常態化するデジタル赤字と急激な円安圧力によるクラウド破産問題
ここ数か月の間に、「デジタル赤字」という言葉がメディアで頻繁に取り上げられるようになりました。
つい先日も、「デジタル赤字」がニュースとして取り上げられ、「デジタル赤字」が常態化しつつあり、急な円安の影響が大きい。「デジタル赤字」は拡大し続け、2023年では海外への支払いが年間3兆円を超える といった内容が報道されていました。今回は、デジタル赤字とは何か、そしてその原因、デジタル赤字への対策についてご紹介していきます。
「デジタル赤字」とは
デジタル赤字というキーワードは、日本の国際収支を対象にしたもので、日本が海外から得る収益よりも海外に支払っているお金のほうが圧倒的に多い状況をデジタル赤字と呼んでいます。
デジタル赤字の主な原因と言われているのが、企業や個人が利用しているGAFAMを代表とした海外のビッグテックのサービス利用料です。
働く多くの人々は、Google WorkspaceやOffice 365を利用し、メールの送信や文章の作成、データの保存など日常業務をこれらの海外サービスに依存しています。また、クライアントノードがアクセスするサーバ側では、AWSやGCP、Azureなどのクラウドサービスの上にサーバ、つまりシステムを構築しているわけですので、クライアントでの処理からサーバー処理までのすべてをGAFAMを代表とした海外のビッグテックのサービスに依存していますので、今後も「デジタル赤字」が拡大し続けていくことになるのでしょう。
円安によるクラウド破産問題
「デジタル赤字」問題もコスト負担が常態化し、拡大し続ける状態になっていますので大きな問題として取り上げられていますが、企業においては急激な円安による「クラウド破産問題」が大きな問題になっています。
今年に入り、急激な円安が進みました。その影響で、サービスの利用料金が米ドル決済で行わているAWSやGCP、Azureなどのクラウドサービスでは、毎月の利用料金が円安の影響を受け、予定していた予算額を遥かに超え、大きな問題となっています。
円安が進むと、日本企業が負担するクラウドコストは実質的に増加します。特に、固定費として計上されるクラウドサービスの利用料金は、為替レートの変動の影響を大きく受け、企業の収益を圧迫する可能性があります。今後も円安の傾向は続くとみる専門家のコメントなどがでてきていることから、企業におけるクラウドサービス利用料の問題は、早急に解決すべき問題となっています。
クラウドコスト対策の必要性
こうした状況を受け、企業はクラウドコストの最適化を真剣に検討する必要に迫られています。円安によるクラウドコストの増大は、企業の収益性に直接的な影響を与えるだけでなく、IT投資の抑制や事業戦略の見直しを迫られる可能性もあるでしょう。したがって、日本企業は、早急にクラウドコスト対策に取り組み、コスト削減と最適化を図る必要があります。
これまでのように、クラウドサービスの利用料金を「必要なコスト」として無計画に使い続けることは、もはや許されない状況なのです。
クラウドコスト最適化のアプローチ
クラウドコストの最適化には、様々なアプローチがあります。リソースの最適化: 使用していないリソースを停止・削除したり、インスタンスの種類やサイズを見直すことで、コストを削減することができますので、ご紹介します。
1.利用状況の可視化と分析
クラウドサービスの利用状況を詳細に把握し、無駄なリソースの特定や利用効率の改善を図ります。CSPが提供するコスト管理ツールやサードパーティ製のツールを活用することで、コストの可視化と分析を効率的に行うことができます。
2.リソースの最適化
使用していないリソースを停止・削除したり、インスタンスの種類やサイズを見直すことで、コストを削減できます。
3.料金プランの見直し(割引制度の活用)
各クラウドプロバイダーが提供する料金プランを比較検討し、自社の利用状況に最適なプランを選択することで、コストを削減できます。
4.予約インスタンスの活用
予約インスタンスを利用することで、一定期間の利用をコミットする代わりに、大幅な割引を受けることができます。
AWS: 「Amazon EC2」の「Amazon EC2 リザーブドインスタンス(外部リンク)」
Azure: 「Virtual Machines」の「Azure Reserved Virtual Machine Instances(外部リンク)」
GCP: 「Compute Engine」の「Committed use discounts(外部リンク)」
5.スポットインスタンスの活用
スポットインスタンスは、余剰リソースを安価に利用できるサービスです。ただし、インスタンスが停止される可能性があるため、注意が必要です。
スポットインスタンスのメリット
- 大幅なコスト削減: オンデマンドインスタンスと比べて最大90%のコスト削減が可能です。
- スケーラビリティ: 大量のインスタンスを迅速に起動できます。
- 柔軟性: さまざまなインスタンスタイプやリージョンで利用できます。
スポットインスタンスの注意点
- 中断の可能性: スポット市場の価格が指定した上限価格を上回ると、インスタンスが中断される可能性があります。
- 可用性の変動: スポットインスタンスの可用性は、AWSの空き容量によって変動します。
- インスタンスタイプの制限: 一部のインスタンスタイプは、スポットインスタンスとして利用できません。
AWS スポットインスタンスは、コスト削減効果が非常に高いサービスですが、中断の可能性があるという点に注意が必要です。ユースケースや注意点などを考慮した上で、適切に利用することで、クラウドコストを大幅に削減することができます。なかなか”適切に”運用するということが難しいのですが、、、
6.マルチクラウドの活用
複数のクラウドプロバイダーを併用すること、つまりマルチクラウドを採用することよって、各プロバイダーの強みを生かし、コストを最適化できます。
クラウドコスト最適化の注意点
クラウドコストの最適化は、コスト削減だけでなく、システムの安定稼働やセキュリティ確保とのバランスも重要です。安易なコスト削減は、システムの信頼性を損なう可能性があるため、注意が必要です。
クラウドコストの最適化は、企業にとって重要な課題ですが、適切な知識と戦略なしに進めると、かえってコストが増加したり、システムの安定性が損なわれたりする可能性があります。以下の点に注意しながらクラウドコストの最適化を実施します。
- 可視化と分析の徹底
- 適切なリソース選択と設定
- アーキテクチャの見直し割引制度の活用
- 運用体制の整備
- セキュリティ対策
まとめ
「デジタル赤字」問題と円安によるクラウド破産問題は、企業にとって深刻な課題です。しかし、適切なクラウドコスト対策を実施することで、これらの問題を克服し、持続的な成長を実現することができます。
APPSWINGBYでは、従量課金・クラウド破産問題を解決する手段として、”クラウド料金が固定のサービスへの「リアーキテクチャ」”をご提案しています。もしご興味のありましたら、以下のお問合せフォームよりお問合せください。
この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数
監修
株式会社APPSWINGBY
CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。