ソースコードが消えた… 見えない負債を価値へ変える

「ソースコードが消えた・・・」「ソースコードを探しても見つからない」という誰もが信じられてないような事態が発生したら、どうしますか?

現実に稼働中のシステムを支えるソースコードが失われたり、アクセスできてもその内容が人間はおろかAIでさえも理解不能なほど複雑化していたりするケースは少なくありません。

これは単なる技術的な問題にとどまらず、貴社の事業継続、競争優位性、そして未来の成長にまで深刻な影響を及ぼす極めて重大な問題であり、企業にとって大きな「見えない負債」となり得ます。

本稿では、「ソースコードが消えてなくなってしまった場合の対処法」や「ソースコードの消失」が貴社のビジネスにどのようなリスクをもたらすのか、この「見えない負債」をいかにして「価値ある資産」へと転換できるのかについての知見や対処法、最新の事例を交えて解説してまいります。

ソースコード消失が引き起こす事業リスク

ソースコードの消失や、その内容が理解不能な状態に陥ることは、企業にとって想像以上の事業リスクをはらんでいます。具体的には、以下のような深刻な問題を引き起こす可能性があります。

1. 事業継続性の危機

ソースコードが消えてなくなった状態になると、システムに不具合が発生しても、原因特定や改修が極めて困難になります。

仮に、あるタイミングでシステムで障害が発生し、一部のソースコードが消失していた場合、一時的に取引停止に追い込まれ、システムの復旧までに多大な時間がかかってしまったら、企業としての信頼は失墜し、顧客離れに直結することになります。

システム障害発生時の復旧困難性

システム障害発生時の復旧困難性

稼働中のシステムに障害が発生した際、その復旧は企業にとって最優先事項です。しかし、ソースコードが手元にない、あるいは、あったとしてもその内容が複雑すぎて誰も理解できない状態であれば、復旧作業は絶望的なまでに困難を極めます。これは単に「時間がかかる」という問題に留まらず、貴社のビジネスそのものに壊滅的な影響を与えかねません。

まず、障害の原因特定が不可能になります。システムがなぜ動かないのか、どの部分で問題が発生しているのかを突き止めるためには、ソースコードを詳細に解析し、データフローや処理ロジックを追う必要があります。

ソースコードがなければ、開発者は手探りで膨大なログファイルを読み解くしかなく、これはまさに「暗闇の中で針を探す」ような作業です。結果として、原因特定に数日、あるいは数週間を要することも珍しくありません。

原因が特定できない、あるいは特定できても修正箇所がわからない状況では、根本的な解決策を講じることができません。

対症療法的にシステムを再起動する、一時的なパッチを当てる、といった対応しか取れず、同じ障害が繰り返し発生するリスクを抱え続けることになります。これは、顧客からの信頼を損ない、企業イメージを著しく低下させる要因となります。

さらに深刻なのは、ビジネス機会の損失です。

システムが停止している間、オンラインストアでの販売機会が失われたり、顧客からの問い合わせに対応できなかったり、基幹業務が完全にストップしたりします。たとえば、ある大手航空会社の予約システムが数時間ダウンしただけで、数億円規模の売上機会が消失した事例があります。また、金融機関のシステム障害は、顧客の資産運用に直接的な影響を与え、訴訟問題に発展するケースも存在します。

このような状況は、企業のレピュテーション(評判)にも大きな打撃を与えます。システムが安定稼働しない企業は、顧客だけでなく、パートナー企業や投資家からも信頼を失いかねません。最悪の場合、事業の継続自体が危ぶまれる事態に発展する可能性も否定できません。

このように、ソースコードの消失や読解困難な状態は、システム障害発生時における復旧作業を極めて困難にし、結果として企業の存続を脅かすレベルの事業リスクを引き起こすのです。

2. 機能追加・改修の停滞

ビジネス環境の変化に対応するためには、システムは常に進化し続ける必要があります。しかし、ソースコードがない、あるいは理解できない状態では、新たな機能の追加や既存機能の改修が事実上不可能になります。これにより、競合他社に先を越され、市場での競争力を失うリスクが高まります。

例えば、スタートアップ企業などで、顧客のニーズに合わせた新機能を迅速にリリースできなかったばっかりに、市場シェアを大幅に失ったという話はよくある話です・・・。

3. セキュリティリスクの増大

セキュリティパッチの適用や脆弱性の修正も、ソースコードなしには不可能です。これにより、サイバー攻撃のリスクが増大し、機密情報の漏洩やシステムへの不正侵入など、企業に壊滅的な被害をもたらす可能性があります。過去には、様々な古いシステムの脆弱性が放置されたことによって、サイバー攻撃の的となり、大規模なデータ漏洩が発生、、企業が多額の損失が発生したという事例が多く発生しています。

読解困難、乱雑なコードベースが引き起こす問題の根源

読解困難、乱雑なコードベースが引き起こす問題の根源

ソースコードの「消失」だけでなく、たとえ物理的に存在してもその容が理解不能な「乱雑なコードベース」もまた、企業にとって深刻な問題を引き起こします。これは、多くの場合、以下のような複数の要因が絡み合って発生します。

1. 場当たり的な改修の積み重ね

期的な機能追加やバグ修正が繰り返され、設計思想が失われていくことでコードは次第に複雑化します。これは、まるで継ぎ接ぎだらけの古い建物のようです。

短期的な視点での開発と技術的負債の蓄積

納期優先のプレッシャーや、場当たり的な改修を繰り返すことで、コードは徐々に複雑化し、整合性を失っていきます。これは「技術的負債」として蓄積され、まるで雪だるま式に増え続ける借金のように、将来的な開発コストを増大させ、システムの保守・運用を困難にします。

2. ドキュメントの不足・陳腐化

システムの仕様や設計に関するドキュメントが整備されていない、あるいは実際のコードと乖離している場合、コードの解読はさらに困難になります。

3. 知識とドキュメントの属人化

開発の過程で適切なドキュメントが作成されなかったり更新が滞ったりすると、特定の開発者しかシステムの全貌を理解できない「知識の属人化」が進行します。

結果、その開発者が異動や退職をした場合、システムはまさにブラックボックスと化し、他の誰も手が出せない状態に陥ります。

ソースコード消失とは関係ありませんが、、、

「ジェンキンスおじさん」いませんか?^^;

属人化は企業にとって本当に深刻な問題です。。

3. 開発標準の欠如と品質管理の不徹底

統一されたコーディング規約や設計標準がない場合、開発者ごとにコードの書き方が異なり、一貫性のないコードベースが形成されます。また、コードレビューの不足やテストプロセスの不徹底も、品質の低い、読解困難なコードを量産する原因となります。

4. リファクタリングの不足

日々の業務に追われ、コードの品質改善(リファクタリング)が後回しにされることで、徐々にコードベースは劣化していきます。

目の前の機能追加やバグ修正にばかり目が行きがちになると、コードの品質改善である「リファクタリング」は後回しにされがちです。これは、企業が直面する「見えない負債」の最も一般的な原因の一つと言えるでしょう。

例えるなら、定期的なメンテナンスを怠った自動車に似ています。新車のうちは快調でも、オイル交換や部品の点検を怠れば、いずれ燃費が悪化し、故障が増え、最終的には動かなくなってしまいます。ソフトウェアのコードベースも同様です。

リファクタリングとは、外部から見たシステムの振る舞いを変えずに、内部のコード構造を改善する作業です。具体的には、冗長なコードの削除、複雑なロジックの単純化、命名規則の統一、適切な関数の分割などを行います。これらを怠ると、コードは徐々に複雑さを増し、以下のような悪循環に陥ります。

  • 開発効率の低下: 複雑で読みにくいコードは、新しい機能を追加したり、既存のバグを修正したりする際に、開発者がコードを理解するのに膨大な時間を要します。その結果、開発スピードが落ち、リリースサイクルが長期化します。ある調査によると、技術的負債が大きいプロジェクトでは、開発効率が最大で50%低下するというデータも存在します。
  • バグの発生率増加: 入り組んだコードは、ちょっとした変更でも予期せぬ副作用を生みやすく、新たなバグを誘発しやすくなります。バグが増えれば増えるほど、その修正に費やす時間とコストが増大し、本来注力すべき開発が滞ってしまいます。
  • 新規開発者の参入障壁の高さ: 新しい開発者がプロジェクトに加わった際、カオスなコードベースは理解の大きな妨げとなります。システムの全体像を把握するまでに時間がかかり、即戦力として機能するまでに膨大な教育コストと期間を要します。結果として、人材の定着率にも悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 技術的負債の増大: リファクタリングをせずに放置されたコードは、次第に「触りたくないコード」へと変化していきます。その結果、さらに場当たり的な修正が加えられ、負債が雪だるま式に増えていく悪循環に陥ります。最終的には、小さな改修ですら莫大なコストとリスクを伴うようになり、システムの陳腐化を早めてしまいます。

このように、日々の業務に追われてリファクタリングを怠ることは、短期的なコスト削減に見えて、実際には長期的な開発コストの増大、品質の低下、そしてビジネス機会の損失へと繋がる「見えない負債」を蓄積していることに他なりません。将来を見据えた持続可能なソフトウェア開発のためには、リファクタリングを単なる「手直し」ではなく、戦略的な「投資」と捉え、継続的に実施することが不可欠なのです。

関連サービス:リアファクタリング

古い技術やシステムの放置

レガシーシステムが現代のビジネスニーズに合わなくなり、新しい技術への移行が困難な場合も、コードベースの乱雑化に拍車がかかります。古い技術スタックで書かれたコードは、最新のフレームワークやツールと互換性がなく、新しい開発者が理解するのにも時間がかかります。

これらの問題は、一度顕在化すると容易に解決できるものではありません。しかし、だからこそ、専門的な知識と技術を持つ外部のパートナーの力を借りて、この「見えない負債」を計画的に解消し、未来のビジネスを支える「価値ある資産」へと変革していくことが、今日の企業には強く求められているのです。

これらの問題は、一度顕在化すると解決に多大なコストと時間を要します。ソースコードの消失やソースコードが読解困難な状況な陥ってしまい次のアクションを起こすことができなくなってしまったなどでお悩みの場合は、APPSWINGBYまでご連絡ください。、貴社の「見えない負債」を「新たな価値」へと転換させるためのソリューションを提供しています。

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。