システムのブラックボックス化:課題・問題点と解決方法
今回は、お客様からご相談の多い”システムのブラックボックス化”問題についてご紹介していきます。
システムのブラックボックス化とは、システムの内部構造や動作原理が不明瞭になり、なぜそのように動作するのか、どのように変更すればいいのかが分からなくなる状態を指します。
これは、担当者が退職したり、ドキュメントが整備されていなかったり、長年の改修によってシステムが複雑化したりすることで発生する企業にとって致命的な問題となりかねない深刻な現象のひとつです。
システムのブラックボックス化問題の解決方法
ブラックボックス化による課題・問題点
1.改修・保守の困難さ
- システムの構造を理解できないため、不具合の原因特定や修正が困難になります。
- 機能追加や変更を行う際、予期せぬエラーが発生するリスクが高まります。
- 結果として、改修・保守コストが増大し、開発期間が長期化する可能性があります。
2.セキュリティリスクの増大
- システムの脆弱性を把握できないため、セキュリティ対策が不十分になる可能性があります。
- サイバー攻撃による被害を受けやすくなるだけでなく、個人情報漏洩などのリスクも高まります。
3.システム刷新の阻害
- 既存システムの構造が不明瞭なため、新しいシステムへの移行が困難になります。
- システム刷新に多大な時間とコストを要し、ビジネスの agility を損なう可能性があります。
システムのブラックボックス化は、システム刷新を様々な形で阻害します。システムの刷新を阻害する問題は、企業にとって致命的になりかねない重大な問題ですので、システム維新を検討する際に直面する具体的な課題・問題点を見ていきましょう。
刷新リスクの増大
ラックボックス化により、現状システムの依存関係や影響範囲を正確に把握できないため、新システム導入後に予期せぬ不具合が発生するリスクが高まります。 また、現状システムのデータ構造が不明確なため、データ移行の際にエラーが発生したり、データが消失したりするデータ移行の失敗リスクがあります。
その他、ブラックボックス化により、セキュリティ対策が不十分なまま新システムに移行してしまう可能性があり、セキュリティリスクが増大する可能性があります。
刷新プロジェクトの長期化
システムの刷新プロジェクトの長期化も大きな問題です。ブラックボックス化により、現状システムに関する情報収集や分析に時間がかかり、意思決定が遅延する可能性があります。
その他、「予期せぬ不具合の発生」であったり、「ドキュメントの整備に時間と労力」がかかったり、「ソースコード解析」に高いスキルが必要になったり等々、システム刷新の阻害する要因がブラックボックス化された見えない内部に散りばめられています。
4.属人化の進行
- 特定の担当者しかシステムを理解できない状態は、属人化を招き、業務効率を低下させます。
- 担当者の退職や異動により、システムの維持・管理が困難になるリスクがあります。
5.コンプライアンス違反のリスク
- システムの動作原理が不明瞭な場合、法令や社内規程に準拠しているかを確認することが困難になります。
- コンプライアンス違反によるペナルティや企業の評判失墜に繋がる可能性があります。
ブラックボックス化の解決方法
ドキュメント整備の徹底
設計書やソースコードのコメント、テスト仕様書など、システムに関するドキュメントを整備し、最新の状態に保つことが重要です。 ドキュメント作成ツールやバージョン管理システムを活用することで、効率的にドキュメントを管理できます。
これは専門的な知識やドキュメント整備の経験がない場合、ドキュメントをどのように整備していったらよいのかがわからず、せっかく整備を始めたにもかかわらず、まったく整備することができなかったという結果を招きかねません。
高度なスキルと経験をもったエンジニアをアサインし、担当されることで、業務の生産性を向上させることができる最適化されたドキュメント環境をつくりあげることができます。
APPSWINGBYでは、リファクタリングプロジェクトを開始する際、ソースコードの解析を実施するのですが、その工程の中でドキュメントの現状調査、解析、整備を実施しています。
ソースコードの可読性向上
ブラックボックス化を解消する為には、コーディング規約を遵守し、変数名や関数名に分かりやすい名前を付けるなど、ソースコードの可読性を高める 努力を行う必要があります。定期的なコードレビューを実施し、コードの品質を維持することも重要です。
必要に応じて、コード診断を実施し、適切なリファクタリングを行うことでソースコードの可読性は大幅に向上します。
システムのモジュール化
システムを独立性の高いモジュールに分割することで、個々のモジュールの理解が容易になり、改修・保守の効率が向上します。 モジュール間のインターフェースを明確に定義することで、影響範囲を限定し、予期せぬエラーの発生を抑制できます。
システムのモジュール化もリファクタリングプロジェクトで実施することが多い工程のひとつです。システムをモジュール化することで、システムをシンプルに、理解しやすく、早期に問題を発見でき解決できるシステムをつくりあげることが重要です。
バージョン管理システムの導入
ソースコードやドキュメントの変更履歴を管理することで、過去の状態に戻したり、変更内容を比較したりすることが容易になります。
Git などのバージョン管理システムを積極的に活用することで、複数人での開発を効率的に行うことができ、万が一の際にも素早く適切に問題に対応することができます。
担当者間での情報共有
定期的なミーティングや情報共有ツールを活用し、担当者間でシステムに関する情報を共有することが重要です。
システムの構造や動作原理、改修履歴などを共有することで、属人化を防ぎ、システムのブラックボックス化を抑制できます。
外部人材の活用
システムのブラックボックス化が深刻な場合は、外部の専門家にシステムの解析やドキュメント作成を依頼することも有効です。 専門家の知見を活用することで、効率的にブラックボックス化を解消しましょう。
関連サービス:ITアドバイザリー/情報技術支援
システム刷新の検討
ブラックボックス化が解消できないほどシステムが老朽化している場合は、システム刷新(システムのリプレース)を検討する必要があります。 最新の技術やアーキテクチャを採用することで、システムの可視性・保守性を向上させることができます。
システムのブラックボックス化は、企業にとって大きなリスクとなります。ブラックボックス化による阻害要因を理解し、適切な対策を講じることで、ブラックボックス化を予防・解消し、システムの安定稼働、セキュリティ確保、そしてビジネスの成長に貢献することができます。
APPSWINGBYでは、システムのブラックボックス化の解決を行う為に、最適な技術と体制をご提案しています。
システムのリプレースからリファクタリング、クラウドネイティブなシステムをつくり上げる為のリアーキテクチャなど、現在稼働しているレガシーシステムのシステム維新に最適なご提案をおこなっています。お気軽にご相談ください。
リファクタリングエキスパートが
ソースコードを最適化!
APPSWINGBYのリファクタリングサービスでは、外部のふるまいを変更することなくコードの明瞭性を向上させ、不必要な複雑性を排除し、コードを最適な状態にします。これにより、保守性が向上し、将来の変更や追加が容易になります。また、最新の開発ベストプラクティスに基づいてコードをアップデートすることで、セキュリティの向上やパフォーマンスの最適化も実現します。
この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数
監修
株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。