生成AI導入におけるセキュリティリスクとデータ保護戦略

- 1. 生成AIがもたらす革新と潜在的リスク
- 1.1. 「便利さ」の裏に潜む「危険性」:機密データとAI
- 2. 2. 生成AI活用事例とデータ活用の実態
- 2.1.1. メール自動生成から契約書分析まで:具体的なAI活用シーン
- 2.1.1.1. 1.カスタマーサポートの効率化
- 2.1.1.2. 2.マーケティングコンテンツの自動生成
- 2.1.1.3. 3.契約書・法務文書の分析と生成
- 2.1.1.4. 4.社内文書の作成支援
- 2.1.1.5. 5.ソフトウェア開発の効率化
- 2.1.2. なぜ生成AIは機密データにアクセスするのか?:そのメカニズム
- 2.1.2.1. 文脈の理解とパーソナライゼーションのため
- 2.1.2.2. 学習モデルの継続的な改善のため
- 2.1.2.3. 特定の企業・業界に特化した知識の構築のため
- 2.1.3. 見過ごされがちなデータ収集・処理の実態
生成AIがもたらす革新と潜在的リスク
今日のビジネス環境において、生成AIはもはやSFの世界の話ではありません。メールの自動作成から契約書の詳細な分析、さらには顧客対応の自動化に至るまで、その応用範囲は驚くほど広がっています。
多くの企業が生成AIを「業務効率化の切り札」として捉え、導入を検討、あるいは既に進めていることでしょう。
私たちの事業においても、生成AIが市場にもたらすインパクトは計り知れないものと分析しています。特に、ルーティンワークの自動化による人件費削減や、データに基づいた意思決定の迅速化は、競争優位性を確立する上で不可欠な要素となりつつあります。
しかし、この「便利さ」の裏には、看過できない「危険性」が潜んでいます。
「便利さ」の裏に潜む「危険性」:機密データとAI
生成AIツールが真価を発揮するためには、往々にして企業の機密データへのアクセスが必要不可欠となります。顧客情報、社内文書、財務データ、知的財産など、企業にとって最も重要な資産がAIの学習データとして利用される可能性があるのです。
例えば、ある企業の法務部門が生成AIを利用して過去の契約書を分析し、新しい契約書のドラフトを作成するとしましょう。
このプロセスでは、機密性の高い契約内容がAIベンダーのシステムを通過することになります。もしこのデータが適切に保護されていなければ、情報漏洩や不正利用のリスクが大幅に高まります。
実際に、海外の某政府では、公務員がChatGPTなどの生成AIを使用する際に機密情報を入力しないよう警告を発しています。これは、AIモデルの学習データとして情報が利用され、意図しない形で外部に漏洩する可能性を懸念してのことです。
私たちがSI事業を通じて多くの企業様と接する中で、生成AIの導入検討段階で機能や価格にばかり目が行き、セキュリティやデータ保護への意識が薄いケースに遭遇することが少なくありません。しかし、優れたデモンストレーションや魅力的な料金体系だけでプロバイダーを選定することは、将来的な大きなリスクを招く可能性があるということを意識しておくべきでしょう。
2. 生成AI活用事例とデータ活用の実態

生成AIは、その柔軟性と汎用性から、多岐にわたるビジネスシーンで活用され始めています。私たちのSI事業においても、顧客企業様の課題解決のために生成AIの導入を提案・支援する機会が増えています。
ここでは、具体的なAI活用シーンと、それに伴うデータ活用の実態、そして見過ごされがちなデータ収集・処理のメカニズムについて詳しく見ていきましょう。
メール自動生成から契約書分析まで:具体的なAI活用シーン
生成AIは、テキスト生成能力を核として、以下のような多様な業務に適用されています。
1.カスタマーサポートの効率化
顧客からの問い合わせ内容をAIが解析し、適切な回答案を自動生成したり、FAQから関連情報を瞬時に提示したりすることで、オペレーターの負担を軽減し、顧客満足度を向上させます。
2.マーケティングコンテンツの自動生成
製品のキャッチコピー、SNS投稿文、ブログ記事の下書きなど、マーケティング活動に必要なテキストコンテンツをAIが短時間で大量に生成します。これにより、コンテンツ作成のリードタイムを大幅に短縮できます。
3.契約書・法務文書の分析と生成
過去の契約書や判例を学習したAIが、新しい契約書のドラフト作成を支援したり、複雑な法務文書の中から特定の条項を抽出し、リスクを特定したりします。この分野では、正確性と機密性の確保が特に重要です。
4.社内文書の作成支援
会議議事録の要約、報告書の下書き、プレゼンテーション資料の構成案作成など、日々の業務で発生する文書作成をAIがサポートします。これにより、従業員はより戦略的な業務に集中できるようになります。
5.ソフトウェア開発の効率化
コードの自動生成、バグの検出、既存コードのリファクタリング提案など、開発プロセスにおいても生成AIの活用が進んでいます。これにより、開発期間の短縮と品質向上が期待できます。実際に、MicrosoftのGitHub Copilotのようなツールは、開発者の生産性を高めることが示されており、米国の調査では開発タスクの完了に要する時間を最大55%短縮したという報告もあります。
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なぜ生成AIは機密データにアクセスするのか?:そのメカニズム
上記したような生成AIの活用シーンを考えると、共通して言えるのは、AIが「ユーザーが入力したデータ」を基に「新たな情報を生成する」という点です。
つまり、生成AIがよりパーソナライズされ、精度の高いアウトプットを出すためには、以下のような機密データへのアクセスが必要不可欠となるのです。
文脈の理解とパーソナライゼーションのため
例えば、顧客サポートAIが特定の顧客の購入履歴や問い合わせ履歴にアクセスすることで、より的確で個別化されたサポートを提供できます。契約書分析AIであれば、企業の過去の契約傾向や事業特性を理解するために、既存の契約書データが必要となります。
学習モデルの継続的な改善のため
多くの生成AIモデルは、ユーザーの入力とAIの出力、そしてその評価(ユーザーからのフィードバック)を新たな学習データとして取り込み、モデルの精度を継続的に向上させるメカニズムを持っています。このプロセスを通じて、AIはより賢く、より有用になっていきます。
特定の企業・業界に特化した知識の構築のため
用的なAIモデルだけでは、特定の企業や業界特有の専門用語、ビジネスプロセス、慣習などを完全に理解することは困難です。
そのため、企業は自社の内部データをAIに学習させることで、よりビジネスに特化したAIを構築しようとします。これは「ファインチューニング」や「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」といった技術によって実現されますが、いずれも内部データへのアクセスが前提となります。
見過ごされがちなデータ収集・処理の実態
多くの企業が生成AIの導入を検討する際、その「便利さ」や「先進性」に目を奪われがちですが、その裏でどのようなデータが、どのように収集・処理されているのかについては、意外と見過ごされがちです。
以下に見過ごされがちなデータ収集・処理の実態をリストにして、まとめてみました。
- 入力データのログ保存: 多くのAIサービスプロバイダーは、サービス改善やデバッグのために、ユーザーがAIに入力したプロンプトや生成されたアウトプットをログとして保存しています。このログの中に、意図せず機密情報が含まれてしまう可能性があります。
- モデルの再学習への利用: サービスプロバイダーによっては、ユーザーが入力したデータを匿名化・集計した上で、自社のAIモデルのさらなる学習に利用することがあります。これにより、入力された機密情報が、間接的であっても不特定多数のユーザーに提供されるAIモデルの一部となるリスクが生じます。
- 第三者サービスへの連携: AIサービスの中には、外部のAPIやサービスと連携することで機能拡張を図るものもあります。この際、データが連携先の第三者サービスにも渡され、そのサービスのデータポリシーに従って処理されることになります。連携先のセキュリティ対策が不十分であれば、データ漏洩のリスクが高まります。
- 法規制とプライバシーポリシーの理解不足: 生成AIサービスの利用規約やプライバシーポリシーは、多くの場合、複雑で理解しにくいものです。これにより、企業が自社のデータがどのように扱われるのかを十分に把握しないままサービスを利用し、結果としてデータ保護に関する法規制(GDPR、CCPA、個人情報保護法など)に抵触してしまう可能性があります。
これらのデータ収集・処理の実態を深く理解せずに生成AIを導入することは、企業の評判失墜、法的責任、さらにはビジネス損失に直結する可能性を秘めています。次回は、これらのリスクを回避するために、プロバイダー選定時にどのような視点を持つべきかについて詳述します。
解説記事「生成AI導入におけるセキュリティリスクとデータ保護戦略」の続きは
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本記事では、生成AI導入において企業が直面しうるセキュリティリスクを深く掘り下げ、それらのリスクから自社の貴重なデータを保護するための具体的な戦略と、プロバイダー選定時に問うべき重要な質問を提示しています。APPSWINGBYでは、最先端のデータ管理技術とお客様のビジネスに最適な形で実装する専門知識を有しております。貴社がこの技術革新の波に乗り遅れることなく、競争優位性を確立できるようAI支援システムの開発、既存システムとの連携や統合、リファクタリング、コード診断からセキュリティ対策、運用保守まで、一貫したサポートを提供いたします。ぜひ、お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人

株式会社APPSWINGBY マーケティング
APPSWINGBY(アップスイングバイ)は、アプリケーション開発事業を通して、お客様のビジネスの加速に貢献することを目指すITソリューションを提供する会社です。
ご支援業種
情報・通信、医療、製造、金融(銀行・証券・保険・決済)、メディア、流通・EC・運輸 など多数

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監修

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。

株式会社APPSWINGBY CTO 川嶋秀一
動画系スタートアップ、東証プライム R&D部門を経験した後に2019年5月に株式会社APPSWINGBY 取締役兼CTOに就任。
Webシステム開発からアプリ開発、AI、リアーキテクチャ、リファクタリングプロジェクトを担当。C,C++,C#,JavaScript,TypeScript,Go,Python,PHP,Vue.js,React,Angular,Flutter,Ember,Backboneを中心に開発。お気に入りはGo。