なぜ、オフショア開発プロジェクトは失敗するのか?(2)

前回は、オフショア開発のメリットやオフショア開発に向いている開発プロジェクトなどについて、ご紹介しました。一見良いとこだからのオフショア開発ですが、何故か多くのお客様から「オフショア開発を利用してみたのだが、失敗した。散々な目にあった。」といった声が聞こえています。今回は、オフショア開発プロジェクトが失敗してしまう原因について、過去の事例も交えながらご紹介していきます。

オフショア開発失敗の原因 その1.言語の壁とコミュニケーション

オフショア(offshore)を直訳すると、岸(shore)から離れ(off)、海に向かう陸風のことですが、ビジネス用語では、「海外で」を意味する言葉になります。

オフショア開発とは、「海外でソフトウエア開発を行う」こととなります。当然、海外でソフトウエア開発を行うわけですから、日本とオフショア開発サービスを提供する人々との間には、「言語の違い」が存在することになります。

オフショア開発サービスを提供する海外の企業側は、当然この違いを認識しており、オフショア開発サービスを提供している企業では、発注者である日本側と海外在住の開発者とのやりとりを通訳してくれる、「ブリッジエンジニア」と呼ばれるエンジニア??をアサインします。

ブリッジエンジニアは、エンドユーザーである企業の担当者と海外の開発者との橋渡し役

ブリッジエンジニアは、エンドユーザーである企業の担当者と海外の開発者との橋渡し役となるなる存在ですので、日本語での会話、コミュニケーション能力、その他にも、開発者へ開発すべきシステムやアプリの仕様を的確に伝えるための技術的な知識が求められます。

そんな役割を担ったブリッジエンジニアですが、残念ながら理想と現実の差は想像以上に大きく、プロジェクトを進めていくと様々な問題が発生します。

ブリッジエンジニアの日本語能力問題

ブリッジエンジニアは、エンドユーザーである企業の担当者と海外の開発者との橋渡し役となるなる存在とご紹介しましたが、海外に在住しているブリッジエンジニアの日本語能力はそれほど高くありません。日常会話やプロジェクトの概要のやり取りを行う程度であれば全く問題ない程度の日本語能力を身につけているブリッジエンジニアがほとんどですが、いざ、システムやアプリを開発するとなった場合、どうしても、システムの細かな仕様について話し合う必要があり、多くの場合、「日本語での正確な情報の伝達ができない。(本人は情報の伝達ができていると思っている。)」「認識のズレが度々発生する。」「日本語で説明しても、そもそも伝わらない。」「ブリッジエンジニアの日本語が聞き取れない」といった問題が頻発します。

日本語能力・コミュニケーション能力に長けたブリッジエンジニアを育成し、発注側の企業とスムーズなコミュニケーションや正確な情報のやりとりができるサービスを提供するのが必要最低限に思われる方も多いと思いますが、残念ながら、これらのスキルを兼ねそろえたブリッジエンジニアを育成できているオフショア開発企業は、少ないのが現状です。

オフショア開発失敗の原因 その2.ブリッジエンジニアのコスト

ブリッジエンジニアとは、「エンドユーザーである企業の担当者と海外の開発者との橋渡しになる存在」とご紹介しました。簡単に言えば、通訳、情報の伝達者としての役割となりますので、発注企業としては、開発人員以外のコストはあまりかけてたくないのが本音といったところなのでしょうが、多くのオフショア企業では、実装を担当する開発エンジニアよりもブリッジエンジニアの月額単価のほうが高い金額で見積りしてくる傾向にあります。

高いスキルや経験のある開発者に高いコストを支払うことは納得できる一方で、日本語を話しすることができる開発者がいれば必要のないブリッジエンジニアに、高いコストを支払わなければならない現状に納得がいかないお客様も多いようです。

高い人月単価の割にコミュニケーションが上手くいかない

「開発者よりも高い単価を要求してくるのだから、日本語能力も高く、技術にも詳しい、開発者をうまくマネジメントしてくれるはず。」と考えがちなブリッジエンジニアですが、残念ながら、現実はそう上手くいかないケースがほとんどです。

エンジニアとの架け橋になってくれていないブリッジエンジニアに、開発者よりも高いコスト要求してくるオフショア企業。果たして高い単価のブリッジエンジニアは、オフショア開発プロジェクトの中でどれだけ効果的に動いてくれるのでしょうか?

お客様のご希望で、APPSWINGBYで過去に行ったオフショア開発プロジェクトでは、やはり担当して頂いたブリッジエンジニアの日本語能力に難があり、「日本語での会話が聞き取りにくい。」「開発するために必要な会話が成立しない」「言いたいことが伝わらない」ということがありました。

「日本語での会話が聞き取りにくい。」というのはネイティブではありませんので、ある程度仕方がない部分があるのですが、(発注側の)担当者がわかりやすい日本語を選択し、何度も繰り返し、開発したいサービスの内容やシステムの仕様を説明しても、ブリッジエンジニアが誤った解釈をしてしまい、何度も何度も修正がが入り、時間だけが過ぎていき、稼働した時間ということで結果は出てこないにも関わらず請求書だけが送られてくる、といったといった結果になったことがありました。

正確な情報を伝えることができない

正確な情報を伝えることができないブリッジエンジニアに、何度も説明を繰り返しても、誤った情報を自国の開発者に伝えてしまい改善する傾向が見られませんでしたので、本来望む形ではありませんでしたが、週に1度行っていた定例ミーティングの時だけ進捗の報告とスケジュールだけの内容をブリッジエンジニアに通訳をしてもらい、海外の開発者とはコミュニケーションツールを使って直接、英語で指示やQ&Aを行うことにしました。

残念ながらブリッジエンジニアへ支払っていたコストは結果的に無駄になってしまったのですが、高い勉強代を支払ったということで良しとしました。

もし、どうしてもオフショア開発を利用しなければならないプロジェクトの場合には、開発者に「正しく」「正確に」「開発に必要な技術情報を伝える」ことができるブリッジエンジニアであるかどうかをオンラインミーティングを活用した面談等で、しっかりと確認されることをおすすめしています。

次の頁では、過去のオフショア開発の気になる品質について、ご紹介したいと思います。