真のクラウドネイティブなシステムを実現するためのリアーキテクチャ
オンプレミスからクラウドへ移行する際、クラウド移行の初期段階で採用する「リフト&シフト(LinuxやWindowsServerなどのサーバーを単純にEC2上に移行する)」を採用する企業が多く、その後も「リフト&シフト」したシステムアーキテクチャのままクラウド上でシステムが稼働し続けているといった企業が多くいらっしゃいます。
その結果、毎月かかるクラウド利用料金が増え続け、コスト増大がシステム継続の大きな問題になったり、オンプレミスの時と同じような(もしくはオンプレミスの時以上の)管理工数とコストがかかっていたりするケースが非常に多く発生しています。これらのシステムの多くが、残念ながらクラウドサービスで活用すべき多くのメリットを活用できていない状態にあります。
今回は、「リフト&シフト」した状態のクラウド上のシステムを”真のクラウドネイティブなシステムを実現するためのリアーキテクチャ“について簡単にご紹介していきます。
クラウドネイティブなシステムアーキテクチャに移行するメリット
まず最初にクラウドネイティブなシステムアーキテクチャに移行するメリットについてご紹介します。
AWSやGCPといったクラウドサービスではシステムを安定して稼働させる為の様々なサービスが提供されています。以下でリストした内容はクラウドサービスを上手に活用することにより得られる代表的なメリットです。
- 柔軟性と拡張性の大幅な向上: クラウドネイティブなアーキテクチャは、需要の変化に応じてリソースを迅速かつ自動的にスケールアップまたはスケールダウンできます。これにより、需要の急増にも対応でき、無駄なリソースを削減できます。
- 可用性と耐障害性の強化: クラウドネイティブなシステムは、複数の可用性ゾーンにまたがってリソースを分散し、自動フェイルオーバー機能を備えています。これにより、単一障害点の影響を最小限に抑え、システム全体の可用性を高めます。
- 開発とデプロイの迅速化: クラウドネイティブなアーキテクチャは、マイクロサービス、コンテナ、CI/CD パイプラインなどの技術を活用し、開発とデプロイのプロセスを大幅に効率化します。これにより、新機能のリリースサイクルを短縮し、市場の変化に迅速に対応できます。
- コスト効率の向上: クラウドネイティブなアーキテクチャは、従量課金制のクラウドサービスを最大限に活用し、必要なリソースのみを使用します。これにより、従来のオンプレミス環境と比較して、大幅なコスト削減を実現できます。
- イノベーションの加速: クラウドネイティブなアーキテクチャは、最新のクラウド技術やマネージドサービスを積極的に活用することで、企業のイノベーションを加速させます。これにより、新しいビジネスチャンスを創出し、競争優位性を獲得できます。
クラウドネイティブへの移行の重要性
クラウドネイティブなアーキテクチャへの移行は、単なる技術的な変更ではなく、企業のビジネス変革を推進する重要なステップです。上手にクラウドネイティブなシステムを構築し、移行することで、企業は市場の変化に迅速に対応することができるようになり、その結果として、顧客体験の向上や市場における競争力を強化することができます。
デジタル時代において、クラウドネイティブへの移行はもはや選択肢ではなく、企業の成長と成功にとって不可欠な要素となっています。
リアーキテクチャとは
ここでリアーキテクチャとは一体どのようなものなのか?という疑問を解消する為に、”リアーキテクチャ”についてご紹介しておきます。
リアーキテクチャとは、既存のシステムのアーキテクチャを根本的に再設計・再構築することを指します。これは、単にコードを書き直したり機能を追加するだけでなく、システム全体の構造、コンポーネント間の関係、データの流れなどを再考し、より良い設計へと変革させることを意味します。
なぜリアーキテクチャが必要なのか?
長年の運用や機能追加により、システムのコードや設計が複雑化・老朽化し、保守性や拡張性が低下することがあります。これを「技術的負債」と呼びますが、リアーキテクチャはこの負債を解消し、システムの健全性を回復させることができます。
また、ビジネス環境の変化や新たな技術の登場により、既存のシステムでは対応できない要件が生じることがあります。リアーキテクチャによって最新の状態に保たれたシステムによって、将来のニーズにも柔軟且つ短期間で対応できるようなシステム構成へつくりかえることが可能になります。
その他、既存のシステムでは、処理速度や応答性が遅く、ユーザー体験を損なっているケースなどに対し、リアーキテクチャによって、システムのボトルネックを解消し、パフォーマンスを大幅に向上させることができたり、リアーキテクチャを行い、クラウドネイティブな設計にすることで、スケーラビリティ、可用性、コスト効率などを最大限に引き出すことができます。
リアーキテクチャの主なアプローチ
リアーキテクチャを行う際のアプローチ方法はシステムやプロジェクトの状況によって変わってくるため、様々な方法を検討した上で最適な解を見つけていくことになるのですが、リアーキテクチャ実施の際に行われる代表的なアプローチを3つご紹介します。
- モノリシックからマイクロサービスへ: 巨大な一枚岩のシステム(モノリシック)を、独立性の高い小さなサービス(マイクロサービス)に分割することで、開発・運用・拡張の柔軟性を高めます。
- レガシー技術から最新技術へ: 古い技術やフレームワークを、最新の技術スタックに置き換えることで、開発効率やパフォーマンスを向上させ、セキュリティリスクを軽減します。
- データベースの再設計: データベースのスキーマやクエリを最適化することで、パフォーマンスを向上させ、データ処理の効率を高めます。
リアーキテクチャの注意点
リアーキテクチャには、当たり前のことではありますがコストと時間がかかります。その為、リアーキテクチャを実施する際には、十分な計画の策定や現状調査といった準備工程を入れておくことが重要になります。
また、システム全体の変更を伴うため、予期せぬ問題が発生するリスクがあります。プロジェクトの計画を作る際には、段階的な移行(切替え)や詳細なテスト設計とテストを徹底する必要があります。
ビジネスへの影響についても考慮しておく必要があります。 リアーキテクチャ中は、既存の機能に影響が出る可能性がありますので、影響が予想されるだろう機能の影響(範囲)を最小限に抑えつつ、ビジネスへの影響を最小限に抑える工夫を検討した上で、影響が予想される各部署との調整などを行います。
まとめ
リアーキテクチャは、既存システムを根本的に改善し、将来のビジネス成長を支えるための重要な取り組みです。技術的負債の解消、新たなビジネス要件への対応、パフォーマンス向上、クラウドネイティブ化など、多くのメリットをもたらします。しかし、コスト、時間、リスクなどを考慮し、慎重に進める必要があります。
もし、具体的なリアーキテクチャの事例や、さらに詳しい情報が必要でしたら、お気軽にご質問ください。
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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
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情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数
監修
株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。