を持ちます。
たとえば、以下のベクトル演算は、GloVeが単語間の関係を学習できていることを示します。
King−Man+Woman≈Queen
2. 事前学習済みベクトルの利用
GloVeの訓練は、WikipediaやCommon Crawlなどの巨大なコーパスで行われることが多く、その結果得られた事前学習済みベクトル(Pre-trained Vectors)は公開されています。
これらのベクトルは、特定のタスク(例:感情分析、固有表現抽出)に取り組む際の初期埋め込み層として利用されます(転移学習)。これにより、訓練データが少ないタスクでも、単語の意味的な知識を最初から活用し、モデルの性能を向上させることができます。
3. Word2Vecとの比較
項目 | GloVe | Word2Vec |
学習アプローチ | グローバルな共起統計情報(共起確率の比)を利用。 | 局所的な文脈から単語を予測する手法(NNベース)。 |
計算効率 | 共起行列の計算が必要だが、その後の最適化は比較的効率的。 | 大規模データでも効率的だが、ウィンドウサイズ依存。 |
理論的基盤 | 理論的・統計的な基盤が明確。 | 経験的・ヒューリスティックな側面が強い。 |
現在、単語埋め込みの多くは、文脈を考慮できるTransformerベースのモデル(BERTなど)に置き換えられつつありますが、GloVeはシンプルで計算資源の少ない環境でのベースラインモデルとして、依然として重要な位置を占めています。
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