クラウドコスト増加の根本原因とメカニズム

クラウドコスト増加の根本原因とメカニズム

前回は「クラウドコストの増加に対する解決策」と題して、クラウドコストの実態からインパクト分析、コストの管理手法についてご紹介しました。

今回は、その続き。クラウドコスト増加の根本について考察していきます。

それではさっそくはじめていきましょう!

リソース使用量の可視化不足による無駄遣い

クラウドコスト増加の最大の要因の一つが、リソース使用量の可視化不足による無駄遣いです。2022年に企業がクラウドに投じた約4,900億ドルのうち、推定30%にあたる1,470億ドルが無駄になっているという衝撃的な事実が明らかになっています。

未使用・アイドルリソースの深刻な実態

調査回答者は「クラウド支出のほぼ半分が未使用またはアイドル状態のリソースに無駄遣いされている」と推定しています。

この状況は以下の具体的な問題として現れています。

  1. 開発・テスト環境の24時間稼働による年間数百万円の無駄
  2. 本番移行後に削除されない検証用インスタンス
  3. 過剰にプロビジョニングされたデータベースやストレージ
  4. ピーク時に合わせた固定サイジングによる非効率性

管理画面を開いてみると、ずらっとならんだインスタンスの数々。

何に使用しているかわからないので、削除することもできない・・・

クラウドプロバイダーの隠れた戦略なのか?!?と思えるくらい、あっという間にインスタンスが増殖していきます。これがクラウドコストの大きな原因です。

可視化不足の技術的要因

多くの企業が陥る可視化不足の根本原因は以下の通りです。

問題領域具体的な課題財務影響
リソースタグの不備プロジェクト・部門・環境の識別不能月次コスト分析の精度50%以下
監視設定の欠如CPU使用率・メモリ使用率の未監視過剰プロビジョニングによる30-40%のコスト増
アラート機能の未活用異常コスト発生の即座検知不能月単位での数百万円の損失継続

マルチクラウド環境における複雑性

企業がAWS、Azure、Google Cloudを併用するマルチクラウド環境では、可視化の複雑性がさらに増大します。各クラウドプロバイダーが提供する課金体系やメトリクスの違いにより、統合的なコスト把握が困難となり、全体最適化が阻害されています。

実際の企業事例では、開発チームが検証用に起動したAWSのr5.24xlargeインスタンス(月額約100万円)を3ヶ月間放置し、発見時には300万円の無駄なコストが発生していたケースが報告されています。

アーキテクチャ設計における非効率性

システムアーキテクチャの不適切な設計がクラウドコスト増加の重要な要因となっています。

特に、レガシーシステムのクラウド移行において「リフト・アンド・シフト」アプローチを採用した企業で深刻な問題が発生しています。

モノリシック vs マイクロサービスのコスト比較

アーキテクチャ選択がコストに与える影響は極めて大きく、適切でない選択により大幅なコスト増加が発生します。

非効率なアーキテクチャパターンの代表例

  1. 過度な分散化による オーバーヘッド
    • 必要以上にマイクロサービス化された小規模アプリケーション
    • サービス間通信の増大によるネットワークコスト増加
    • 各サービスの独立したデータベース・キャッシュ・ログ管理による重複コスト
  2. スケーリング設計の不備
    • 水平スケーリングが困難な単一インスタンス依存の設計
    • データベースボトルネックによる全体性能劣化とリソース浪費
    • 負荷分散設定の不適切さによるホットスポット発生
  3. データアーキテクチャの非効率性
    • 非正規化されていないデータベース設計による処理能力低下
    • 不適切なインデックス設計による検索処理の重さ
    • データ転送最適化の欠如による通信コスト増加

簡単に代表例をまとめてみましたが、如何に不適切なアーキテクチャ設計がクラウドコストの増加にかかわっているかが分かると思います。

クラウドネイティブ設計原則の未適用

また、オンプレミスからクラウドに移行する際に、急激な変化を恐れる余り、ついついやってしまいがちなのが、オンプレミス設計思想をクラウドに持ち込むことです。

リスクを避けたいのは当然の考えですが、異なる基盤の上で構築することを前提に構築することでクラウドコストの不要な増加を避けることができます。

オンプレミス設計思想をクラウドに持ち込むこと発生する問題をリストにしてみました。

  • サーバーレスアーキテクチャの活用不足による固定コスト負担
  • コンテナ技術の不適切な使用による リソース効率性の低下
  • クラウドプロバイダー固有のマネージドサービス未活用による運用コスト増加

レガシーシステム移行における設計課題

特に基幹システムのクラウド移行では、以下の設計上の問題が頻発しています…

次回は、「レガシーシステム移行における設計課題」の続きから、「組織体制とガバナンス不備による野放し状態」について、解説していきます。

関連サービス:クラウドソリューション

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
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