GRASPとは
RASPは、オブジェクト指向設計において、ソフトウェアシステムの責任(Responsibility)を各クラスに適切に割り当てるための、汎用的かつ再利用可能な9つの設計パターンの総称のことです。
GRASPの概要と設計における役割
GRASP(General Responsibility Assignment Software Patterns、一般責任割当ソフトウェアパターン)は、設計の初期段階で、どのオブジェクトにどのような責務を持たせるべきかという重要な意思決定を支援するために導入された一連の原則です。
開発者や設計者が、経験や直感だけでなく、論理的かつ構造化された方法で責任を割り当てる際の指針となります。
GRASPは特定のプログラミング言語や開発プロセスに依存するものではなく、オブジェクト指向設計の基本的な概念に焦点を当てています。
これらのパターンに従うことで、生成されるソフトウェアは、理解しやすく、保守しやすく、再利用性が高く、変更に強いという品質特性(Maintainability, Reusability, Flexibility)を備えることになります。
主な目的は、ソフトウェアの品質を向上させるためのベストプラクティスをパターンとして形式化し、設計の一貫性と堅牢性を確保することです。
GRASPの主要な9つのパターン
GRASPは、主に以下の9つのパターンで構成されています。これらは、ソフトウェア設計者が直面する一般的な問題を解決するための手法を提供します。
1. 情報エキスパート(Information Expert)
- 原則: 処理を行うために必要な情報(データ)を最も多く持つオブジェクトに、その処理に関する責任を割り当てるべきである。
- 目的: 責任とデータ(状態)をカプセル化し、オブジェクト指向の基本的な原則を遵守することで、凝集度を高め、結合度を低く保ちます。
2. クリエイター(Creator)
- 原則: オブジェクト A が、オブジェクト B を生成(または集約)する場合、オブジェクト A に B の生成責任を割り当てるべきである。
- 目的: オブジェクトの生成ロジックを適切に局所化し、システムの複雑な生成パターンへの依存を最小限に抑えます。
3. コントローラ(Controller)
- 原則: システムのイベントを処理する責務を、システム全体の操作を代表する単一のファサードオブジェクト(門番役)またはユースケース全体を管理するオブジェクトに割り当てるべきである。
- 目的: ユーザーインターフェースや外部デバイスからの入力をシステム内の他のオブジェクトに分離し、システム操作の整合性を保ちます。
4. 低い結合度(Low Coupling)
- 原則: あるオブジェクトが、他のオブジェクトに依存する度合い(結合度)を最小限に抑えるように責任を割り当てるべきである。
- 目的: 依存関係が少ないほど、オブジェクトは変更に強く、再利用しやすくなります。
5. 高い凝集度(High Cohesion)
- 原則: あるオブジェクトの責務が、論理的に密接に関連し、そのオブジェクトの目的を達成するための一貫したタスクに集中するように割り当てるべきである。
- 目的: 責務が分散せず集中していると、そのオブジェクトは理解しやすく、保守しやすく、変更の影響範囲が小さくなります。
6. ポリモーフィズム(Polymorphism)
- 原則: 実行時の動作は、条件分岐(
if-else
やswitch-case
)ではなく、ポリモーフィックな操作(異なるクラスの同一メソッド)を使用して実現すべきである。 - 目的: システムに新しい種類(タイプ)の振る舞いを追加する際の柔軟性が向上し、新しいタイプごとに既存のコードを変更する必要がなくなります。
7. 間接性(Indirection)
- 原則: 2つのオブジェクト間に直接的な結合が発生するのを防ぐために、それらの間に仲介役(インターミディエータ)として機能する中間オブジェクトを割り当てるべきである。
- 目的: オブジェクト間の結合度を低く抑え、再利用性を向上させます。
8. 純粋な虚構(Pure Fabrication)
- 原則: 上記のどのパターンにも適合しないが、システムの高凝集度や低結合度を維持するために人工的に導入されたクラスに、特定の責務を割り当てるべきである。
- 目的: データベースアクセスやログ記録など、ドメインの概念に直接対応しない技術的な責務を、ドメインオブジェクトから分離します。
9. 変更の保護(Protected Variations)
- 原則: 頻繁に発生するであろう変化(例:外部APIの変更、データベースの変更)をカプセル化し、不安定な要素を安定したインターフェースの背後に隠すように責務を割り当てるべきである。
- 目的: 変化の影響をシステム内の単一の場所に限定し、システムの変更コストを最小限に抑えます。
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