ゼロ知識証明(ゼロナレッジ証明)とは?

今回は「ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof, ZKP)」についての解説記事です。
現代の暗号学において最も革新的で重要な概念の一つと言われるのが「ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof, ZKP)」です。この技術は、秘密情報を一切開示することなく、その情報に関する特定の事実を証明することを可能にするとし、注目を集めているのです。
本記事では、ゼロ知識証明の基本概念から実装の詳細、実用的な応用まで、技術者向けに包括的に解説します。
では、さっそくはじめていきましょう!
ゼロ知識証明の基本概念
定義と直感的理解
ゼロ知識証明とは、証明者(Prover)が検証者(Verifier)に対して、ある秘密の知識を持っていることを証明するプロトコルです。
より分かりやすく言い換えると、「私はパスワードを知っています」ということを、実際のパスワードを相手に教えることなく証明する方法です。この際、秘密の知識自体は一切開示されません。
日常的な例で考えてみましょう。
- 従来の証明方法: 「私は家の鍵を持っています」→ 実際に鍵を見せる
- ゼロ知識証明: 「私は家の鍵を持っています」→ 鍵は見せずに、家のドアを開けて見せる
この例では、ドアが開いたという事実により鍵を持っていることは証明されますが、鍵そのものの形や種類などの具体的な情報は一切相手に伝わりません。
例として古典的な「アリババの”洞窟”」の例を使って解説してみます。登場人物はアリスとボブの二人です。
- 証明者(Prover): 秘密を知っていると主張する人(アリス)
- 検証者(Verifier): その主張が本当かどうかを確認したい人(ボブ)
アリババの洞窟には環状の通路があり、途中に魔法の扉があります。
証明者アリスは扉を開ける呪文を知っていると主張しています。
検証者ボブは、アリスが呪文を知っていることを、呪文自体を聞くことなく確認したいのです。
プロトコル:
1. アリスがボブに見えない状態で洞窟に入り、左右どちらかの道を選ぶ
2. ボブがアリスに「左の道から出てきて」と要求する
3. アリスが要求された道から出てくることができれば、扉を開けられる証拠となる
4. このプロセスを複数回繰り返す
何となくふわっとした例になってしまいましたが、、、ここで重要なのは、インターネット上で個人情報やパスワードを守りながら、正当なユーザーであることを証明する場面で威力を発揮するという点です。
現実社会では、”年齢確認の際に「私は18歳以上です」ということを、実際の生年月日を教えることなく証明する“といったシーンで利用されることが多くなるでしょう。
数学的定義
ゼロ知識証明は以下の3つの性質を満たす必要があります。この3つの定義は、ゼロ知識証明の基礎となる考え方です。
1. 完全性(Completeness): 証明者が真に秘密を知っている場合、正直な検証者は高い確率で証明を受け入れる。
2. 健全性(Soundness):証明者が秘密を知らない場合、どんな戦略を使っても検証者を騙すことはできない(または無視できるほど低い確率でしか騙せない)。
3. ゼロ知識性(Zero-Knowledge) 証明から、秘密に関する情報は一切漏洩しない。
技術的分類と種類
次に、ゼロ知識証明の技術的分類と種類について、見ていきましょう。
ゼロ知識証明は、その特性や実装方法によって複数の分類軸で整理することができます。数多くの分類方法が存在しますが、実際のシステム設計や選択において最も重要な判断基準となるのがコミュニケーション方式です。
コミュニケーション方式とは
コミュニケーション方式とは、ゼロ知識証明において証明者(Prover)と検証者(Verifier)がどのような手順で情報をやり取りするかを定義するものです。
基本的な流れの理解
従来の証明では「秘密を直接見せる」という単純な1回のやり取りで済みますが、ゼロ知識証明では「秘密を隠したまま知っていることを証明する」という複雑なタスクを実現する必要があります。
このため、証明者と検証者の間で以下のような戦略的なやり取りが発生します。
- 証明者: 「私は秘密Xを知っています」と主張
- 検証者: 「本当に知っているなら、このチャレンジに答えてください」と問題を出す
- 証明者: 秘密Xを使ってチャレンジに回答
- 検証者: 回答を検証して、証明者が本当に秘密を知っているか判断
なぜ複数回のやり取りが必要なのか
秘密を直接見せられない以上、検証者は「証明者が本当に知っているのか、それとも偶然当てているだけなのか」を区別する必要があります。
そのため、ゼロ知識証明では、
- 1回だけのやり取り: 偶然当たる可能性が高い(信頼性が低い)
- 複数回のやり取り: 毎回正解する確率は指数的に減少(信頼性が向上)
と判断しているのです。
ただし、暗号学的な工夫により、この複数回のやり取りを1回にまとめることも可能です。これがコミュニケーション方式による分類の核心となります。
なぜコミュニケーション方式が最重要なのか
証明者と検証者の間でどのようにやり取りを行うかは、システムの根本的な設計を決定します。
具体的には、
- インタラクティブ(対話型): 証明者と検証者が複数回やり取りする
- 非インタラクティブ(非対話型): 証明者が一度だけ証明を送信する
このやり取りの回数の違いは、一見小さな差に見えますが、実際には以下のようにシステム全体の性能や実用性を大きく左右します。以下に”システム”への影響が多い4つのポイントをまとめてみました。
方式の違いによるシステムへの影響
1. パフォーマンスへの影響
- インタラクティブ:複数回の通信が必要 → ネットワーク遅延が累積し、証明時間が長くなる
- 非インタラクティブ:一度の通信で完結 → 高速な証明が可能
2. 実用性への影響
- インタラクティブ:証明者と検証者が同時にオンラインである必要 → リアルタイムでしか使用できない
- 非インタラクティブ:証明を事前に作成して保存可能 → オフライン証明やバッチ処理が可能
3. スケーラビリティへの影響
- インタラクティブ:1人の証明者は同時に1人の検証者としか対話できない → 大規模システムでボトルネックになる
- 非インタラクティブ:1つの証明を多数の検証者が独立に検証可能 → 大規模展開に適している
4. セキュリティモデルへの影響
- インタラクティブ:ランダムチャレンジが検証者から直接生成される → より強いセキュリティ保証
- 非インタラクティブ:ランダムオラクルモデルなどの追加仮定が必要 → 異なるセキュリティモデルが前提
影響の大きい4つの観点をあげましたが、コミュニケーション方式の選択は、システム全体のアーキテクチャと運用方法を根本的に決定するものとなるのです。
解説記事「ゼロ知識証明(ゼロナレッジ証明)とは?」の続きは
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この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
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