フューショット学習(Few-shot Learning)とは?基本から応用まで詳しく解説

1. フューショット学習(Few-shot Learning)とは?

フューショット学習(Few-shot Learning)とは、限られた学習データから有用なモデルを構築する手法のことです。一般的には「クラスあたり数サンプルから数十サンプル程度の学習データ」によってモデルを訓練し、高い汎化性能を発揮する手法とされています。

大規模なデータセットを前提とする従来のディープラーニング手法と比較すると、学習データの準備負荷や運用コストが大きく減少するのが特徴です。

フューショット学習(Few-shot Learning)が注目されている背景について少しだけご紹介しておきます。

昨年あたりから日本国内でもAIや機械学習を活用する機会が多くの企業で広がり、加速している感がありますが、AIや機械学習をはじめるにあたり、大規模な学習データを用意するのが難しいケースも少なくありません。

よくありがちなのが、社内で集めた僅かなデータを学習データとして用意し、AIに学習させるも、学習データが少なすぎて、成果がでない・・・といったパターンです。

特に、中~大規模企業においては、機密性の高いデータを扱うため外部から追加データを取得しにくい状況もあり、大規模な学習データを準備することが非常に難しい状況が続いています。

こうした背景から、少量のデータでも高い精度を発揮できるフューショット学習(Few-shot Learning)という新たな学習手法に期待が集まっているのです。

本記事ではフューショット学習(Few-shot Learning)の基本的な考え方から、企業での活用事例やビジネスインパクトまでをわかりやすく解説します。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進やIT投資効果の最大化を検討している方々にとって、具体的なヒントとなる内容を提供いたします。

是非、社内のシステム開発やソフトウェアエンジニアリングの参考にしてください。AIの環境やAIアプリの開発などのご依頼につきましては、弊社のお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

1.1 なぜフューショット学習(Few-shot Learning)が注目されるのか

このセクションではフューショット学習(Few-shot Learning)がなぜ注目されているのか?についてもう少しだけ深堀していきます。

多くの企業がAI導入を進める中で、大きな課題となるのが前節でもご紹介しましたが「学習データの不足」です。そして、忘れがちなのが「データ取得コスト(の高さ)」です。

たとえば、新しい製品やサービスを展開する際、まだ十分な量の利用データや事例が集まっていないことがあります。また、製造業や金融、医療などで機密データを取り扱う場合では、そもそもの話としてデータを外部に出せない!といった制約があるが故に、学習データを集めにくいといった現状があります。

こうした課題を解決するアプローチとして今注目されているのがフューショット学習(Few-shot Learning)です。※以降、この記事では”Few-shot Learning”と表現します。

Few-shot Learningは、少量のデータでも高精度なモデルを構築できるため、以下のメリットがあります。

  1. 大量データのアノテーション(ラベリング)が不要
  2. データ収集コストの大幅な削減
  3. 新しいクラス・カテゴリが追加された際の柔軟な対応

某大手の調査会社によれば、AI導入において「学習データの品質と量」が大きなボトルネックになると回答した企業は全体の半数以上にのぼります。このボトルネックとなっている課題こそが、Few-shot Learningにスポットライトを当てる理由の一つとなっているのです。

1.2 企業における活用の意義とビジネスインパクト

Few-shot Learningが企業にもたらす最大のメリットは、短期的な実装が可能でありながら、DXの推進力となる点です。いくつかの例を挙げますと、以下のような効果が期待できます。

  1. 新規サービス開発のスピードアップ
    従来は大量の学習データを準備してモデルを開発していたため、サービスのローンチに時間がかかりました。Few-shot Learningによって必要なデータ量が少なくなるため、実装からリリースまでのサイクルを大幅に短縮できます。
  2. 学習データ収集コストの削減
    データを大量に収集し、クリーニングやラベリングを行う作業は多くの人員と時間が必要です。Few-shot Learningを使えば、この作業を最小限に抑えながら十分な精度を確保できます。
  3. 不確実性の高い領域への早期参入
    市場や顧客ニーズがまだ確立されていない分野でも、小規模なデータでモデルを試作し、効果を素早く検証できます。こうしたアジリティは、企業の競争優位を高める重要な要素になります。

2. Few-shot Learningの概要

2.1 従来の機械学習手法との比較(Zero-shot, One-shotとの違い)

Few-shot Learningを理解するためには、近縁の概念であるZero-shot LearningやOne-shot Learningとの違いを把握しておく必要があります。

  • Zero-shot Learningとは
    学習時に存在しなかったクラス(未知のクラス)を推定する手法です。未知のラベルに対しても、テキスト情報や外部知識から類推して分類できるようになります。ただし、ある程度の事前知識を必要とするケースが多いです。
  • One-shot Learningとは
    クラスあたりのサンプル数が1に限られる場合を指します。たとえば、新種マルウェアのサンプルが1つしかない場合でも、その特徴を学習して既存のマルウェアモデルをアップデートできます。
  • Few-shot Learningとは
    クラスあたり数~数十の学習データを用いて訓練する手法です。One-shotよりも少し多めの学習データを活用できる分、モデルの安定性や汎化性能が高くなりやすいです。実務での適用ハードルも比較的低いため、多くの企業が導入を検討しています。

2.2 Few-shot Learningを支える理論的背景

Few-shot Learningには、主に以下のような技術的・理論的背景があります。

  • 転移学習(Transfer Learning)
    すでに大規模データで学習したモデル(例:ImageNetで学習した画像認識モデル、BERTなどの自然言語モデル)をベースに、少量の目的データを追加学習する手法です。既存モデルが持つ豊富な特徴量を再利用することで、少ないデータでも高精度を実現しやすくなります。
  • メタ学習(Meta Learning)
    「学習の仕方を学習する」とも呼ばれ、複数のタスクを束ねて学習と評価を繰り返すことで、未知のタスクに素早く適応できるモデルを獲得します。代表的な手法としてMAML(Model-Agnostic Meta-Learning)があります。

これらのアプローチをうまく組み合わせることで、データが極めて限られた環境でも高精度なモデルを実現できるのがFew-shot Learningの強みです。すでに大規模データで学習したモデルを社内で活用している場合は、そのモデルを転移学習のベースとして、少量の追加データだけで新しいタスクに対応することが可能です。

以上がFew-shot Learningの基本から、従来手法との比較、理論的背景までの解説となります。次のステップとしては、各企業のシステム環境や開発プロセスに合わせてどのように導入するかを検討することが重要です。少ないリソースで最大限のAI活用を目指す方にとって、Few-shot Learningは極めて有力な選択肢と言えるでしょう。

次回は、Few-shot Learningの「ビジネス成果との紐づけ」「適用領域と活用シナリオ」「Few-shot Learningの導入に必要なフレームワークとツール」についてご紹介します。

AIの新規開発や改修、DX等に関するご提案依頼・お見積もり依頼につきましては、弊社問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人
株式会社APPSWINGBY
株式会社APPSWINGBY マーケティング

APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。

ご支援業種

情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修
APPSWINGBY CTO川嶋秀一
株式会社APPSWINGBY  CTO 川嶋秀一

動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

APPSWINGBY CTO川嶋秀一
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動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
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